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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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⑧番外編

 その夜、台風が南の王都を直撃し、雨戸を閉めていても建物にぶつかる雨風の激しい音が聞こえてきた。

 しかも今は王女殿下の発言のお陰で、王城内部まで激しく嵐が吹き荒れている。


 ザウルス様は台風の災害対策で外出してらしたけど、国王陛下も王太子殿下も報告を受けた後は、こめかみを抑えてらっしゃった。

 だが王妃様は「めでたいわねぇ」とコロコロと笑ってらっしゃる。こういう時は女性の方が肝が据わっているのだろうか?


 それに当の王女殿下も「ちょうど式の前日には台風が去るから良かったね〜」って笑っている。

 だが、こっちの嵐は去るか分かんないぞ。

 少なくともザウルス様は兄殿下達に、とっちめられてしまうに違いない。


 その日の夜は、台風で帰れなくなった姉とリリベルは相部屋になった。台風で外がゴウゴウいっていても子供達は既にお布団で爆睡していた。


「ねえリリ、さっきの赤面していた第三王子殿下、本当に可愛かったわ。姉ちゃん火山の国の女王陛下の気持ちが何だか少し分かったわ」

「ララ姉ちゃん…確かにザック殿下はモテるけど、実はさ…カテリーナ様のお父上の肖像画を見たんだけど、アイザック殿下は少し彼に容姿が似ているの」


「え?激モテだった国王に?」

「うん。これからもっと似てくるんじゃないかって。だから日記の内容は殿下には内緒でお願いしたいの」

「そうねぇ。確かに日記の中の国王はイケてなかったわ。そんなヤツに似てるなんて嫌よね。大丈夫よリリ。誰にも言わないわ」

「ありがとう姉ちゃん」


「それよりリリ、彼の赤面の理由なんだけど…」

「ん?ザック殿下が赤面した事?」

「そう。ただ照れただけじゃないと思うの」

「どういう事?」


「うちのダンナがね、私達の一族は多産の家系じゃないかって殿下に言ったらしいの。だから気を付けろってね」

「確かに父も私達も5人兄弟だけど、そういう事なの?」

「ううん。多分、普通よ。普通の人達に比べてホイホイ子供ができる訳ではないと思うわ。今日ね、エリオット兄様に聞いたのよ。お父様達が5人兄弟な理由」


「え?理由なんてあるの?」

「ええ。一番上の伯父様は金髪に水色の瞳をしていたでしょう?」

「うん。そうね」

「ひいお爺様はね、オリベル王女に似た孫娘が欲しくて息子に孫をねだったみたい」

「ええっ?!まさか」


「そう!まさかでしょう?でも最初に産まれた伯父様の色を見て、期待したみたいなの」

「でも全員男だった…」

「そうね。でもお父様はオリベル王女に似ていたわ」

「だからベルが付く名前?」

「そうよ。そして亡くなる前に伯父様に言ったそうなの。ベルモントを頼むって」


「それで過保護が発動したの?」

「それもあったかもね。でも伯父様自身もオリベル王女命だっただしょ。だからそんな遺言があっても関係なかったはずよ」

 確かにそうだ。


「姉ちゃん、父達が5人兄弟なのは理解したけど、うちは?」

「フフッ。それはお父様がお母様を好き過ぎただけよ」

「だからマリィ姉ちゃんまで年子?」

「そういう事よ。お父様は結婚当初18歳よ。お母様も同じ歳だったからお互い気持ちが爆発しちゃったのね。」

 それに父は侯爵家から解放されて解放感もあった?


「私が直ぐに妊娠しちゃったから、あの人も勘違いしたのよ。でもそれで良かったわ。私も若くてやりたい事いっぱいあるし、そんな立て続けに子供を持ってもね?だから勘違いしてくれて助かった。だからリリ、殿下もこのまま勘違いさせておくといいわよ」

 確かにそうかもしれない。


 姉のこのアドバイスは、やはり10代で結婚するリリベルを後々、助ける事になる。


 そして翌日、昨晩の嵐は午後には無かったかのような晴天一家に恵まれた。王族の早めの台風予報のお陰で被害もほとんど無かったそうだ。

 だが戻って来たザウルス様がどうなったのかは知らない。


 明日は王女殿下とザウルス様の結婚式だ。

 南の国の結婚式は最近ではウエディングドレスも多いそうだが、ほとんどが伝統的な着物を着るそうだ。王女殿下の衣装は何枚もの着物をグラデーションのように重ねて、すごく重そうだったが、とても美しかった。

 男性も羽織袴という男性用の着物を着るそうで、二人の衣装だけでも見応えがあった。


 王族の結婚式は龍神が祀ってある王城内の神社で行われた。

 リリベルも振袖という夏のユカタとは違う生地が厚くて袖が長く、全体に牡丹の花の刺繍が施された美しい着物を着付けてもらった。

 振袖は若い女性だけしか着れないらしく、若くても母親になった女性は袖の短い着物を着るそうで振袖はリリベルだけだった。


 王女殿下の結婚式なので国内外からも祝いの品が沢山届いていたが、中でも驚いたのは北の国からのポーラベアの剥製だった。


「ポーラベア!」リリベルが声を上げると「おおっ!これはいい!これは素晴らしい贈り物だな。」王太子殿下も絶賛している。

 まあ彼はそうだろうよ。

 

 だが王女殿下は?

「そうでしょう?お兄様、私が欲しいって北の陛下にお願いしたの」マジか?!

「へえ〜よく贈ってくれたな」

「うん。代わりに南リクガメの番を送っといたの」

「えっ?南リクガメってジャングルに生息してるんじゃないのか?」

 ザック殿下が心配そうに言う。


「大丈夫でしょ。あんなに魔石がある国なんだから」

 確かに温室なら飼えるだろう。しかも王家の財力なら尚更だ。

「リクガメって草食でしたっけ?」

「そう。でも何でも食べるから成長すると最大直径が2メートル位になるの」

 驚き過ぎて声が出ない!


「そんなに二人を驚かすなよ。そこまで大きくなるには200年はかかる。今回送ったのは何歳のカメなんだ?」

「80歳くらい」

「じゃあ、まだ1メートルくらいだな」

 ザック殿下も驚きからまだ戻って来ていない。

 大体、そのカメの寿命ってどれぐらいなの?


 それよりもポーラベアの剥製だ!

「ララ姉ちゃん!うちの子爵家のクマさん、居なくなってる!」

 すっかり忘れていたけど、王妃様を迎えに行った時は間違いなく無くなっていた!


「え?リリったら今頃、気付いたの?あんたが一番体当たりしていたのに」

 うそーっ!姉ちゃんは気付いていたの?

「何で居なくなっちゃったの?」

「スネイプニル達のせいだってお父様が言っていたわ」

「え?スネイプニル?」

「そうよ。うちの領の野生馬達は多分、ポーラベアを知らないわ。でも北のスネイプニル達は違う。ポーラベアが天敵らしいわよ。だから見たら、やっつけたがるらしいの。サオリがうちの玄関のクマさんに突撃したらしいから、撤去して移民の村の村長の家に移したって言っていたわ」


 そうか…あれからセノビックやタナカも来たりしたから、それは正しいかもしれない。

 ちょっと寂しいけど。


「なるほどな。だったらうちのポーラベアも外から見えない所に置かないとな」

「え?お兄様、夫婦の部屋に飾ったらダメなの?」

「それはザウルスに聞かないとな〜」

 多分、嫌がると思う。王太子殿下なら嬉しいかもだけど。


 けれどスネイプニルが再び南に来るってことある?

 ってこの時はまだ思ったよね〜。


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