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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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「リリベル嬢!また活躍したみたいだな」

「マレシオン様、そう言えば南に一緒にいらしてたんですよね」

「そう。南での事業は侯爵家に遅れを取ったからね。従姉妹や子爵の伝手で今回、だいぶ公爵家も事業を拡げられそうだよ」

 そう言えばララ姉のダンナ様の実家は公爵家傘下だった。妻の商会と板挟みにならないといいけど。


「君の姉上とは扱う物は被らないから安心して欲しい。まあ多少、食品や農作物は被るけどね」

「お互いの国が発展するなら、私は別にいいんですけど」

「そうかい?筆頭侯爵家もそう思ってくれればいいけど。それと子爵には手伝ってもらったお礼に最新の馬車をプレゼントしておいたよ。君の姉上が戻る時に快適だといいだろ?」

「わ!それは姉も喜ぶと思います。ありがとうございます!」


 マレシオン様は学院卒業と同時に次期公爵家当主として動き出したんだな。きっと小公爵様と呼ばれる日も直ぐだろう。

「君は、将来どうするか決めたのか?」

「そうですねぇ。まだはっきりとは」

「そうか。殿下と一緒になるのなら、まだ子爵領には帰らないな。君が何をするのか楽しみだよ」

 そう仰って、マレシオン様は馬車の方へ消えて行った。


 別に何も特別な事をする気はないんですけど。

 往路同様、馬車が先に砦に向かう。リリベル達は恐らく半日近くで砦に着くので明日の明け方に出て夕方の到着を目指す。

 マレシオン様や補佐官達の馬車とリコピンの馬を見送っていると、ラント様が「女神様の任務も終了したんだろ?それで、どんな内容だったんだ?」と聞いて来られた。

 リリベルは神様、三姉弟が会う為のお手伝いだった事を伝えると「そうか」と納得しておられた。


 そして我々が帰国する日、夜明け前にもかかわらず王族の皆様がお見送りに出て下さった。

「スネイプニルの美しい姿も見納めか」

 王太子殿下がしょんぼり仰る。

「ビーバーちゃん、次は私達の結婚式だ。私、来年結婚するから必ず来てね。招待するからね」

 とリリベルを抱き締めた。

「王女殿下、たくさん助けて下さって、ありがとうございました」

「ビーバーちゃん。楽しかったよ。ララちゃんに早く帰って来てって言っといてね」

「分かりました。王女殿下もお元気で」


 第二王子ご夫婦にもご挨拶をして、サオリに跨がる。

 ちょうど王太子妃様とお別れを済ませたザック殿下とラント様もやって来た。

 殿下はリリベルと一緒にサオリに乗る。サオリは殿下一人増えても変わらずパワフルに走るのだろう。


 さあザック殿下覚悟はいいか?

 夜明け前の道は空いているのでサオリも全力疾走するだろう。リリベルが魔石の風魔法を展開すると心得たようにサオリが走る。

 殿下はサオリと走るのは2度目でも全力は初めてだ。ザック殿下の叫び声がきっと王族の皆様にも聞こえただろうな〜とリリベルは少し愉快になった。


 砦に到着すると少し前に馬車チームも到着していた。

 今日は砦に一泊して明日の早朝、また出発する。ザック殿下とはここで一旦、お別れだが、殿下はもう我儘を言わなかった。

 一度、スネイプニルに乗って満足したのか?サオリの爆走が身に染みたのか?分からないが、護衛がしっかり付く馬車の旅が安心なので、皆もホッとしている。


 それにリリベルもラント様も事前に何回かスネイプニルで遠乗りをして慣れていたから本番の旅も耐えれたが、これからも一緒だと5日間、あの爆走に耐える事になるからお勧めし難い。

 リリベルが調理場からサオリ達の野菜と果物をもらって厩舎に向かうと、ラント様が2頭に水や飼い葉を与えてくれていた。そしてザック殿下がサオリにブラッシングしていた。

 2頭ともあんなに赤い髪に興奮していたクセに、今は全く見向きもしないのは一体どういう事なんだろうか?


 北の女神様のご尽力のお陰なんだろうけど、スネイプニル達って本当に不思議だ。

「殿下、お世話までありがとうございます」

「いいんだ。乗せてもらったし、これぐらいしないとな。サオリにお礼を言っていたんだ」

「そうですか。どうでしたか?スネイプニルに乗った感想は?」

「ああ。すごいスピードだった。風属性の人か魔石がないと厳しいな」


「サオリは特にそうだな」

「でも楽しかったよ。とりあえず満足したから、ちゃんとここからは馬車で帰るよ」

「それでこそ王子だな」「ラント兄上はずるいなぁ」

「お前はまだ王族を抜けるな。王太子殿下を助けてやってくれ」

「兄上?分かっているよ。俺は国王を支える道を行くから安心して」

「そうか。済まないな。私は君達の兄の役目を果たせない」

「ラント兄上、俺は好きな事をやっている。兄上も王太子の地位に誇りを持っている。だからラント兄上も聖騎士になりたくてなったんだから俺達を気にする必要はないよ」

「そうか感謝する」


 春になってから、ずいぶん日も長くなった。砦はちょうど夕焼けに包まれて空が赤く染まっていた。

 ザック殿下の髪も夕焼けで更に赤く染まって、まるで炎のように綺麗だった。

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