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王城への引越し後は結婚式の最終の衣装合わせや、式の段取りと打ち合わせで大忙しだった。幸い披露宴や招待状などは全てお城の庶務の仕事らしいので、それは助かっている。お陰で参加貴族のリストや飲食物のメニューの確認をするだけで済んでいる。
それでも忙しくて休憩の暇もないが、ザック殿下はリリベルが王子宮に来たのが嬉しいのか、ずっとニヤニヤが止まらず、時々、王太子殿下やリコピン、ライ兄に小突かれている。
引越して来たとはいえ、まだ屋内別居中だ。それでも毎日朝から会えるのが嬉しいのだそうだ。学院でも会えていたのに。
だけど殿下のハッピーオーラが私にも伝染して訳もなく照れてしまう自分がいる。もうどうにでもなれ!
結婚式の2日前、無事に南の姉夫婦に、子爵領の両親や、ナル兄ちゃんが王都に揃ったと侯爵家から知らせが来て安心した。
爺様と婆様には北の国に訪問する時に、子爵領に寄って報告すればいいだろう。
そして結婚式の当日、ウエディングドレスを着る時に手伝いに来た侍女の中に、なんとヤツがいた。
「リリベルさん、いえもうリリベル様ですね?」
ヤツはリリベルに白粉をはたきながらそう言った。
「残念ながら、まだ研修中でリリベル様の専属侍女にはなれませんが、今日は元同級生で親戚だからって総侍女長の母に手伝いを許してもらいました」
「シャーロット嬢?」
「バレてないって思ってましたか?でも祖母が姉君の嫁ぎ先を、いつも言っていましたから。祖母もさすが姉の孫だわってリリベル様を褒めていましたよ。だから「リリベル様は私のヒロインなんだから当然だ」って言っておきました!」
シャーロット嬢は胸を張ってそう言ったけど、お祖母様にはヒロインとか理解できたのだろうか?
「そしたらお祖母様も「姉は私のヒロインだったわ」って言ってました」
って笑った。似た者同士なのね。
シャーロット嬢は完璧にリリベルの化粧を仕上げてくれた。
「さあ!ヒロインパワー全開で頑張って」
って送り出してくれたけど、だからどうやって使うんだ?ヒロインパワー…。
その後も驚きはまだ続いた。
なんとバージンロードのエスコートに正装した爺様が立っていたのだ。
だからリリベルはつい言ってしまった。
「タンクトップじゃない爺様、初めて見た!」
伯父にも父にも「そうじゃないだろ!」って突っ込まれたけど、そう言って誤魔化さないと泣き崩れてしまいそうだったんだもの。
こんなの想定外だ。
ちゃんと言っておいてくれれば良いのに!
だけどリリベルは爺様に手を引かれ、厳かな雰囲気の中、ザック殿下の元まで頑張って歩く。ここで泣き崩れたら化粧も衣装もやり直しという恐怖を侍女さん達に与えてしまうからだ。私偉い!
だが大神殿の大ホールのバージンロードは長い。
しかも爺様ったら「母の日記を読んだんだ。リリが頑張って手に入れてくれたんだってな。自分の親なんてどうでもいいと思っていたけど。ありがとな。読んで良かったと思ったよ、リリ」
なんて言うのだ。もの凄い試練!?
もう必死に涙を堪えて無事に殿下の所まで辿り着いて、殿下に引き渡される。
ザック殿下も爺様を見て少し驚いていた。
でももっと驚いていたのは式に立ち合ってくれているマリィ姉ちゃんだった。姉ちゃんの驚き顔で涙が引っ込んだ。姉ちゃん、ホントありがと。相変わらず姉ちゃんの変顔おかしい。
気を取り直して式が始まる。
色々と誓約を交わして指輪の登場だ。そうだ!指輪まだ見てないじゃん!
吉と出るのか凶と出るのかドキドキで、箱を持つ大神官様を見ていると指輪の箱が開いた瞬間、また二つの小さな箱が出てきた。
そして「第三王子から好きな箱を選べ」と神様の声が聞こえた。
すでに涙どころか感動も乾ききってしまった。
神様ってやっぱり空気読まないな。
大神官様も驚愕する中、ザック殿下は2択を必死に悩んでいる。
「殿下、どっちでも多分、一緒だから早く選んで」と言うと「絶対か?」って。
もう本当にそういうところ!
「違ったら交換すればいいでしょ!時間が押してる」
「君のそういうところ!」って始まったので
「大神官様!誓いのキスはカットで」って言うと、慌てて「こっちだーっ!」って選んでフタを開けた。
出てきた指輪の石はピンク色だった。
「あーやっぱり君はこっちを選んだかー」って声が聞こえてきたが、構わずリリベルが出てきた指輪を殿下にはめると、ちゃんとエメラルドグリーンになった。
「ほらっ!」って言うと「ぺんか…」って言いながら、ザック殿下はもう一つの箱を開けて、緑の石が付いた指輪をリリベルにはめるとピンク色に変わった。
「何でピンクなんだろ?」ってザック殿下は呟いていたが、大神官様が「次は誓いのキスを〜」と仰ったので、速攻で正気に戻ってた。
大体、何で神様は指輪のサイズなんて測ったんだろ?
全く関係なかったじゃん。でも多分、私達を呼びたかっただけなんだろうなって思っていたら、誓いのキスも終了していた。
大神官様が「これで二人は晴れて女神の御前で夫婦と認められ〜」ってお言葉を仰っている間、殿下は「他の事、考えてただろう?」って少しご立腹だったから「今日から夫婦だね?」って言ったら横で勝手に一人で照れていた。
殿下こそ他の事考えてんな?やらしー。




