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秋になり、周囲の皆が進路を定めていく中、ザック殿下は宰相府に入る事が内定した。リリベルも色んな所からお誘いの声が掛かるが、結婚したら王子妃なのに皆、私を職業婦人にする気満々なの?と思う。
私は女性王族の務めで、まったり慈善活動をしながら生活したいのだけど。私は元来田舎者のノンビリ主義だし、過労死しそうな職場はゴメンだ。
私達の結婚に関しては学院を卒業した年の春に決まった。
ちょっと早くない?って思ったんだけど、ザック殿下だけじゃなく周りに外堀を埋められ、更にガチガチに固められている感じだ。
私が逃げるとでも?まあ逃げたいとは正直何度も思ったけど思っただけだ。
シャーロット嬢は王城勤めの侍女に決まった。すでに私の侍女になるのだと張り切っているが、頼むからもう彼女から解放して欲しい。奴が侍女になるなら実家に帰らせて頂きます案件だとザック殿下を脅しておくべきだろうか?
リリアン様は公爵家のマレシオン様の秘書になるそうだ。
まだ二人の距離は縮まらないようだが、彼の側にいれるだけで良いのだとリリアン様は仰るのだ。本当に健気過ぎる。
学院祭の後、秋休みには、南の王女殿下の結婚式に招待されてザック殿下と共に南の国に再訪問した。
結婚後もお二人は王城内に住むので、あまり環境は変わらないらしい。でも王女殿下はすでに妊娠してらした…まあ仲良しのお二人だからね。
そして第二王子妃様は無事に王子殿下をご出産されておられた。
冬になり、新年には王族の皆様と国民の皆様へのご挨拶の為、王城のバルコニーに立った。
まさか自分がこちら側になるとは…人生何があるか分からないものだと思った。
更に翌日にはザック殿下と東の国に発った。
東の神様が私達に結婚指輪を作ったから取りに来いと連絡が入ったのだ。そのお陰で私達はまた大トカゲで東の王族の皆様に婚約を祝われた。
そして13歳になった第一王子殿下は見違えるように、ずいぶんと成長され立派になっておられた。
彼は今年の春、立太子されるそうだ。
ザック殿下との結婚に関しては普通に祝ってくださったが、やはりこの時期の5歳の歳の差はまだ大きい。
第一王子殿下はザック殿下を見て悔しそうにされていた。
ザック殿下だって第一王子殿下同様、2年前より姿も中身も立派に成長なさっている。18歳の殿下はどこに行っても令嬢方だけでなく令息方にも羨望の的だ。
それに殿下はすでに王族として様々な公務を務め、顔を出し、広く認知されてらっしゃるのだ。まあ私は今は横で微笑んでいるだけだ。幸い妖精令嬢の化けの皮もまだ世間には剥がれていない。
神様の司書の伯父には令嬢姿を驚かれた。
そう言えば伯父には男装姿しかお見せしていなかった。
「ちゃんと令嬢だったのだな?」は余計だったけど。
神様は私達に「プラチナっていう珍しい金属で指輪を作ってみたんだよ」ってシルバーに輝くシンプルな指輪を見せて下さった。
何のデザインもない、ただのリングだったので、ちょっと意外って思っていたら指のサイズを確認され「帰るまでには完成するよ」ってまた書庫にこもってしまわれた。
ちなみに書庫内と外との時間差はもう無くなっている。
伯父が書庫で半日過ごしたら3日経っていて、ビックリして神様に撤廃させたそうだ。
なんと神様はご自分が引きこもっていた時間は100年位だと思っていたそうだ。実際は300年も経っていたと聞いて驚かれていたそうだ。
東の国境の検問所も南の国境同様に24時間体制になった。
そのお陰で渋滞がなくなって伯父も賄賂が要らなくなったと喜んでいた。商人達は賄賂が入らなくなったが通関の深夜割引で相殺されているので、そう文句も無いそうだ。
私達の東の国滞在は冬休みの間だけだから2日ほどしかいられなかったけど、リリベルは火山の国のグルメガイドブックを編集した出版社に、情報が役に立ったお礼を言いに行くと、また最新号をプレゼントされた。
今、火山の国ではテキーラをアップルワインで割ったカクテル“リリベル”が流行っているらしい。
カクテルに人の名前を付けやがって‥‥‥。
ザック殿下とリコピンには思いっきり笑われた。二人とも覚えてろよ!
だけど以前訪れた東の王都の雑貨屋に行ったり、川沿いを歩いてみたり、短いながらも東の国を満喫した。
完成した結婚指輪はなぜか見る事ができなかった。箱に封印がされていて神様に「結婚式まで開けれないから」と言われた。
何それ怖い!一体どんな指輪が出てくるの?
リコピンは大笑いしていたけど、ザック殿下と私はちょっと心配になった。
冬休みが明けて、しばらくしてまた期末テストの時期が来る。この試験でトップだった人が卒業式での答辞を担当するそうだ。
そして最終的な学院の首席は3学年の成績を総合されて卒業式で発表される。王族はいつもテストの点数は良いらしいが、公務などのせいで出席日数が少なく首席で卒業する事は案外、稀らしいがザック殿下は、また一生懸命テスト勉強を頑張っておられた。
リリベルもテスト勉強を頑張っているが、どちらかと言うと結婚式の準備が忙しい。何よりウエディングドレスや衣装合わせで何度も王城に足を運んでいる。
ドレスは東の国の王妃様がお祝いで下さった東名産のシルクで作られ、ベールとトレーン部分は火山の国から頂いた詫びの品々の中にあった金糸を織り込んだ薄布が使われ、とにかく豪華だ。
普通は花嫁の実家の権威が結婚式で分かるそうなのだが、私の場合、子爵家は恐ろしいほど何もしていない。
色んな国のお陰で私の結婚式が成り立っているのが分かる。
ただこの冬の子爵領で生産されたアップルワインは全て結婚式の引き出物になるそうだ。それも全部、伯父がやってくれている。
もしかしたらバージンロードを一緒に歩くのは伯父の方が相応しいのではないだろうか?




