舞踏会より鮮やかな〜愛しい後輩に質問してみた話〜
色とりどりのドレスの群れが、タキシードに誘われて廻る。
その様子は、ノアに、朝露の降りた薔薇園を思い起こさせた。
「アニカも、ああいうのに憧れたりするのかい?」
尋ねれば、ノアと同じく舞踏会の警護に充てられている後輩は、冷ややかな顔になる。
「先輩が仕事中に暇を持て余していると、小隊長に報告してきましょうか」
「恐ろしいことを言うのはやめてくれ。俺はただ、可愛い後輩の緊張を解そうと思ってだねえ……」
「そういうことでしたか。確かに、呆れるあまりに肩の力が抜けた気がします」
冗談なのか本気なのか、姿勢を正したままそう零したあとで、
「ちなみに、ダンスには興味がありません。そもそも、我々平民には縁のないものだと考えますが、相違ありませんか?」
と、アニカが付け足す。
ノア達が所属する王国の魔術師団は、団長の方針で、能力さえあれば身分を問わず団員を登用している。アニカは農村の出身だと聞いているし、ノアとて貴族ではない。
「まあ、俺も然程興味はないよ」
「では何故、先程の質問を?」
「単なる好奇心だよ。ダンスには興味がないが、君がどんなものに興味があるのかには興味がある」
「不可解なことを言いますね」
「そうかい? 酷くわかりやすいと思うんだけど」
少し笑って、ノアは、
「ねえ」
再度、アニカへと声を投げた。
「無事に舞踏会が終わったら、一緒に夕飯でもどうかな?」
「益々もって意図を量りかねます」
「平民だろうが貴族だろうが王族だろうが、大仕事を終えた後は打ち上げだって相場が決まっているじゃないか。カムラ通りの食堂なんてどうだい? 鍋料理が美味いらしい」
「……考えておきます」
答えたアニカへと、近づいてきた他の団員から声がかかる。そのまま彼女は、ノアから離れていった。
そして、
「……殿下」
ノアにもまた、図ったように背後から声がかけられる。
ーー否。
実際、アニカがノアの側を離れるところから、図られたのに違いなかった。
「その呼び方はよしてくれ……と言いたいところだが、火急の用かな。舞踏会を狙う不届者が見つかったのかい?」
「左様にございます」
「それじゃあ、彼女に火の粉がかからないうちに終わらせようか。平民のノアにはこの後、大切な約束もあることだしね」




