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たった一人の夜
日が暮れる前に、レオンはなんとか火を起こすことに成功した。いつもならミーナの炎魔法や、炎を纏った聖剣を薪に突き刺していたのだが、人力で発火させるのは一苦労だ。
「とりあえず夜を越せそうだな」魔物に襲われない限りは。
「うん? なんだ、あれ」焚き火の向こうにキラリと光るものが見えた。
草木をかき分けて近寄ると、そこには眩い光を放つ巨大なクリスタルがあった。
「これは……?」手を触れると、蒼いクリスタルが輝きを増した。
ーー汝は選ばれた。
不意に頭の中に声が聞こえた。澄んでいて綺麗な、女性の声。
選ばれたって誰に?
と、疑問に思った。
ーー女神アルテゴに。汝は女神の使徒となり、世界を救え。
すると返答があった。どうやら心の中で念じると会話できるようだ。
世界を救えだって? 僕は丸腰だ。それに役に立つスキルもない。聖剣頼みの勇者だったのさ。
ーー汝に女神からの恩寵を授ける。
すると、レオンの身体が蒼い光に包まれた。