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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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「ドーサ!マサラドーサだ!」

「よく分かったわね?彼も言っていたけど、本当によく我が国の事を調べているのね?」

 リリベルとリコピンは女王陛下のテントで女王様と共に朝食のご相伴にあずかった。


「それでは女王陛下はヨガが日課で毎朝毎晩、逆立ちしたり天井から宙吊りになられると言うのも本当ですか?」

「本当よ。特に出産後の体型維持には欠かせないの」

「では王子殿下が最近、縄跳びにハマり王宮内の庭の各地で縄跳びを披露しているというのも?」

「…本当よ。だけど誰がそんな事を…」

 ガイドブックすげぇ〜。


 まあどうでもいい情報のすり合わせは、もうお終いでいいか。

 だが「このヨーグルトは普通の味がします」

「当然よ。南の乳牛のミルクで作った物だもの。ヤギ乳の物は今はここにはないわ。直ぐに傷むでしょう?それに乳牛と違ってヤギは子育て期間しかミルクを出さないの。だから連れ歩くのも向かないのよ。途中でヤギを食べるなら別だけど」

 女王陛下が仰るとちょっと怖い。


「冷蔵魔法は?」

「我が国のほとんどが火属性よ。そちらほど水属性は居ないから無理ね。連れ歩けるほどいないのよ。大体、井戸の管理など重要な水場に置いているの。そういう情報は知らないのね。食べる事ばっかりだわ」

 だってグルメのガイドブックですから。それより、そろそろ本題に入ろう。



「おう。火の粉の妖精は、そうしていると少年には全く見えないな?一体どうなっているんだ?双子がいるんじゃないのか?」

 ちょうどオジサン達の監禁をし終えた王配様が女王陛下のテントに戻って来て陛下の横に座る。

「火の粉は余計ですってば。それより王配様、ドーサを頂いていました。美味しいです!」

「私が王配だって知っていたのか?」

「逆に聞きますけど何でバレてないとお思いで?」


 ドーサは米と豆を発酵させた生地を薄くクレープのように焼いた物だ。マサラドーサはドーサの中にスパイスで味付けしたジャガイモを入れている料理だ。朝食でよく食べるとガイドブックにはあった。

「マジか…」王配様はガックリと項垂れる。


(まじな)いは、そちらの神官が返したの?」

「違います。神官様は解除や浄化はできますが、呪い返しはできません」

「では新たな呪詛をアイツらにかけたの?だとしたら、私達は上手く乗せられたって事になるわね?」

「わあ!それは考えていませんでした。でも呪詛返しは間違いなく自分達がかけたものが返ってきているはずですよ。返した人は南の王女殿下です」


「王女?!あの龍憑きとかいう?」

「そうです。王城の男性貴族用の客室に仕掛けられた呪物はほとんどが絵画で、絵に描かれた人物が何かしらの行動を起こすものでした。弱い物は誘惑の声をかける。でも中には洗脳をしてくるような呪物もありました。王女殿下は絵の人物全員を、逆に洗脳して呪いをかけた人、もしくは呪いを依頼した人の方に向かわせたんです倍の効果を付けて。だからオジサン達は結構苦しんだのではないですかね」


「ったく。だからあの王女は苦手だったのよ。いつだって人の心を読むような目をしていたわ。よくあんな不気味な王女といつも一緒にいられるもんだわ」

 確かにそういうところはあるけど、案外的外れだったりするから面白いんだけど。

「呪いの件は分かったわ。次はお前の要望を聞こうじゃない?言ってみなさいよ」


「これは本来、こんな状況じゃなくても提案するつもりの内容だったんです。私は女王陛下も王配殿下も本当はザック殿下を迎えたいんじゃなくて、周囲の権力者に言われて仕方なく婿に迎えるのではないかと思っていたんです」

「まあ!大した甘ちゃんね?これまでのアイザック王子への求婚は全部私の意思よ。彼は可愛いしタイプだもの」


 なんと!


「王配様も同意でらしたんですか?だったら何であんなに毎日、悲壮感が?」

「王配の意見も気持ちも私には関係ないわ。今は夫がたまたま一人ってだけだし。それも出産があったからだわ」

 もしかして火山の国の王様はハーレムを築く文化なの?!


「私は違うぞ!妖精よ、そなたの言う通り縁談は気乗りしていなかった。分かってはいたが妻を他人と共有する事にも抵抗があった。だが赤い髪の主なら良いかと、ずっと自分に言い聞かせていた。国民も喜ぶだろうと。だが今は少し違うな。君の唯一なんだろう?こうやって乗り込んで来るほどに」

「そうです。アイザック殿下はお渡しできません」


「いいわ。どうせアイツらはお前達が乗り込んで来る前に、本当は西に呪詛を働いていましたって言って、処分してやるつもりだったのよ」

 だから先手を取られたって言ってたの?

「アイツらを代わりに処分してくれたお礼に縁談は取り下げてあげるわ。それに南の王太子の前で私のメンツを守ってくれた礼よ。これで満足?」


「いいえ」

「おいお嬢!縁談はちゃんと潰したじゃないか!」

「陛下は王配様の気持ちを知っていながら、その気持ちはどうでもいいの?アイザック殿下を諦めても、また違う人をお婿さんに迎えるの?」

「お前には関係ないわ。我が国はお前の常識とは違うのよ」


「妖精、ありがとう。でも陛下の仰る通りだ。なあ、もし私達がそなたの言う通り、本当は他の伴侶など迎えたくなかったとしたら、そなたは何か提案があったのだろう?それを聞いてもいいか?」

 王配様…優しい。泣ける!だから、あなたの事もどうにかする!


「女王陛下!南の王太子殿下は仰ったわ。ちゃんと私の要望を叶えろと!」

「そうよ。だから縁談を取り下げるって言ったでしょ。それがお前の願いでしょ?」

「違うわ!」「お嬢!」

「私の要望は今後、女王陛下は王配様以外の配偶者は持たない。それを叶えてもらうわ!」

「何ですって!」


「王配様!その事を前提に提案を致します。ここに西の国に居る赤い髪の男女0歳児〜60歳までのリストがあります。赤い髪はほぼ王族か王族の傍系、だから身分に問題はありません。しかも属性はまだ判明しない子供以外、全員が水属性。喉から手が出る程欲しいのではありませんか?」


「年配者は…少し悩ましいが、そのリスト内には何人挙がっている?」

「30名です。ですが残念な事に、そこにいる私の護衛のリコピンを含め20名は既婚者です。でも今直ぐの婚姻じゃなくてもいいでしょう?残りの10名はまだ婚約者もいません。それにこれからだって恐らく赤い髪は産まれてくる。だから王配様の息子の王子殿下が頑張ればいいじゃないですか!今までアイザック殿下に向けていた努力を、どうか!まだ婚約者のいない他の赤い髪の人に向けて下さい。それが私の提案です。お願いします」

 リリベルは頭を下げる。

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