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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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⑫番外編

とある王城内の人事の責任者をしている侯爵談 番外編②と同じ侯爵です。

 第三王子殿下が宰相府の採用試験を受け、難関の試験を見事、合格された。

 王子の身分であるから、本来なら試験を受けなくても希望の職場や王城内の役職に就けるはずだったが、彼は自力で成し遂げるという立派な王子殿下でらっしゃった。


 ほんの数年前の彼であったなら、どの部署でも彼の存在に手を焼いたかもしれない。それか国の為に役に立て!と姉君同様、火山の国に婿入りしていたのであろう。

 しかし今やどこに行ってもやっていけるだろうと評判の、彼の能力や考え方、精神力を鍛えたのは、娘と三年間同じクラスだった妖精令嬢だというのだから凄いと思った。


 滅多に表に出ない王妃様も自らお茶会を主催して、妖精令嬢をお披露目するほど気に入っているらしい。

 王妃様のお茶会は“青薔薇と第三王子の婚約者の披露”というダブルの話題で、高位貴族の間では「誰が呼ばれるのか?!」とその噂で持ちきりだった。


 ただどんなに周囲や他国が絶賛していても、やはり子爵令嬢が王家に嫁ぐ事に反対な貴族はいる。


 しかし開催された王妃様のお茶会で、そんな貴族も絶滅したらしい。

 一体何があったのか?と参加した娘に聞いてみると、妖精令嬢を貶めるような発言があると、発言者を睨むのは王妃様だけではなく、なぜか隣の公爵まで睨んできて、挙げ句の果てには筆頭侯爵家の二人の夫人から呼び出しをくらっていたそうだ。


 何だそれ?私でも怖い。

 もしかしたら王妃様のお茶会とは第三王子の婚約者のお披露目と言うのは名ばかりで、アンチ妖精令嬢のあぶり出しだったのではないのだろうか?と裏で囁かれる茶会であったが、大盛況のうちに終わったらしい。


 もうこれ以上、珍事は起こらないだろうか?

 我々が心配するのは夏の納涼舞踏会だ。その舞踏会で第三王子の婚約者は正式に社交界へのお披露目となる。

 すでにアンチもせん滅しているから大丈夫かと思えるが。


 第三王子殿下と王太子殿下は、今は令嬢に贈る婚約指輪の石を探しているそうだ。それを聞きつけた商人や宝石商がこぞって王城に押し寄せているらしい。

 しかし今のところ火山の国のルビーほど立派な石は、まだ見つからないそうで、献上品の中にあったスタールビーになるのでは?という話だったが、お茶会後、北の国から特使が派遣されて来て、どうやら王太子殿下の時と同様、北の陛下から第三王子の婚約に対するお祝いの品が届けられたらしい。


 王太子殿下の時は、それは見事なイエローダイヤが贈られたのだという。今回もそれに近い物が贈られたのであろうと王城内では実しやかに噂になった。

 そして迎えた納涼舞踏会。


 例年通り全王族が最後に入場した。

 皆の興味はやはり第三王子殿下の婚約者の妖精令嬢だった。妖精令嬢は殿下の瞳の色の青いドレスを身にまとい、それは立派なルビーの首飾りと耳飾りを着けていた。

 あれが噂の火山の国の献上品か!と皆の目が令嬢の首と耳に注目する。


 火山の国との縁談を断ったというのに、どうして祝いにあんな凄い宝石が、逆に贈られる事になったのか?!

 円満解決って一体どんな中身だったのか?と皆が思ったに違いないが、そう言えば火山の国の王子殿下が第二王女殿下にお目通りされたと聞いたから、あの宝石達はきっと王女殿下を迎える為の賄賂であろう!と我々貴族の中ではそういう事になった。


 王族の最初のワルツにより舞踏会が始まる。

 国王陛下、王太子殿下、第三王子殿下と順に踊り出す。最初のワルツは直ぐに終わるのだが終わったと同時にそれは起こった。

 

 第三王子と妖精令嬢が、まだ中央に残ったままだ!

 もしかしたら、また2年前のようなダンスをご披露なさるのか?!と皆が見守っていると、いきなり第三王子殿下が跪き妖精令嬢に箱のフタを開け指輪を差し出したのだ!


 まさかのプロポーズだった。

 令嬢は頷いていたと思うが、突然のプロポーズに会場のあちこちから歓声が上がり、大騒ぎになって会場は盛り上がった。

 それよりも我々の目は殿下の差し出した指輪に向かった。

 青い宝石だ!あの場では上物のサファイアか!となったが、後日、ブルーダイヤだったと聞いた。

 北の陛下のお祝いが凄過ぎる。


 夏も終わり第三王子殿下は無事に宰相府入りが内定し、優秀な学生がどんどん将来を決めていく中、妖精令嬢は王子妃としてのみ活動するのか、学院卒業後の希望を明かしてはいなかった。

 令嬢はどこの試験も受けていなかったが、優秀さも能力も王太子妃殿下と遜色ないと噂されている。故に裏では色んな部署が彼女を引き抜こうと暗躍していたようだ。


 しかし陛下から降りて来たお達しを見て、皆が唖然とした。

 いや一番驚いたのは私だ!なぜなら令嬢を王城の庭師にするよう裁決の書類が回って来たからだ。

 本当にハンコを押してもいいのか?!


 王城の庭師とは確かに重要な仕事だ。

 王族や王城職員の食事を担う畑の世話だけではない。育成の難しい温室内の植物達の世話に、王城の権威でもある沢山の庭の管理があるからだ。特に王城広場の花壇はこの国の顔となる。

 しかし、その割には下働きとみなされる職でもあるのだ。

 そんな職に王子妃を就かせてもいいのか?!


 私が相談しなくとも各部署がそれを聞きつけ、令嬢の説得に必死にあたったが令嬢は「土や植物に触れられなければ死んじゃいます」と私の前で仰ったのだ。


 そうだ!令嬢は植物の癒し手の聖女だったではないか!

 彼女本来の能力とは王城の汚れ切った仕事なんかで使われるものではない!

「私が育てた野菜は王城の皆様の美味しいご飯になりますよ」

 と言う彼女の姿は正しく聖女!私は周囲に非難される覚悟を腹に決め書類にハンコを押した。


 後日、王太子妃殿下が人事部を訪れ、お叱り覚悟の私にこう仰った。

「令嬢はこれで逃げられなくなったわねぇ。植物は令嬢にとって命でもあるけれど、逃げられなくなる枷ともなります。それに何か非常事態があれば一番自由に動ける人ともなるでしょう。最初は私も逃げられた!と感じましたが、実は最も適したポジションと言えますわね。彼女は庭師ですが頭数には入れないよう、庭師の必要人数の確保を今後も任せましたよ」


 ‥‥‥私は王太子妃殿下の背を見送りながら、妖精令嬢は今後も良いように王家に使われていくのだなぁと少し同情したのだった。


 その後も第三王子殿下方の結婚指輪は東の神様がお作りになるのだとかで、殿下方は年明け直ぐに東の国に向かわれるなど、慌ただしく日常を過ごされておられた。

 令嬢のウエディングドレスも南の綿や東の国のシルク、火山の国の金を織り込んだ布で作られるそうだ。


 王族の花嫁は王家から出される支度金を使って、嫁ぐ準備をするらしい。それ故に花嫁の準備された物で家格も分かるという。きっと実家で持ち出す金額の方が多いのだろう。

 しかし彼女の場合、周辺の国々が準備している気がする…信じられない。

 一体どんな結婚式になるのか…。


 唯一、子爵家で用意する物が、引き出物の子爵領産のアップルワインらしい。アップルワインは北の国の輸入が多いが国産のワインは子爵家の物以外に近隣の北の貴族の領地の物がある。

 しかし子爵家のアップルワインは“妖精達の飲み物”と侯爵家が命名し徹底管理され、これまでもほとんど市場に出回らないのだ。

 

 そのワインに画家マティアスが描いた記念ラベルを付けるのだという。それだけで、既にどれほどの価値が出るのか…全く想像できない。

 そんな各国の力の共演で作られる第三王子殿下の結婚式だが、なんと国外からのゲストは一切呼ばないそうだ。なぜなら呼んでしまうと王太子殿下を超える結婚式が軽く想定されるからだと、招待状を一手に引き受けている王城の庶務に勤める元同級生の友人が言った。


 確かに!だが費用は驚くほどかかっていなくてビックリだと財務省の元同級生も言う。

 豪勢に思えるが他国も他の支援者も全て無償でやっていると言うのだから凄い。

 その代わり新婚旅行を半年かけて各国を御礼行脚するらしい。


「そこに費用が回るのだな〜」と言っていた財務省の友人がスネイプニルの登場で驚く事になるのは、また別の話だ。

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