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秋も深まる中、生徒会のテーマは学院の大イベントである学院祭の話になった。今からちょうど2ヶ月後に学院祭がある。と言っても貴族のみの学院なので祭りでもお店などは出さない。
芸術イベントがメインで参加クラスを生徒会が募って披露するのが学院祭だ。
参加をすると、もちろん成績にプラスに影響するし、周囲の評価も上がる。
それに真面目にというよりクラスで仲良くとか楽しんでという感じなので、わりと皆参加すると過去資料にあった。
参加しないクラスは学院内で肩身が狭くなるという理由もあるみたいだ。
これから参加希望の紙と何をするのかのアンケート用紙を各クラスに配布する。締め切り後、それを生徒会で集めて教室などを割り当てる。
発表や展示内容が他所と被っても、人が変われば中身も変わるスタンスで、変更を促すことは少ない。
過去に演劇内容が被った例があって、その際は、一応双方にお知らせして同じにするも良し、変更するも良しとしたことはあったようだ。
なるべく学院生が、たくさんの教室を回れるように発表などは時間が重ならないようマネジメントする。学院祭は二日間で開催される。
今日の説明はそれだけで解散だ。各クラスからの希望が出揃わないと動けないからだ。
リリベルのクラスは何をするんだろう?
明日の授業の後に話し合いがある。演奏会だったらどうしよう。楽器とかは無理だなぁ。
あれは家族の誰も才能が無かった。歌も同様だ。
母の子守唄はどこか調子がおかしかった。
家族の誰も気付いてなかったが、リリベルは領地の子供達の母親が歌っているのを聞いて愕然としたものだ。
多分、音痴は受け継いでいる。
あとは自作の作品を持ち寄る展示会などもあるそうだ。
そして演劇とか、詩や本の朗読会、教室内を迷路にするとかもあった。それがいいなそれが楽しそうだなー。
翌日の放課後、クラス委員を中心に、まずは学院祭に参加するかの是非を多数決で決める。
これは、ほぼ全員が参加希望で可決した。次に何をやりたいか案を募る。
令息も案を出したが圧倒的に令嬢の案の方が多い。しかもこのクラスは女子の方が強い。
そして何か良からぬ方に案が進んでいく気がする。
シャーロット嬢は眉をしかめ、侯爵令嬢達が筆頭に案を推し進めている。
ザック殿下は静かに成り行きを見守っているが、そんなに冷静にしている場合ではないぞ!殿下!
「先を読め!お前に降り掛かるぞ!」とリリベルが念を送るが、目が合っても知らん顔だ。
ゼスチャーしたが、それもシカトされた。あのヤロー。
こんな時、席が遠いのが悔やまれる。
紙に書いて丸めて殿下に投げる。
「あ!ゴメン」殿下のデコにクリーンヒットした。
イヤーッ睨まないで!メモ読んで。
やっとメモ開いたと思ったら同時に決定した。
あちゃー。
「では我がクラスの発表は“本の朗読”ということで決まりました」
「委員長!実はもう朗読する本も配役もこちらで決めておりますの」
ほら来た!侯爵令嬢を中心とした令嬢達が満足気に言う。
3組の発表は本の朗読でお題が“美しい侍従に囚われた王太子”だった。
その決定の一報が学院内を駆け巡る。
他のクラスや学年でも案が出たそうだが、我がクラスは第三王子殿下がいる。他のクラスはあっという間に変えてきた。
そして我がクラスには殿下以外にもう一人ホープがいる。
リリベルが所属していた園芸クラブの男爵令息だ。彼のラブリーさを侯爵令嬢達が見逃すはずがないのだ。
さすがにお題のままでは学院の品位に抵触する恐れがあるので、小説の一部分を抜粋し「多感な若者の苦悩」と題して発表する。
ちょうど王太子が“彼を好きかも?!”と気付くところだ。
なかなか良い部分の抜粋だ。ユノゴー氏のワードが光っている部分でもある。あとは演者の気持ちの問題だ。
ただの音読じゃあないぞ、殿下。




