⑭番外編
最終話です。
王城での生活にも慣れ、あと1週間で結婚式という日に王妃様から呼ばれて王妃宮まで出向くと、王妃様が私室のサロンで大き目の箱を持ってお待ちだった。
「ビーバーちゃん、見て見て!」
王妃様が箱を開けると中から輝くティアラが出てきた。
「私が嫁いで来た時に使ったの。王太子妃もかぶったのよ。だから、あなたにもかぶって欲しいと思って、先ほど宝物庫から持って来たの」
ティアラはそんなに大きな物でもないし、中央の石もそこまで大きくはない。
だがよく見ると小さなダイヤがつながって出来てないか?コレ‥‥
これまでも様々な仰天レベルの宝石を見せられてきたが、コレが一番ビックリする。
リリベルが驚きで固まっていると「そんなに緊張しないで、結婚式でかぶるだけよ」と王妃様は仰った。
そうだった。もらった訳ではなかったわと安心する。
「王妃様も王太子妃様もかぶられた貴重なティアラをありがとうございます」と言うと「いいのよ。私が嬉しいから」とそうニッコリ仰った。
そう言えばリリベルは王妃様に聞きたい事があった。
「王妃様、かなり以前の…青薔薇を頂いた時の事だと思います。子爵領は昔は北の国の領土だったとか、子爵家は北の辺境伯だったとか、そんなお話を伺ったと思うのですが、何かそういう話を北の国でお聞きになったのですか?」
「ああ!あれねぇ。今、思うと、なかなか恥ずかしい勘違いだったと分かるわ。だけど…ちょっと待っててね」
王妃様は立ち上がって本棚を眺め始める。
「確か…この辺りに…私が嫁いだ時に持って来たのよ。あ〜あった!これこれ」
王妃様は少し古くて手作り感のある冊子をリリベルに差し出してこられた。
題名に「脱走のススメ」byユキチと書いてある。
「王妃様!これ?!」
「そう多分、北の国の王子に伝わる本なんだと思うんだけど、私が持って来ちゃったの」
冊子をめくると脱走する時の準備や心構えなどが書いてある。でも恐らく相当古い。
「かなり古い物でしょう?そこにスネイプニルに乗れる事とか、乗れないなら辺境伯を頼る事とか色々書いてあるから知識がごちゃごちゃになったんだと思うわ」
「ユキチって、ユーキチウス3世の事かな?あ、でもユーキチノフ2世もうちの先祖にいます」
「フフフッ、そうね。どちらかかもねぇ」
「この本は王子の部屋の本棚にあって気軽に読めたみたい。兄達が面白いって読んでたの。でも自分達は関係無いから要らないって西に嫁ぐ私にくれたんだけどね。王太子だけじゃなくアイザックもエメラルドグリーンの瞳の令嬢を気に掛けていると聞いた時に、思い出したの。そう言えばこの本!ってね」
「北にお返ししなくて大丈夫でしょうか?」
「もう要らないんじゃない?」
「そうでしょうか…」
本当にあった!北の脱走マニュアル。
だけど西に、しかも王妃様が持っておられた。
もしかしたらこれは複製かもしれないし、北には最新版があるのかもしれない。
もし脱走マニュアルが、まだ北にあるのだとしたら、これからも北の王子はいつか子爵領に来るのかもしれない。
でもそれは、まだしばらく先の話だ。
陛下は姉君がご健在のうちは、まだ夫の必要は無いだろうと仰っていた。だから大丈夫だよね〜とこの時は思っていた。
それにかなり他人事だと考えていた。今は目の前の自分の結婚の事で頭も一杯だったから。
「ねえビーバーちゃん!お義母様って呼んでみて」
「えっ!」「ねえ呼んでよぉ」
「まだ…恐れ多いと言いますか…」
「アハハハハッ」
それに今は目先の事より、今、起こっている目前の出来事だ!
シャーロット嬢の期待を裏切ってしまって悪いけど、前世を覚えている人なんてきっと小説の中だけだ。それに異世界だってあるのかなんて分からない。
私は自分のこの世界で精一杯、幸せになるために生きていくだけだ。
だけど一つだけ言えるとしたら‥‥‥
私はただの子爵令嬢にはなれなかったな(確定)
Continued after marriage !
この先のお話は続編でご覧ください。




