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ザック殿下が来られるまで、予定ではあと2日はある。
リリベルはしばらく彼らのテントを見張る事にした。その間、ラント様はサオリ達の世話をして下さっていた。
火山の国の方々は滞在中、時々、この国での外交や商談などで外出する以外は目立った行動はしていない。
だが一度、噂を聞いたのかスネイプニルを見に来た事があった。その時は女王陛下ではなく、例の護衛が数名の部下を引き連れてという感じだった。
リリベルは令嬢姿を知られている。見られたら警戒されてしまうだろう。
だからずっと男装中だ。
それ以外は変わった事は無いのだが、火山の国の御一行を見ていて少し気付いた事がある。
恐らく彼らも一枚岩ではないと言う事だ。ご意見番のような中年男性を筆頭に女王に意見をしているようだった。
恐らく女王がまだ20代で若いからというのもあるだろう。
女王陛下は適当に彼らをあしらっていたが、例の護衛様はよく苦い顔をされていた。
南の国の武士様方も彼らを遠巻きに監視している。
なぜなら彼らが新たな呪いを城内に仕掛ける恐れがあるからだ。
ザック殿下より数日早く来たという事は、呪いを仕込む予定だからではないか?と彼らも警戒しているのだ。
武士様方が火山の国の人に注目されているせいか、今のところリリベルは火山の国に警戒されずに動けている。
それにラント様の方が聖騎士の制服のせいで目立ってくれている。まあご自身は一切そんなつもりがないのが笑えるが。
本当に自分には無頓着な人なのだ。
王太子妃様のお兄様でなければ、ラント様はきっとここでもモテモテだっただろう。
侍女もメイドのお姉様方もラント様にはとても優しい。
だがリリベルにも男女問わず、皆さん大変優しくして下さっている。
しかもリリベルがテントを見張る為に樹々に潜んでいると、皆、やって来てお菓子をくれたりする。
何でバレてんだろ?
「王女殿下、気配を消しているはずなのに南の皆さんには、なぜか見つかってしまうのです」と言うと
「ビーバーちゃんは風魔法ではなくて植物に頼んで隠れているのでしょう?だから好意的な人には姿が見えるんじゃない?」
と言われた。そんな事初めてなんですけど!
「君は最近、庭に潜む妖精だと言われているぞ」
王太子殿下が笑いながらやって来た。
「見つけたら良い事が起こるそうだ」
第二王子殿下もニヤニヤしている。
「隠れるどころか探されてるんだな…」
ラント様は呆れている。呆れるラント様はもう何度もお会いしているから、ちっとも新鮮じゃない。
「ま〜火山の国の人にはバレてなさそうだからいいんじゃない?」
体調が戻って来られた第二王子妃様が仰る。
「お陰で毎日、お菓子もらってます」
「あまり君を甘やかさないでもらいたいな」
「まあ厳しい事を仰るお兄様は初めてだわ」
王太子妃様が新鮮そうにラント様をご覧になっている。
だが馬場に陛下以外の王族全員が集まったら目立つじゃないか。ちょっと迷惑だなと思っていると、例の護衛さんが部下を数名連れてやって来た。
「皆様、お集まりで何かあるのですか?」
「ああ、いや白馬を見に来たのだよ」
王太子殿下がシレッと仰る。
「そう美しい2頭でしょう?心が癒されるわ」
第二王子妃様も涼しく仰る。
「あの馬達はあんなに立派なのに見るだけなのですか?」
「そう我々の観賞用なのよ。デリケートな馬だから、あまりそちらの方々も近寄らないように言っておいてね?」
王太子妃様が注意を伝えて下さる。有難い。
「そうですか、もったいないですね〜」
そう言いながら彼らは去って行ったが、例の護衛さんとリリベルは目が合った気がした。
多分、ラント様の事も気にして見ていた。
恐らく南の国の者じゃないなと警戒したのかもしれない。
大丈夫かな…?心配になって風魔法で気配を消して彼らの後をつけた。
なんか陰で「あの金髪達に注意しろ!」とか報告されているかもしれない。
だがそれはリリベルの杞憂だったのか、護衛様は部下と別れ、一人になって中庭の外れのベンチに座り、何だか溜息を吐きながらボーッとされていた。
そのせいかリリベルはつい彼に声を掛けてしまった。
「こんにちは。火山の国の騎士様」
「はっ!君は馬場に居た、あの白い騎士の見習いだろう?一緒に白馬の世話をしていたな?」
見習いか…そう見えるのか。まあいいかそういう事で。
「何か用か?」
と聞かれたが、何も考えずに声を掛けてしまったと動揺する。
ちょっと行き当たりばったり過ぎた…リリベルに冷や汗が流れた。




