②番外編
〈とある親バカの侯爵談〉閑話①の親子と同じ侯爵家です。
私は侯爵位だが、数ある侯爵家の中でも特筆する事のない中堅の家門だ。私自身は王城に役職があり爵位に身合ったそこそこの管理職を担っている。
堅実だが、そんなにパッとしない侯爵家であったかもしれない。
しかし我が家にも転機が訪れた。
私の娘が第三王子殿下と同じ歳だったのだ。
私は親バカだが客観的に見ても私の娘はとても可愛いくて賢いと思っている。それ故に学院の1学年で殿下とまさかの同じクラスとなった時には、私も娘も「もしや王子妃に!」と少し期待したのだ。
ただ懸念材料は1つ。
最後の子爵家の妖精まで同学年の同じクラスだった。妖精令嬢は入学時からやはり注目の的だったが、本人は至って大人しく自ら存在を隠すような振る舞いに、身の程を弁えた令嬢なのだという認識が高位貴族には広がった。
それ故、伯爵家以下の貴族達が鼻息を荒くしたが、途中から入学してきた第三王子の登場でそれがあっという間に覆った。
娘の話によると妖精令嬢は王子と共に生徒会に入ったらしいが、それ以降、第三王子の令嬢避けとして側近となったそうだ。
しかも妖精令嬢は自身の容姿とは真逆の性格で男装まで始めたという。
それにより妖精令嬢はなぜか“美し過ぎる侍従”から“学院の王子様”と呼ばれるようになり、本物の王子殿下そっちのけで学院中の令嬢を虜にしたそうだ。
そして、いつの間にか私の娘まで妖精令嬢を応援するようになっていた。
「お父様、第三王子殿下は私の手には負えませんわ。だから既に出来上がった令息にターゲットをチェンジしましたの」
娘は私よりも出来た子だ。私は娘の判断を信じて応援する事にした。そうして娘は最終学年に進んだ。
事態が起こったのは、その年の年明け初回の議会の前日。
登城直後、王城の議会の権限持つ貴族全員に謁見の間への召集がかかった。
召集の理由は皆の噂によると、第三王子殿下が南の国から戻られた報告と国王陛下と宰相閣下より何かお達しがあるとの事だった。
第三王子殿下には最近、遠い火山の国から縁談が挙がったと聞いていた。それにより殿下は頻繁に南に出向かれていると。
集まった皆とザワザワ、話をしていると第三王子殿下の入場が告げられた。
扉が開き第三王子殿下が入場して来た。だがその腕には一人の妖精を伴っていた。淡い黄金の髪が光を帯びて輝き、たなびいている。そしてエメラルドグリーンに輝く大きな瞳が周囲を興味深そうに観察していた。
そして第三王子殿下はその令嬢を時々愛しそうに見やりながら歩いていた。
その場にいた我々は一瞬で悟った。
第三王子の婚約者が妖精に決まったのだと!
我々は令嬢の美しさと可憐さにしばし見惚れた。だがその後ろの二人を見て後悔と震えが走った。
前筆頭侯爵と前騎士団長が睨みを効かしていたのだ。
何てモノを連れてるんだ…。
国王陛下と宰相の話によると、妖精令嬢は殿下と火山の国との縁談を円満に解消させたそうだ。
だがそれより驚いたのは周辺国家から令嬢が一国の姫に値すると言われる程の評価を受けている事だ。
そう言えば北の陛下にもかなり気に入られていたな…あの時は令息姿だったので、すっかり失念していた。
しかも東では聖女に値すると言われる東の神の司書は前筆頭侯爵の弟、つまり令嬢の伯父だ。これも令嬢が関わっているのか?
なら南は…そうか昨年の夏への使節団に令嬢が入っていた。南の王族への襲撃事件、まさかあれにも令嬢が?!
更に令嬢の姉と同様、彼女まで神話にある左翼の聖女なのだと神殿が宣言したのだ。
‥‥‥確かに私の娘は素晴らしいが、至って普通の娘だ。
妖精には太刀打ちできまい。
ここにいる全員が速やかにそれを悟って、謁見終了後は令嬢に取り入ろうと二人に殺到した。
私は幸い娘が令嬢と繋がっている。急ぐ必要はない。
帰宅後、娘に王城での話を報告すると「お父様、もう号外が出てますわ」と言われた。
何て早い…。
翌日の第一回目の議会では事後報告として第三王子殿下の婚約成立が言い渡されたが、すでに新聞や号外を見ていた他の貴族も、国民の代表団も何も言わなかった。いや言えなかった。
娘の話では既に社交界での第一花婿候補はマレシオン公爵令息にシフトしているそうだ。だが私の娘は意中の令息と良い関係を築いているらしい。ならもういいか。
第三王子殿下の挙式後、私の娘も意中の令息と婚約した。
彼は1学年の時と最終学年に上がった時に首席だった優秀な侯爵令息だった。最終的な首席卒業は逃したそうだが、あの妖精令嬢が相手なら勝負にならないはずだ。
彼女は学生時代から周囲への影響があり過ぎた。
彼は最後の答辞の権利も殿下に譲ったそうだ。
何て空気の読める婿だ!
本人は全力を出し切って殿下に負けたと言っていたが、私的には令息のあり方は好ましい。何て見る目のある娘だ。
やはり私の娘は最高に素晴らしい!




