⑩番外編
翌日の早朝、東の国に向け、ザック殿下とリコピンと一緒に馬車で出発した。
今回の目的は神様が作ってくれる結婚指輪を受け取りに行く事だ。それに東の王妃様も名産のシルクをウエディングドレス用にって用意して下さっているらしい。
今のところ私の結婚準備で西の国で用意した物はほとんど無い。
だけど花嫁の準備って、本来、花嫁の実家でするものらしい。王家からも支度金が出るそうだが、結婚式で花嫁の家の家格が分かると言われているそうだ。
通りで子爵家ごときでは王家に嫁げないはずだ。
そもそも伯爵家と子爵家って一つしか爵位は変わらないけど、規模は段違いだ。
確かに私は筆頭侯爵家が後見ではあるけれど、うちの家は実に何にもやっていない。伯父が今年の子爵領のアップルワインを引き出物にしようと動いてくれているが、両親共、伯父に丸投げし過ぎではないのか?
そんな事を考えていると東の国に到着した。
国境では東の辺境伯がまた屋敷に招いて下さってお祝いをしてくれた。毎回、辺境伯はとっても良くして下さっている。本当に感謝しかない。
何かお礼が出来ないか?と聞いたが、彼は何も望まなかったが彼の可愛い奥様が「お腹の子供が産まれたら、ぜひ神様の司書様に名前を付けて頂きたいの」と仰ったので「絶対、伯父に伝えます!」と言ってお別れをしてきた。
東の国の王城に到着すると、王家の皆様が出迎えて下さったが、皆、リリベルを見て固まった。
「やっぱり令嬢だったんだな」って伯父が代表してそう言った。
そうか…前回は髪も短かかったし男装していた。
王子殿下も王女殿下も大きくなってらっしゃったが、何だか皆さん、ガッカリしている感じだった。
え?もしかして令息の方が良かったって事?
「もう。王子様じゃないね」
「王子様はこっちですよ」とザック殿下の方を指すと「本当だ!」って王女殿下は目を輝かせた。
「ぼっ僕はレディでもいいと思います…ですが僕はすでに好きな人がいます!」
第二王子殿下は女性でもいいと肯定してくれたけど、速攻で振られた…。
第一王子殿下はそれこそ立派におなりだった。
だが彼はギリギリと歯を食いしばりながらザック殿下を悔しそうにご覧になっている。
「まあまあ皆、せっかくまたお二人が我が国にお越し下さったのだから、女性でもいいじゃないの」
‥‥王妃様も残念ってこと?
「ハハハハッ。神様はきっとどっちでも構わないさ。さあ皆、お客様に休んでいただこう」
私の性別問題を棚上げするような雰囲気で、ようやく我々は解放され部屋に通された。
「東の王族って変わってんな」
リコピンがソファでマカロンを手にお茶を飲みながら言う。
「あなたも変わってるいと思いますけど…失礼ですが護衛の身分では?」
「おう!俺のことはリコピンと呼んでくれ、えっと神の司書殿か?ヨロシクな」
「伯父様、気にしないで下さい。彼は私の護衛ですけど身分は私より上の方ですので」
「何か相変わらず変な事になってるんだな」
「神の司書殿の肩のウサギも変だけど…」
ザック殿下が不思議そうに見る。
「あ〜これね…」
伯父の肩に乗っていたウサギがビクッとして狼狽えている。ヌイグルミか?
「孫のヌイグルミだったんだけどねぇ、このウサギが神様の伝言を伝えてくるから…仕方なくてね」
「へぇ、名前はあるのか?」
「ウサギ?かな?」まんまだ。
でもヌイグルミも首を傾げて「ウサギかな?」って言っている。
「確かにクマでも犬でもないな」とリコピンが言う。
その後、全員無言だ。
余計なこと聞いた感じが広がって、ザック殿下が気を取り直して「お菓子は食べるのか?」と黄色のマカロンを差し出すとウサギが「そっちのピンクの!」って指定してきた。
「あ、このウサギ、なぜかピンクが好きなんだよ」
また、シーンとなった。
だけどウサギはピンクのマカロンをもらって少しウキウキしながら「あのさっ、これから指輪のサイズを知りたいから神様が来て欲しいってよ」って言った。
「行くか…」伯父がそう言ったので、また皆でゾロゾロと王家の書庫に向かうと、ウサギが扉の前で「そこの君と王子だけ入って」と言ったので、リリベルとザック殿下、二人でノックして入ると東の神様が「やあ!やっと来た。見て!プラチナっていう珍しい金属で指輪を作ってみたんだよ!」ってシルバーに輝くシンプルなリングを見せてくれた。
「サイズを合わせたら石を入れるよ。明日完成するから、また取りに来て」と指のサイズだけ確認されて解放された。
相変わらず唐突でしかもあっという間だったので、二人で唖然と外に出ると「もう終わったのかい?」って伯父が言った。
リコピンも早いなって顔で見ている。
そして伯父の肩の上のウサギがマカロンを飲み込んだのか「ゲフゥッ」とゲップした。
食べるんだ!!




