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ラント様がちょっとションボリしていたので、夕飯の前に“光の刃”を教えてもらおうとお願いしてみた。
これまでのスネイプニルの旅ではそんな事、お願いする暇なんて一切なかったからだ。
「さっきあんなに呪物を探したのに、まだ魔力が残っているのか?」
「え?だって土魔法ですから」
と言うと真面目な顔で黙った。
彼は聖騎士になって属性が変わったから1つの属性の常識を忘れてしまったんじゃないのか?
「もういいや。動じるなだったな」
と仰るが、どこに動じる要素が?!でも教えてくれるみたいだったので砦の屋上に着いて行って最初に説明を受ける。
光の刃とは全ての物を切れるそうだ。全てとは?物体はもちろん、お化け?霊体のようなものから呪術、何なら呪術で発生した霧や雲、液体や気体まで普通の刃物で切れない物が切れると仰った。
ただし光の刃を出せる回数に個人差があり1回出せるだけで聖騎士になれるのだそうだ。
だったらそれって「聖騎士の最終試験なんじゃないですか?」って聞いたら「その通り」と言われた。聖騎士に関する新たな事実だ。
だから「教えただけじゃ、きっと出せないぞ」と言われた。
そんな事言われたら俄然やる気が出るのがリリベルだ!
マスターして、ナル兄に見せてやるんだ!フフフッ。
だが父に見せたらすぐに出来てしまいそうだな〜あの人器用だから。って考えていたら、ラント様が一度見せてくれると仰った。
「凄い見たい!」
久しぶりにもの凄いテンションが上がる。
ラント様は両手に魔力を込めてらっしゃった。恐らく治癒魔法に近い聖魔法だ。それを両手にまとめて手の平をスライドさせるように飛ばす。風の刃と同じような出し方だが属性が違うんだ!
刃は光の弧を描いて空高く飛び、雲を引き裂いた。
凄い!風の刃と要領は同じだけど光だから凄くカッコいい!
「きっと風属性の人なら早くマスターできそうですね?」
って言ったら「風属性でも風の刃を出すのが難しいだろ?」って言われた。
確かに騎士団で使える人は多くはいないけど…そもそも騎士団は火属性が多い。
「でも農家にはたくさん居るよ」って言ったら笑われた。
「そうだった」って。
そして「出来そうか?」って聞かれて考える。
「今日はもう魔力は使わないかな?」
「そんなに消耗しそうか?」
「だって失敗したら、もう一回ってなるし」って言うと
ラント様も「そうだな。私も5回くらいが限界だ」って仰った。
そんな回数しか使えないなら結構な必殺技じゃない?
しかし5回とは、それはどれぐらいのレベルなのだろうか?帰ったら聖騎士の誰かに聞いてみよう。
そしてリリベルは試してみて一回で出来た。
でもラント様とは比べ物にならない小さな刃だ。ビュンじゃなくシュンって感じ。多分、数本の草しか刈れないな。ちょっと魔力をケチったかも。
だけど「凄いな〜上出来だぞ!」ってラント様は褒めて下さった。
「正直、まさか説明と見ただけでできるとは思わなかった」と仰ったので
「植物の種の発芽に似てるんです!ちょっと魔法を込めて「うりゃっ」ってするとタネがパカっと割れて「ポンッ」って芽が出るの。それと似てた」って言うと大笑いされた。
「光の刃はタネの発芽と一緒か〜」って。
ラント様の大笑いも新鮮だった。
次の日、私達は朝ではなく陽が落ちて暗くなってから砦を出て国境に向かった。国境の関所は最近、物流が増えたせいで24時間開いているそうだ。
しかも夜に通関すると深夜割引きがあるそうで日中の混雑緩和に役立っているらしい。夏に来た時と随分、変わっている。
東との関所は大渋滞だったから、向こうもこの制度にすればいいのにと思った。伯父に言っとかないと。ん?王太子にか?と考えているとあっという間に順番が来た。
入国と通関を済ませ無事に南の国内に入った。
なぜ出発を夜間にしたかと言うと、夜でもサオリ達のペースは落ちない事が分かっていたし、白馬が目立ちにくいからだ。
そうしてあっという間に早朝には南の王都に到着した。
「ラント様、半日で着いちゃった!」
「道が整備されていたしな。夜は人通りもほぼ無くて良かった」
そうサオリもタナカも侯爵家に来る時、恐らく夜間に走って来たのだ。白馬は目立つからね。
懐かしい王城が見えて来た。
以前と少し形は変わっているが、良かった!ちゃんとリフォームされてる。白い蟻塚のままだったらどうしようって思ったよ。
王城の門の入口に立っている武士様の所に近付くと
「ビーバーちゃ〜ん」と声が聞こえてきた。
城内から門の方に走って来るのは王女殿下だった。
これは危ないな。リリベルはサオリから降りて手綱をラント様に「お願いします」と渡す。
サオリにも「あれはドラゴン様だからお利口にね」と伝えて少し前に出ると、王女殿下が王太子殿下と一緒にいらして一言。
「ビーバー‥‥‥君?」あぁ男装してますからね。




