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冬休みに入り、子爵領に帰る日が来た。
子爵領は北にあるが山脈が北からの冷たい風を防いでくれるので、あまり寒くない。むしろ王都の方が東の方から乾いた風が吹くので寒いと伯父は言っていた。
だが王都も雪が激しく降ったり積もったりする事もないので領までの道が閉ざされる事はない。
伯父は長距離用で6頭立ての馬車を用意してくれた。
普段、自分も子爵領に通っているので馬車も改良されており、王家の馬車と遜色無いほど快適だ。それに御者さんも子爵領に通い慣れたベテランだ。
伯父は王都は乾いて寒いが侯爵家の領地の一部は西の海にも面していて港があり、海側の方は南から暖流が流れていて、まだ王都よりも暖かいのだよと教えてくれた。
自分の国の中でも随分、場所によって気候が違うのだなとリリベルは思ったが、そう言えば家庭教師の先生が国の地図を広げ熱弁していたなと思い出す。
ナル兄は、まだ王都に帰って来ていない。
伯父は「春にはアイオットが領地に行くよ」と言っていたが、自分は行かないんだなとリリベルは心の中で突っ込んでおいた。
伯父はリリベルの考えを見抜いたのか、ハハッと笑って、
「妻を王都に置いたまま帰れないだろ?」って言っているけど、自分は何度も家を空けて子爵領に行っているから建前なんだなって思って鼻で笑っておいた。
「リリ酷い」って、どの顔が?
その頃、王城では会議が行われていた。
今は冬で北との国境を閉じても問題はないが、春からはどうするのか?
商人達からも不安の声が上がっている。北からの輸入品は宝石や酒類、花やライ麦など多岐に渡る。
そもそもこちらの国には何も被害は無かったし、彼らの目的も子爵領限定だ。だから国交を断絶する程のものではないと言うのが大多数の意見だ。
だが国境侵犯未遂と子爵領への犯罪未遂を無罪で放っておくのも良くないとの意見も出ている。北の騎士達は子爵が白馬を没収し、全員坊主にして北にお返ししていたが、それに対する北の反応はダンマリだ。
何か反応があれば対処のしようもあるのだが、完全に行き詰まったので、とりあえずその日は何も決まらず、翌日に持ち越しされた。
何とか年内にこちらの対応も決めたいところだろう。
大臣が執務室に戻って椅子に座り大きく溜め息を吐いた。
エリオットも気持ちが分かる。会議では外交側として何も意見を言えなかったのだ。執務室が重い空気に包まれる、そんな時に一報が入った。
神殿から使者が来て今回の野生馬の件は、北のスネイプニルの子孫である確率が高いこと、また北、東、西の神々の関係性を洗い直しており、我が国の北に対しての厳しい処罰は考え直して欲しいなど、大神官長を筆頭に大神官達の署名で手紙が届いたのだという。
大臣が立ち上がり「私がこの件を全て担当しよう。春に北へ向かうことにする。それで北の出方を見て外交をスタートさせたいと宰相に話してくるよ。だからそれ以外の件はエリオットに任せるから頼めるか?」と聞いてきた。
エリオットは「ですが大臣、僕もこの件では遅れをとりましたし」と言うと、
「君の従姉妹の令嬢は賢かったなぁ。侯爵があの場に入れさせたのが今なら理解できるよ。そして重鎮達や王太子妃様の前でも怯まず堂々と意見する。若い時のベルオット小侯爵を見ているようだったよ。今、令嬢は子爵領に帰っているんだろう?何か情報が入ったら私にも伝えてくれ」
と言って大臣は執務室を出て行かれた。
エリオットも執務室の椅子に腰掛けながら、
「やっぱり“ベル”には敵わないのかなぁ」と独りごちた。




