⑨番外編
秋休みが終わると直ぐに冬休みだ。
この頃、ザック殿下の宰相府入りが内定した。一応、コネじゃなく貴族枠で試験を受けたのだ。だから宰相府に入っても下っ端からの下積みだ。
本人はそれでもいいって言うんだからいいんだろうけど、他の人は仕事がやりづらいだろうな。
私は卒業判定が出てから国王陛下に面会を申し出た。
保留していたお願いを伝えようと思ったからだ。でもそれまでに外務大臣や宰相様、農業大臣まで試験を受けていないのに職場へのお誘いを頂いた。
有難い事だが王子妃って職業を持つのが普通なの?という疑問も湧いた。
そして陛下への面会を依頼しに行った時も王太子妃様に、また補佐官のお誘いを頂いたが、やはり過労死は嫌なのでお断りしておいた。
国王陛下への面会は直ぐに叶って、お会いしに行ったら王妃様もいらっしゃって3人でのお茶会みたいになってしまった。
まあこれから義理の両親になる訳なので慣れておかねばならないだろうと気合を入れた。
自分の望みを言う前に、カテリーナ様の母君である王妃様の日記について、王太子殿下の見解を念の為、伝えておいた。
もちろんザック殿下に日記の内容を秘密にしてもらいたいのもあるからだ。
王妃様は「まあ!王太子は弟思いなのね?!」と感動されていたが、陛下は意外な見解だったのか「余ももう一度、肖像画を見てみる」と仰った。
その後はリリベルの「王城の庭師になりたい!」という要望を伝えると国王陛下は目を見張って驚かれた。
でも王妃様は「賛成!賛成よいつでも美味しい野菜や果物が食べれるわね!」って喜んで下さった。
確かに王妃様は子爵領の食材を気に入って下さっていたから、それと同じ物を王城で食べられるなら嬉しいのだろう。
任せとけ!それこそ乳牛まで同じにしてやる!と思ったが、リリベルの希望は意外と難航して通らなかった。
王子妃が庭師ってそんなにダメなのか?
確かに下働きの部類にはなるんだけどさ。
「私は土や植物を触ってないと生きていけないと思うんだ」って言ったら、ようやく許可が降りたけど。
宰相府の人事部の長である侯爵様に最終的に泣かれたが「植物の癒し手の聖女様ですものねぇ〜」って言いながらハンコを押してくれた。
聖女は大袈裟だが仕方がない。使える文句は使わないとだ。
冬になり、冬休みに入って直ぐに東の国から「神様が結婚指輪を作るから東に取りに来い!」と連絡が来た。
王太子殿下はきっと結婚指輪も誰かが「用意する!」と言い出すだろうと、自分達は指輪を準備せず放っておいたらしい。
王太子殿下の呼び出しに出向いた時の“ほらなっ!”って勝ち誇った感じの顔が、ちょっと憎らしかった。
だが「新年の国民への挨拶が終わったら直ぐに東に行け!」
とそう仰った。
ちょっと待って!?私はまだ婚約者の身なのだけど「新年の挨拶に立たないとダメなの?」って聞いたら、「当然だ!」と言われた。
国民の間では私は“貧乏子爵令嬢の身でありながら、玉の輿に乗った成功者”なのだそうで、恐らく新年は私を見に来るはずだから絶対だ!と言われたのだ。
何てこったい!
早速、王族行事に付き合わないといけないのだ。
その為の王家の紋章入りのマントまで作る事になった。
新年の挨拶は一瞬、テラスに出て「おめでとう!」ではないのだ。何回も国民の先頭集団を入れ替えて手を振る儀式なので、最低でも1時間はテラスに出っ放しの立ちっぱなしらしい。
だから王族は着膨れしてマントで誤魔化してテラスに立つのだ。
いかにも寒くありませんよ〜という顔をして。
何て苦行なのかしら。
よっぽど聖女様の顔見せの方が一瞬だ。
ま〜あれは月一で回数も多いからだけど。
そして迎えた新年初日、私達は早朝から王城の広場に集まった人達に挨拶の手を振った。
だがリリベルは火の魔石をお腹に忍ばせて臨んだ。
王妃様はやはり最初から魔石をお持ちで、お腹と背中に入れて万全でお越しになってらっしゃった。
私は予備の火の魔石を王太子妃様にソッと差し出すと、王太子妃様は真顔で頷いて受け取るとソッとお腹に入れてらっしゃった。
悪いけど数が無いので男達は我慢でヨロだ。
例年だと5分に1回の入れ替えで計10回くらいで挨拶が済むらしいのだが、今年は珍しい子爵令嬢の登場のお陰で15回の入れ替えで2時間くらい時間がかかってしまった。
でもザック殿下も王太子ファミリーも大人気だったから、きっと私のせいだけではないと思う。
ちなみに王女殿下達は幼いので最初の15分程で消えて行く。
だから最初の列は大人気で深夜から並ぶと言うのだから国民の皆様はもっと凄い。
しかしどの道、王族にとって年に一度の冬の苦行には違いない。
多少の雨天も決行らしいし。
王族って痩せ我慢大会が多過ぎる。
不満は言えても表には出せないし本当に損な一族だ。




