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学期の後期はなかなか忙しい。
学院のイベントや生徒会主催のイベントも目白押しだ。
先月は商人を呼んで輸入の先取りと輸出入の関税について講演してもらった。
商売など全く分からないリリベルにも面白い内容だったが、来月の生徒会イベントの企画と、秋にある学院祭の準備、来年1組になる為の勉強会もあった。
来月の企画などは卒業生を頼ったり、過去資料から選ぶこともできるので、そこまで大変でもないが、学院祭は各クラスの出し物の希望を取るなど、なかなか地味に面倒そうだ。
そして1学年限定の勉強会は生徒会長がこれまでの試験内容を参考に作った模擬テスト形式の紙を解くのだが、解き終わったら採点してもらって、その後は自由だ。
リリベルは、いつもさっさと終わらせて生徒会室の植物の世話をしている。
好きに植えていいと言われたので、もう遠慮はしていない。秋の野菜達をふんだんに植えている。
「リリベル嬢、なかなか花が咲かないのですねぇ?」と侯爵令息が言ってくるが当然だ。
秋の野菜は葉物や根菜だ。花が咲く物は夏の間に終わってしまっている。
「花は咲く前に収穫します」と言うと令息は「?」となっている。
殿下が「放っておけ」と仰る。
多分、彼はもうリリベルの真実を知っている。
花より団子なのだと。
殿下達はあれから再び温室のマンゴーの実を収穫したそうだが、前回ほど美味しくなかったそうだ。
王太子殿下もガッカリしていたそうだ。
そんな事知るかとリリベルは思ったが、そういえばマンゴーの実を熟れさせる時「甘くなれ」と念じたなと思い出したが黙っておいた。
毎回呼び出されても困るというものだ。恐らくザック殿下は分かっている気がするけど。
あっちで問題が解けないとギャーギャー言っている集団がいる。 シャーロット嬢や2組の令息だ。
1組の令息が必死に説明しているが、難しいらしい。仕方ないのでリリベルも見に行く。
なんだここか。ここで詰まるとは、ここは前後の問題を読み解けば公式は一つに絞られる。
他の問題も同じように進めれば解ける問題だ。そこを説明してやると皆感動する。
「この方法のほうが早い!」今までどうやって解いてたんだ?
そっちの方が気になるが。
「わあリリベルさん凄い。ダンスと顔だけじゃなかった。ちゃんと頭にも栄養行ってる」
シャーロットは一言どころか二言も三言も余計な発言が多い。
そろそろ見捨ててもいいだろうか?
リリベルが眉間にシワを寄せているのを見て、ザック殿下が
「おい、あまりリリベル嬢を怒らせるな」と言ってきた。
多分庇っていると言うより、あの時の伯爵領での事を気にしているのだとリリベルは思った。
そんなに感情を爆発させることなんて無いのに。
あの時はたまたま二日酔いと寝不足が重なっただけだ。もう二度とそんな醜態を晒す予定もないし、と思うが黙っておく。
だって殿下の発言が一番ムカつく事が多いんだもん。




