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リリベルは、翌日、伯父に無事にザック殿下の縁談の取り下げの交渉ができた事や、南の国であった出来事をたくさん話した。
「そうか。お前ならやり遂げるだろうと思っていたよ。上出来だな」
って伯父は褒めてくれたけど、テキーラをお土産に渡すと、多分、そっちを一番喜んでいた。
「火山の国の王配にもらったのか?アネホって書いてあるな。これは良いヤツじゃないか?よくそんなのもらえたな!?」
「先に水の魔石をあげたお礼なの」
「そうか。なら、これをもらってもお釣りがくるな」
と言ってご機嫌に笑った。
ザック殿下が帰国するまで、まだ時間がある。
王家への報告は殿下が戻ってからでいいかと考える。マリィ姉ちゃんには面会の手紙を送った。
時間ができたのでリリベルは伯父から渡されていた“王妃様の日記”を読むことにした。
日記は北の王子と出会った直後辺りから書かれていた。
彼女にはきっと不貞を働いているという自覚も後ろめたさもあったのだ。だから余計に他人にも気持ちを理解して欲しくて、自分の苦悩を事実として文字に残しておきたかったようだ。
それに時々、国王への怒りや苛立ちも文にして日記にぶつけている。
国王は王妃目線で書かれているせいか、本当に悪い奴で腹が立った。
そのせいで王妃を助け、健気に支える北の王子の良さが際立っていて、王子マジ良い人!イケメンだし!ってなった。
オリベル王女が産まれた時も互いにとても喜んでいた。
王妃はすでに国王との離婚を決意していて、王子と共に北に向かうつもりでいた。なのになんと!離婚が許されなかった。
これ新事実!王妃様は守られたんじゃなく、むしろ自由が許されなかったんだ!東西のお父さん達二人のせいで。
お陰でズルズルと不貞が続く事になってしまった。
しかも国王との子供まで求められた。国の為に。
かわいそ過ぎる…。
ララ姉ちゃんの言った通り、王妃様は聖女様に助けを求めた。それでカテリーナ様ができたんだ。
確かに、この日記はカテリーナ様には見せれない。
ずっと王家が隠していた理由が分かる。そのせいで王家は政治への決定権を失ったけど、カテリーナ様のお陰で戻った信頼もあった。
もし、この日記を読んでいたとしたらカテリーナ様は晩年の父王の世話を出来ただろうか?
ただただ、この日記の悪人は夫であった国王陛下だった。
そして、この国の王妃として宝石タップリ身に付けて亡くなった王妃様は天晴れだった。
最後は残された、命をかけて産んだ我が子へメッセージが書かれていた。
「まだ見ぬ我が子へ“愛している”一緒に過ごせなくて申し訳ない」と。涙が溢れた。
これは爺様へ渡すべき物だ。
爺様は産みの両親を知らないから平気だと、ずっと言っていたけど、これは知って欲しい。ちゃんと愛されて産まれてきたんだって事。
王太子!よくも嘘吐いたな!
確かにこれはカテリーナ様の手記を覆す内容だ。だが当事者には明かされないといけない事実だ。
国王陛下と王妃様には本当に感謝だ。陛下に掛け合わなければ、ずっと知らないままだったのかもと思うと怒りが湧く!
とりあえず姉ちゃん達に報告だ!
「何て事なのっ!!これ泣ける」
ララ姉ちゃんが王妃様の日記を読んで号泣している。
「ねえ、今日はリリの南の報告の件じゃなかったの?」
「そんなの!もう成功したんだからいいじゃない。うぅ爺様…。年中タンクトップの変わり者だけど…」
「爺様のタンクトップの秘密は書いてないの?」
「マリィ姉ちゃん!ちゃんと読んで!」
「はいはい」
「ちょっと!リリっ、マリィに読ませたら鼻水が止まらなくなるからダメよ!」
「あ、それ忘れてた。アンナさんティッシュの準備お願いします」
「お任せ下さい」
結局、姉ちゃん達への報告は王妃様の日記と爺様の話で終わってしまった。だけど、ちゃんと無事に解決した事だけは伝わったから大丈夫だろう。




