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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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 陛下と王妃殿下が踊り始め、次の小節で王太子ご夫妻が入る。そして次にザック殿下だ。

 王家の最初のダンスなので、この国の代表的なゆったりワルツだ。技巧も見せ場もほぼ無いが、なんせ踊るのは三組だ。


 もう目立つしかない大注目だ。だけど短い曲なのであっという間に終わる。 

 殿下と輪に入ってクル〜リと一周してターンで終わりだ。

 さあ終わった終わった!端にはけるわよっ! …よ?


「まだ全然、元気だろ?」って殿下!?

 ワルツが終わったら、ものすごいアップテンポの曲の前奏に変わった。

 コントラバスとチェロが低音を響かせ誘ってくる。

 国王陛下も王太子殿下も「頑張れよ」と言いながら去って行く。


 私も!と付いて行こうとしたら手を引かれた。

「逃さねぇぞ!」

 私は学院のダンスの授業で嫌と言うほど殿下と組んでいる。

 実力がバレているのだ。

「アレやるぞ!」

「まだ成功してないじゃないですか!」

「あれから毎日筋トレしてる」

「努力間違ってるー!」

 しかし挑まれると負けず嫌いが稼動するのがリリベルだった。


 私はザック殿下と向かい合う。

 二曲目からはどなた様も参加OKだ。さあ!来て皆様カモーン!だ。

 が、この前奏を聞いて挑む強者はいるのか?

 とその時「リリ久しぶりね。元気にしてた?」と声を掛けられる。

「ララ姉!」

「リリだけ犠牲にはできないからな」

 なんとララ姉とナル兄のペアだった。

 

 姉ちゃんのダンナ様とダイアナ様が端で応援している。

「へえ妖精兄妹と共演か。光栄だね」

 ザック殿下の口の端が上がる。そして「マレシオンっ」って公爵令息を呼ぶ。

 おぉ公爵令息もイケるのか?

 相手の令嬢は…お連れはピンクヘアのご令嬢だが、何だか不安そうだ。


 そうだろうなこの曲、多分ヤバい。

 ってシャーロット!マレシオン様のお相手はシャーロットが名乗り出た。

 そう言えばあの人、いつも一人で複数の令息を育ててた。


 三組出揃ったところで前奏から本番の曲に変わる。

 これはワルツと違って振り付けは、わりと自由だが男性のリードが強く出る。

 リフトなどのアクロバティックな動きは初めての相手だと難しい。ララ姉とナル兄は師は同じ父だが一緒に踊ったことはないはずだ。


 そしてマレシオン様とシャーロットペアは学年も違う。

 こちらはもっと初めましてだ。

 だが他人を心配している場合ではない。私も殿下との闘いなのだ。しかも殿下は筋トレの成果を見せようとしてくるはずだ。

 どこで仕掛けてくるのか!


 ヤバい楽しくなってきた。


 おぉ最初は意外とスローからいくのねって思いきや、いきなり持ち上げてきやがった。足を上げて殿下の動きに合わせて体を反らす。父ほどの安定感は無いが、以前よりグラつかない。

 なるほど筋トレの成果を早速、出してきたか。今日は高さもあるし、きっちり持ち上げてきた。

 しかし一周したところで降ろされて直ぐステップだ。


 どこからか「おぉっ!」と歓声が上がるのが聞こえるが、それどころではない。

 殿下と私はチャチャチャのリズムが多い。

 しばらく軽快な足捌きだ。さあ次は何だ?曲も盛り上がる。

 殿下の動きが変わった!緩急を付けた立ち位置が難しいな、パソドブレか?これは闘牛を模したダンスだ。

 男性が闘牛だが、赤はお前だろ!と何度も思った事がある。しかしここで入れるのか?


 ダンスも変わるのに音楽も付いてきてる。どうして?殿下のスペシャルセレクトなの?

 もう姉ちゃん達もマレシオン、シャーロットペアのダンスも見る余裕が無い。

 そして光速ターンにキックやはねる動作と4拍子?

 殿下一体何を目指しているの?

 そしてやっと最後ポーズを決めて終わる。


 大歓声だった。

「リリベルさん!スゴーい!!」シャーロットが大興奮している。

「リリやるわね」と姉が褒めてくれるが「え?途中で4人とも踊ってなかったの?」

 リリベルは肩で息をしながら茫然となる。


 私は、せっかくルト兄と王太子のネタで終わらせるはずだった舞踏会を、自分のダンスで話題を塗り替えるという大失態を犯したのだった。


 もう今年の夏は二度と殿下の招集には応じない!と心に決めた。

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