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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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④番外編

 新学期から少し経って、私達の婚約発表の騒動も落ち着き始めた頃、ザック殿下と私は元生徒会の皆と一緒に学院の一番人気のカフェテリアに行ってみた。


 昼休みはザック殿下のサロンかマリアンヌ嬢のサロンに呼んでもらって過ごしていたが、たまには皆で開放感のある食堂で食べたい!となったのだ。

 それに私達が一緒に過ごせる時間ももう残りわずかだ。夏を迎える頃には皆、進路の為に動き出す。


 家を継ぐ予定の嫡男も直ぐに継ぐ予定が無ければ、どこかに武者修行として就職する事も多い。下位貴族であれば王城勤め以外にも高位貴族の秘書や補佐官、侍従など。高位貴族なら王城勤めはもちろん、傘下の貴族の土地の代官として行く事もある。

 学院の単位も2学年で取り終わり、夏休み明けの学力テストで卒業判定が出る。その後の授業は必要なものだけ通えばいいので就活や婚活に時間を割く。

 だから皆で集まれるのも今だけだ。


 だが行ってみて直ぐに後悔した。

 滞在中、ずっと皆の見せ物状態だったのだ。カフェの外まで人だかりができた。

 ザック殿下を始め侯爵令息達は、下級生の令嬢にとにかく騒がれた。普段、あまり教室移動以外で姿を見せない事が逆に仇となったようだ。

 さすがに近付いて声を掛けるような猛者はいなかったが、注目を浴びる食事とはこれ程喉を通らないものなのだと悟ったのだ。


 さすがのリリベルも普通の令嬢の量くらいしか食べれなかった。しかも味も分からなかった。これはさすがに午後の早いうちにはお腹が空くだろうな…ヤバいじゃん!

 午後の選択科目の授業の後は王城に移動してシャーロットのお祖母様の作法とマナーの時間だ。

 初回なのに終わったな…。


 だが助けてくれたのは意外な人だった。

 王城への馬車に乗る時にシャーロット嬢が手渡してくれたのだ。

「リリベルさん、これからお祖母様の作法を受けるんでしょ?だったらこれは必要ね。王城に向かう途中で食べて下さいね」


「シャーロット嬢!これBENTOO屋の!!」

「リリベルさんは、あんなカフェの昼食くらいじゃ持たないでしょう?お祖母様は厳しいけれど頑張ってね、私のヒロイン!」


 さすがリリベルのストーカー。

 “私のヒロイン”は余計だが何でもお見通しなのね。リリベルはBENTOO屋のウメボシオニギリを頬張りながら、持つべきではないが2年に渡るストーカーの有り難さを少し感じたのだった。




 その日の王家の週に一度の、夕食の団欒時の事だった。

「アイザック、話に聞いたがリリベル嬢との婚姻は学院卒業後の春を望んでいるのだとか?」

「賛成よ!賛成。ちょうど一年後くらいでしょ?いいわよね陛下?」


「第三王子は王太子教育は終わるのか?それに王太子妃よ、令嬢の方は可能か?」

「はい。令嬢の方は作法の教育担当の伯爵からも王族のマナーを身に付けるのは早いだろうと報告が上がっておりますわ。それにトンガ教授からも早いうちに王子妃として仕上がるだろうとのこと。なので時期的にも問題はないかと」


「なるほど、令嬢は存外に優れていたのだな。既存の公爵令嬢並みではないか。ザックの方はどうだ?」

「はい兄上、私の王太子教育も夏頃には完了致します。もちろん学院の学業の方も疎かには致しません」

 その回答を受け、皆で陛下に注目する。


「そうか。なら王太子よ宰相にその旨伝えると良い」

「父上ありがとうございます!」

「良かったわねぇ!アイザック」

「父上、では明日にでも調整に宰相の所に出向きます。それでアイザック、婚約は既に整ったが婚約指輪はどうする?夏の納涼舞踏会にはお披露目だろう?」


「ハッ!!」

「どうした?」

「俺…いや私は…まだ彼女にプロポーズしていません!?」


『は〜っ?!』全員で驚いた。

「先に婚約が整っちゃった訳ね?」

「違和感無かったな〜」

「恐らく、あっちも気付いてなさそうだな…」


「仕方ないが、納涼舞踏会の場でやるといい」

「兄上!本気ですか?!」

「いいじゃない。きっととても盛り上がるわ」

「そうね。もう知られてはいるけど、いいんじゃないかしら。断られることも無いでしょうし」

「じゃあ後は指輪の準備か。サイズもあるし早くしないとな。王家の宝物庫を見てもいいし宝石商を呼ぶか?ザック?大丈夫か?」


 俺はプロポーズもしていないのに、婚約に浮かれていた自分に唖然とした。




「アイザック!アイザック!」

「母上、どうされたのですか?私はこれから王太子教育なのですが」

「今朝ね、庭師が青薔薇が蕾をつけたって報告をくれたの。近々、咲くわ」

「そうですか。私も時間ができたら見に行きますよ」


「そう。それでね、開花したらお茶会を開こうと思って。ビーバーちゃんをお手伝いに借りてもいい?」

「いいですけど、ちゃんと彼女の予定も聞いて下さいね」

「分かったわ」

 と言って同時に駆け出した母の「ありがとう〜」の言葉は遠くから聞こえた。


 だから最近、母には若手の侍女が多いのか。

 全く淑女の代表があんなに走っていいのか…母は実はとても活動的な人だった。

 そしていつも母の側にいた公爵は、ここずっとマレシオンの後押しの為に動いていて、近頃ではたまにしか母の元に来ない。

 これまで少し歪だった王家の形がやっと正常な形になった気がするのは、きっと気のせいではないだろうとアイザックは思った。

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