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卒業式の一週間前、最終学年にだけ早めに成績結果が発表される。
首席発表は卒業式の場だが、期末テストの成績結果は答辞の原稿準備の為に先に発表される仕組みだ。
リリベルは今回の期末テストは解けるだけ解いたが結果はそこそこだろうと見込んでいる。もちろん卒業単位はその前に取得済みなので問題はない。
そして期末テストの結果発表の日、最終学年の首位はザック殿下だった。
殿下は最後の最後で単独首位の獲得に、皆に祝福されて男泣きしていた。
やっと卒業式で王族として締めることができるね!とリリベルもザック殿下を労った。
ザック殿下の王族としてのプライド、そういうところは本当に尊敬できる。にわか半王族のリリベルには真似出来ないところだ。
そして卒業式当日、ザック殿下は立派に答辞を務められた。
殿下の立派に成長されたお姿に、一年だけでもクラスを一緒した事のある者は皆涙した。
「あのお子様がよくここまで!」と。
そして学院首席卒業の証を授与されたのはリリベルだった。
何かの間違いじゃないのか?私は最後の期末テストはそこそこだったのに。
もしかしたら子爵令嬢から王子妃になる私に、学院側から最後の華を持たせてくれたのだろうか?
そう思う事にしたが、卒業パーティーで学院長にお世話になったご挨拶をした際、そっと「殿下をここまで成長させてくれて感謝する」と耳打ちされたので、恐らく学院長票が大きかったのだろうと思った。
学院の卒業パーティーではザック殿下がパートナーだったので、伯母達の念願の赤いドレスを着ることにした。
夏の納涼舞踏会ではザック殿下が贈ってくれた青いドレスだったから、最後くらい伯母達の希望を叶えてあげようと思ったのだ。
まあ感覚的には親孝行みたいなもんかな。
リリベルはこの後、結婚の為、住まいを王城の王子宮に移す予定だったが、リコピンまで一緒に来てくれるらしい。
ちょっと待って?近衛に再就職したの?と聞くと、王子妃は実家から特別に侍女と護衛を1名ずつ連れて来る事が許されているらしい。
これは他国から王家に嫁ぐ妃への配慮らしいが、なるほどそれでリコピンね。
卒業パーティー当日、私とリリアン様、シャーロット嬢の女性陣はマリアンヌ嬢達からガーベラの花束を頂いた。
ずっと生徒会室で皆で育てていたそうだ。
ガーベラの花言葉は“希望”だ。学院の庭師にも相談して頑張って卒業式に合わせて皆で世話をしたのだと聞いて三人で泣いた。
入学前は絶対に来たくなかった学院だったのに、今は入学して本当に良かったと思える。学院でできた友達はきっと私の生涯の宝物になるだろう。
卒業式後の春休み前夜、リリベルは侯爵家の皆様にこれまでお世話になったお礼を告げた。執事さんや侍女さんを始め、メイドや騎士様、厩舎の皆様には時間がかかるので先に回っておいた。
伯母にも侯爵夫人にも「寂しくなるわ」と涙されて、しんみりしたけど「これからも第三王子殿下と色々やらかしてね。楽しみにしているわ」は、ちょっと余計だと思った。
そして伯父には重要な話があると別で呼ばれた。
それはナル兄ちゃんの件だった。今回、私の結婚式に来てくれるそうだが、一緒に連れて来る予定の女性の事だった。
その人は侯爵家の港を治める傘下の伯爵家のご令嬢なのだそうだが、彼女が14歳の時、沿岸に大型の凶暴なサメが出る被害があったそうだ。
貿易船には被害はなかったが伯爵家が治める浜辺がある漁村には被害が出たそうだ。彼女はその時、領民の子供の一人を守って左足をサメに噛まれ、神官様の治療を受けた後も歩行に障害が残ったそうだ。
その為、彼女は学院への進学も諦めて社交界へもデビューせず、ずっと伯爵家で時期当主の兄の仕事や侯爵家の仕事を手伝っていたのだそうだ。学院は出ていなくても、とても優秀で芯の強い優しい女性なのだと伯父が言うから本当に素敵な女性なのだろう。
今回、兄はその女性を伴って王都に来るそうだ。
なるほど、足の不自由な女性を紹介されるが驚くなという事だろう。
「むしろ“面倒な兄を宜しく頼む”と土下座しておかないといけないのでは?」と言うと、伯父は「王子妃になるのだから止めなさい」とそう言った。
その通りだ。だが下位貴族気風は直ぐに抜けるものではない。
王子妃の皮はどんな貴族令嬢よりも重たいのだなと改めて思った。




