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「アイザック、北の件から変わったな」
年が明けて王族の国民への挨拶が終わった後、王太子殿下が仰った。
「そうですわね。私を色々助けてくださっているので助かっておりますわ」
「何で王太子の私の方じゃないんだ?」
「あら?私が身重だからじゃないですか?」
私の方から学びたいみたいですよとは絶対言えない。
「そうか!それはそうだ」良かった単純で。
「だが、きっとアイザックは優秀な君から学びたいんだな」
「!」気付いていたのか。王太子殿下も実は聡い。だけど、割とそう見えないように振る舞ってらっしゃる。
それはきっと、私を引き立てる為なんだろうと分かっているから、お互いそれを演じている。
アイザック殿下にも、いつかそれに気付いてもらえるといいなとマレシアナは思った。
「そうだ!王太子殿下、明日はアイリーンとソフィーナと観劇に行って参ります」
「そうか体は大丈夫か?」
「はい医者も観劇くらいは大丈夫だと」
「そうか楽しんで来て」
「ええ。ありがとうございます」
「一緒に行きたい」と言われないように、暗に女子会だと釘を刺しておく。じゃないと流石にあれは見せれないだろう。
「フフフ」一体どんな仕上がりになっただろうか?
アイリーンを通じてプレッシャーをかけておいたから楽しみだ。
それに、いつものボックス席ではない。
一度やってみたかったのだ!最前列のど真ん中。思わぬ形で願望が叶って良かった。
マレシアナはご機嫌で、明日の為に早めに休むことにした。
◆◇◆◇◆
あの場は王太子妃として冷静に「面白かったわ」と伝えて、ただチップを弾んで帰ってきたが、いや本当に面白かった!
戻ってからもマレシアナの私室でアイリーンとソフィーナと興奮して盛り上がっていた。
なんせ最前列は本当に凄かった!
俳優の迫力ある演技をグラスを通してではなく間近で観れるのだ。
本当に泣いていた。涙は目薬ではなかった。演技じゃない!本人そのものだった。
大体なんで高位貴族ほど、あんなに遠いボックス席なのだ!次回から絶対、見たいものは最前列だなと話し合った。
それにパンフレット。
表紙が今、話題の画家ではないか!マティアスだったか?なんか聞いたことある名前だが?んーいつだっけ?侯爵家に似た名前がいたか?まあいいか。
ったく抜け目のないセンスをしているな、筆頭侯爵家!
ちゃんと事前に、メイン俳優と画家のサインも入っているパンフレットを用意する配慮も憎い。
芸術面も秀でているとは…。
王立劇場のヒット作は、ほぼ侯爵家お抱えの劇団のものだ。上手く話題を取り入れるか、話題を作り出している。
一体誰が侯爵家の劇団を主導しているのか?まさかそれもベルオットなのか?
また観に行きたいと三人で話し合って別れたが、その日が終わって、次の日の明け方にマレシアナの陣痛が始まり、アイリーンとソフィーナが再び呼び戻された。
そして正午にマレシアナは無事二人目の王女を出産した。
また王女だったが二人目は赤い髪だ。恐らく瞳も青だろう。
マレシアナは力尽きて意識が朦朧としていたが赤毛の王女に大満足だった。
きっと王妃様も同じ気持ちだったのだろうと、消え行く意識の中マレシアナはそう思った。




