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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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⑥番外編

 舞踏会でのプロポーズの後、意外にも主役の二人をそっちのけで会場は盛り上がっていたので、放心中のリリベルはザック殿下に連れられて静かに会場を抜け出していた。

 恐らくザック殿下の侍従と護衛は気付いて着いて来ているはずだ。


 向かった先は会場から一番近い王妃宮の庭園だった。

 ここは王族以外、許可のない者は立ち入り禁止だから誰も来ない。そして今日もリリベルは王妃宮に泊まる事になっていたから、少し早いが王妃宮に居ても問題は無かった。


「リリ、ごめんな。俺、君にちゃんとプロポーズしてなかった。それにあんな公衆面前でプロポーズする事になって…。君が一番嫌がるだろうと分かっていたんだけど…」

「ザック殿下、何か理由があるの?でも確かに先に婚約した事に違和感がなかったから、プロポーズとかすっかり忘れていたかも」


 何ならザック殿下をご褒美に貰うとか私の方がプロポーズしていた気もする。


「その…婚約指輪をどうするかって話になって、その時、俺が君にまだプロポーズをしていないって言ってしまったら、舞踏会の場を盛り上げる為にこの場でするようにって言われてしまって…」

「分かった。もう過ぎた事はいいわ。そもそも王族と婚約したんだし私生活だって公衆の余興の為に切り売りするよね…」


「リリ!ゴメンッ俺、そんなつもり本当に無くて…でも結果そうなってしまった…」

「いいのザック殿下、この借りは絶対倍にして返すから!言い出したのは王太子?」

 リリベルの返した言葉に真っ黒な怒りを感じたザック殿下が慌て始める。


「わーっ!!ヤメテッ本当にヤメテ…俺が全部悪いんだー!!」

 頭を抱えて自分を責め始めたザック殿下を前に、リリベルはもうこれ以上何も言えなくなって怒りを収めるしかなくなった。

 だが左手に光る輝く青い石。

 ザック殿下の瞳の色だ。とてもキレイだ。仕方ない。


「今回はこの指輪に免じて許すことにします。キレイだね?このサファイア」

「あ…それブルーダイヤだよ」

「!!!」リリベルは驚き過ぎて声が出なかった。

 だって3カラットはあるだろう?!


「返す!」

「え?いや何言って?」

「だってそんなの貰えない!サファイアでも驚きだったのに」

「君の為の宝石だよ。それに貰ってくれないと怒られる」

 誰に?なんか嫌な予感がする…。


 確かダイヤの産出量世界一は…

「北の国の国王陛下が婚約祝いにって贈ってくれたんだ」

 やっぱり!

「でも兄上の時はもっと大きな倍ぐらいのイエローダイヤだったんだ。だから安心したって言うか…」

 倍の大きさのダイヤって凶器だろ?


「ザック殿下、分かりました。でも何かあちらから他に対価を求められませんでしたか?」

 今、図星って顔しましたね?王子のクセに!


「あっあのさ新婚旅行なんだけど…」

 やっぱりか!

「分かりました。北の国に行きますよ!行けばいいんでしょ!」


「わーん!リリ〜大好きだ」

 所詮、私は立場の弱い王子妃なのだ。強者をバックに付けなきゃ示しがつかない立場なのはしょうがない。

 だけど、ホント私って私自身はこんななのに、伯父も、リコピンも他の国の偉い方々も皆様、とっても良くして下さる。

 

 火山の国の女王ですら、こんな見事なルビーを一式くれたのだ。周りの貴族も私より首元や耳飾りを見ていた気がする。重みも凄い。お陰でボチボチ首も凝ってきたから、もう戻りたい。

 今、誘拐されたら多分、身代金を要求しなくても私の身に付けた物だけで十分だろう。


「ザック殿下、もう戻ろうよ。肩凝ってきた」

「あ!うん。そうしよう」

 その日は結局、一旦、王子宮まで馬車で戻って夕飯を食べてから王妃宮に送ってもらった。


 それからまた日常が戻ってきて、リリベルは夏休みの間、ずっと王太子妃様から貴族に関する教育を受けていた。

 王太子妃様はとても教え上手だったが「これは表だけの情報です」と途中で断言された時は夏なのに背筋が凍った。


 だけど時々、ふと執務室の窓から外を覗くと王太子宮の中庭でアイオット様のご長男様と第一王女殿下が一緒にいるのを見かけるようになった。

 彼らは7歳程の歳の差だ。接点は無いはずだが…いつの間に出会ったのか?


 不思議に思ってアイオット様に尋ねると、ご長男様がアイオット様と一緒に登城した時に、うっかりはぐれてご長男は迷子になったそうだ。

 その時に出会ったのが第一王女殿下だったそうで、それ以来、王女殿下に懐かれてご長男様はアイオット様と登城した際はいつも呼び出されているらしい。


 ご長男様はとても優しい良い子だから、きっと勝ち気な王女殿下に振り回されているのだろう。少し同情する。

 だが実は2年後にそのまま婚約までしてしまう事を、この時のリリベルは想像もしていなかった。

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