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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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⑬番外編

ミカエル君のお話です。

 午前の鍛錬が終わりミカエルは相手をしてくれたラント卿に礼をする。

 今日も彼には全く歯が立たなかった。剣の腕も魔法でも。自分はやっと光の刃を3回出せるようになった。ラント卿は5回は出せるらしい。それにラント卿の自身の修練へのストイックさは聖騎士の中でも群を抜いている。

 だから元王子という肩書きだけでなく、皆の尊敬を集めているのだろう。

 それに最近は考え方も他者への接し方も、かなり柔軟になったと評判だった。


「ミカエル卿、明日、子爵領に向かうのか?」

「はい、ラント卿。結婚式で領主邸が空になるので、何かあった時は宜しくと、親戚の私にご指名が来ました」

「だが…君も式に出なくていいのか?」

「‥‥まだ二人を見るのが辛いので良いのです」

「これは…無粋なことを聞いた。申し訳ない」

「いえ、私はフラれて一年も経つのに引きずり過ぎなんですよ。ではラント卿、手合わせありがとうございました。失礼致します」

 

 結局、彼女は彼女にとって一番リスキーな相手を選んだ。

 子爵領にも帰れない上に最も嫌がっていた王族になってしまった。だがそれでも良いと思える相手が第三王子殿下だったのだろう。


 だがズルイな彼は…と思う。


 とても甘やかされヤンチャな王子と言われていた彼は、彼女によって今では優秀な王子に変化していた。

 たまたま同級生で彼女の側に居れた時間も、機会もあったからだろう?

 私にもあったなら第三王子なんか近付かせなかったのに。


 だが彼女は王子よりも、外見も中身も優れていると言われていた王太子妃の弟の公爵令息も振ったというのだ。

 それにラント卿と二人きりで旅をしても、彼を男として見るどころか、どうも彼が柔軟な考えを持つようになったのは彼女の影響ではないかとも言われているのだ。

 正に難攻不落な女性なのに、落とした男が第三王子だ。

 なんか腑に落ちないな。


 ミカエルが子爵領に向かう前に、聖女の元にも挨拶に訪れると先客がいた。

 確か彼女は聖女と同時期に聖女候補だった伯爵令嬢だ。何か挨拶でもされているようだな。だが、そろそろお戻りの様子だから待っているかとミカエルが端で控えていると、挨拶を終えられた様子の伯爵令嬢がこっちに向かって来る。


「お待たせしました。聖騎士様、もう私達の用事は終わりましたから」と、令嬢はわざわざ知らせに来て下さったのだ。

「ありがとうございます」と礼をして顔を上げると「まあ!以前、学院に講演にいらして下さった聖騎士様でしょう?」と伯爵令嬢の連れの令嬢が仰った。


「まあダイアナ、お知り合いの聖騎士様なの?」

「いいえお姉様、私が一方的に知っているだけですわ。聖騎士様が学院に講演にいらした時に私は参加していただけですから」

「講演を聞きに来て下さったのですね?ありがとうございます」と伝えると「リリベルさんのお知り合いでらっしゃるのですか?」と聞かれたので「従兄弟なんです。彼女の父の2番目の兄が私の父です」と言うと「では聖騎士様も結婚式に出られますか?」と聞かれた。

 途端に胸がズキンとする。


「私は、明日から任務で王都を離れます。だから残念ながら参加ができません。それで聖女様にご挨拶をと参りました」

「まあそうなのですね。お仕事大変ですわね。頑張って下さいませ」

 令嬢達と別れて聖女様の元へ行く。


「ミカエル卿、先程のお二人とはお知り合いですか?」

「いいえ聖女様、私が学院に講演で伺った際に私を知って下さった方のようです」

「そうですか〜。彼女は私の同期だった方なんです。でも彼女は聖女候補で私は侍女でしたけど」

 と聖女様が笑う。


 この人もリリベル嬢以上に規格外の人だ。

 子爵令嬢で聖女候補の侍女だった彼女が、他の高位貴族を押し退けて聖女になったのだから。

 だが歴代のどの聖女よりも力があり、女神様の寵愛も深いのだという。とにかく容姿も人外並みだ。

 光のような淡い金髪に水色の瞳。だがこの瞳は冷静に全てを見透かすような目をしている。


 だから似ている容姿でもグリーンの瞳の彼女とは全然違う。

 彼女は春の木漏れ日のように暖かく優しい瞳をしている。私は彼女に出会って一瞬で恋に落ちた。従兄弟とか関係なく彼女に惹かれて、どうにかならないかともがいて、父も協力してくれていた。


「令嬢方は聖女様にご挨拶にお見えになったのですか?」

「ええ。彼女が伯爵家を継ぐのだそうです。兄君を押し退けて聖女教育で培った知恵と能力と行動が認められて当主の座を手に入れたのだと報告に来て下さったのです。もう一人の令嬢は彼女の妹君で学院でリリベルの事を助けて下さっていた令嬢なんです。私も会ってお礼を言いたいと、ずっと思っていたのでお会いできて良かったです」


 そうだったのか!リリベル嬢の友達の同級生…もう少し愛想良くしておけば良かったなって…もう関係ないか。


「聖女様、明日の早朝、子爵領に向かいます」

「ミカエル卿、親戚だからって甘えて申し訳ないですね。でもミカエル卿なら安心してお任せできます。恐らく祖父母は領地に残りますので、どうか宜しくお願い致します」


 聖女様と別れて聖騎士本部の方へ歩いていると、先程の令嬢が聖女様の侍女達と和かに立ち話をされていた。

 元聖女候補の妹君は少し後ろで姉達の姿を微笑ましく見守りながら待っている。


 優しくて慎ましい令嬢なのだなと少し好感を持って見ていると、令嬢が気付いてペコリとお辞儀をしたので、自分も軽く会釈をして通り過ぎようとすると「聖騎士様?傷が…お顔にすり傷がありますわ」と心配そうに声を掛けてきた。

 ラント卿との鍛錬でついたのだろう。後で医務室に行けばいい。


「ああ、鍛錬の時についたものでしょう。きっと医務室で直ぐに治ります。ご心配ありがとうございます」と言うと、令嬢はニッコリ笑って「お忙しいのでしょう?差し支え無ければ、私が」と令嬢がソッとミカエルの傷に手をかざして治癒魔法をかけてくれた。


 驚いて見ていると令嬢は人差し指を立てて「秘密ですよ。姉に少し教わったんです。すり傷くらいしか治せませんが」とイタズラっぽく笑った。


「ダイアナ!お待たせしてゴメンなさいね。って、まぁ聖騎士様?」

「ダイアナ?お名前はダイアナ嬢ですか?」

「あっハイ」

「傷を治していただき、ありがとうございました」

 とミカエルはダイアナの手を取って、手の甲に軽くキスを落とす。


「お礼はまた後日」

「そんなっ!お礼なんて…」

 真っ赤になった令嬢はとても愛らしかった。

 

 令嬢方に別れを告げて再び聖騎士本部に向かいながら気付いた。

 かなり足取りが軽い。自分は案外、単純で惚れっぽいのかもしれないな。

 だけど何だか前向きに進めそうな気がしてきた。


 その後、2番目の伯父がダイアナ様を速攻でロックオンしたのは後の話。

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