⑦番外編
夏休みの真っ只中、南の王女殿下から結婚式の招待状が届いた。夏の暑さがひと段落する秋の半ばに結婚式を挙げるので、ぜひ来て欲しいという内容だった。
リリベルはザック殿下と二人で秋休みを利用して南に訪問する事になった。
私達の他に外務大臣補佐官のエリオット様と、宰相府からは妊娠が判ったガブリエラ様に代わりフィリップ様が同行される事になった。そして護衛には近衛と騎士団の他にリリベルの護衛のリコピンもまた一緒に来てくれる予定だった。
南までの道はすっかり整えられていて、もう5日ほどで国境まで行けるらしい。道中の宿も充実していて私達が学院生時代に訪れた時と随分インフラも変わっていた。
お陰で冬場は暖かい南の方に旅行に来る人も増えたらしい。
だが国外旅行はまだ一般的ではなく、特に我が国の人は他国に比べて聖女の守護から出るという行為に抵抗を持つ人が多いようだ。
気持ちは分からないでもないが東の国のように国外旅行のガイドブックのような物が出ないのは少し寂しいと感じる。
そう言えば今回、ガブリエラ様がご懐妊なさったが、エリオット様のところと、ライ兄のところ、ルト兄のところまでご懐妊らしい。
なぜそんなに皆揃って妊娠しているの?!と馬車の中で疑問を口にしたら男性陣は、何故だか一様に押し黙った。
「…うちと兄のところは第三王子殿下のお陰ですよ」とエリオット様が遠回しに仰った事で、リリベルにも理由が分かった。
姉の下着の効果なのだな。
だが姉が南に帰国した今、新たな下着は手に入らないのでは?と思ったが、なんと姉の下着の西での販売はリリアン様が事業として代理店を始められたそうだ。いつの間に?!
リリアン様はマレシオン様の事を想いながら下着の出番を虎視眈々と狙ってらっしゃるのね。
リリベルは心の中で「頑張れ!」と応援しておいた。
南の国境を越え国内に入ると黄金に染まった田んぼが見えた。
そうか稲刈りの時期なのね。
リリベルが心の中で「新米!」と思っているとザック殿下が「明日は雨だな」と仰った。
リコピンも「雨だし荒れるな」と同じように言う。
水属性の人は天気を読むのが早い。
雨雲の気配を遠くからでも察知できるかららしいが、この時期の南の国は台風という嵐がよく来るのだそうだ。
稲は大丈夫なのか心配になった。
翌日、風が少し強い中、稲刈りをする人々が道中見受けられた。嵐の前に刈ってしまうのだな。大変そうだが慣れているのか、魔法で風の刃を使える農夫が広い田んぼの稲をドンドン刈っていた。
夕方には降り出しそうな空模様だった。
「嵐、酷くならないといいな」とリリベルが呟きながら王都の街に入ると、王城に到着と同時に雨が降り出して、風も次第に強くなってきた。
やはり台風が近付いているらしい。
第二王子殿下が「酷くなる前に到着できて良かったな」と出迎えて下さった。
来る時に通った田んぼで稲刈りが大変そうだったと話をすると、王族は天気の予測が得意なので、既に5日前から台風の予報を国民に出していたらしい。さすがドラゴン様だ。
だからギリギリまで待って一斉に稲刈りをしたのだろうと仰った。なるほど!
到着後、国王陛下や王太子殿下にご挨拶をしてから、先月ご出産された第二王子妃様の元に伺うと、アンドリュー様を連れた王太子妃様と二人の子供を連れたララ姉ちゃん、王女殿下がお揃いだった。
「姉上、お元気でしたか?アンドリューも」
「ザック!あなたも元気そう。それに婚約おめでとう」
「ビーバーちゃん!来てくれてありがとう」
「リリ叔母様!」
王女殿下と姉のご長男はケンカすることなく左右にくっ付いた。相談でもしてたのか?
「到着前に台風に遭遇したらどうしようって心配してたのよ」
「第二王子妃殿下、王子殿下の誕生おめでとうございます。わぁ王子殿下!初めましてだ」
産まれて一ヶ月の赤ちゃんは、まだ首も座らず小さい。
「リーナベルちゃんはデカくなった」
夏に別れたばかりの姪っ子も大きくなっていたが、アンドリュー王子は思いっ切りハイハイで動き回っていた。
「一気にここも賑やかになりましたねぇ」
「エリオットお兄様、聞いたわよ!奥様、二人目ご懐妊だそうね?」
「そう。兄の所もね。そして、こちらもだよ」
「まあライオットお兄様もガブリエラお姉様も?皆、おめでたいわねぇ!次はリリね」
おっと!こっちに変化球飛んで来た。
躱わさねば!と思っていたら何と横でザック殿下が赤面している!
マジか!
「ヤダーッ!第三王子殿下ったら可愛い…」とララ姉が言うと「ホント!可愛いわ」第二王子妃様まで言い出した。
「まあアイザックったら、ウフフ」
「ザック君、子供欲しいの?」と王女殿下が直球を投げて来た。
わー誰か話題変えてー!!って思ったら、何と王女殿下が爆弾を落とした。
「私、今朝、妊娠判ったんだー」
『!!!』
全員で驚いて、直ぐに国王陛下と王太子殿下に報告がされた。




