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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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「あの時の出産にかかわった医師や神官にも聞いたのよ。そしたら彼らは出産には全くかかわらず夫人の産後と赤ちゃんの処置しかしなかったと言ったわ。そして妊婦の出産を手助けし導いた、あなたが素晴らしかったと皆が口々に言うの。一体あなたは何をしたの?それにどうしてそんな事ができたのかと思って」


「王太子妃様は私が出産の手伝いに何をしたのかをお知りたいのですか?」

「そういう事ね」

 それはちょっと意外な質問だった。


「あなたがもし特別な事をしていて、それが他の人にもできる事で参考になるなら、出産が多くの妊婦にとって苦しまず、もっと楽なものになるかもしれないでしょ?」

 王太子の報告だけで、そこまで気付けるの?王太子妃様は常に民目線で本当に国民の事を考えてらっしゃる方なんだ。


「子爵領には小さな神殿と、出産ができる産婆さんがいる産院が1ヶ所しかないんです。もちろん医師もいないし。だからなるべく妊婦さんの人数や場所を子爵家では把握するようにしていて、遠方の出産には子爵家の馬車で産婆さんが直ぐに駆け付けられるようにしているの」


「でも産婆さんも沢山はいないから、子爵家もお祖母様を筆頭にマリベルお姉様と私がよく駆り出されていたの。だから妊婦さんには慣れているし、時には産婆さんが来るまでの対応をする事もよくあったの。私達はそんな時、出産まで治癒魔法で陣痛の痛みを和らげるの」


「そうしたら妊婦さんはそれだけで体力も温存できるし、ご飯も食べれて水分補給もして本番に臨めるの。お母さんがリラックスできると赤ちゃんも出てくるのが早いのよ。それで子爵領は自慢じゃないけど妊婦さんも赤ちゃんも死亡率はここのところゼロなの」


「ゼロなの?!」

「そう。でも今は私もマリィお姉様もいないから、お父様が手伝っているみたい」

「領主が?!」

「うん。うちの領は皆、そんなもんだと思ってるから」

「は〜っ」


 王太子妃様は大きく息を吐いてソファに深く座り込んだ。

「本当に型破りなのね。子爵領は」

「さあ。私は他の場所を知らないから。それにずっと領民を守る事は領主とその家族の務めだって、お祖母様に当たり前のように連れ出されていたの」


「でも他の3人は違うのね?」

「お祖母様がお産を手伝うようになったのは、ララベルお姉様が学院に入った後からなの。恐らく子育ての手が空いたから。それに、その頃はマリィお姉様だけが手伝ってた。私はなかなか治癒魔法が使えなくて一年はかかったから」


「それからマリィお姉様は大神殿に入っちゃったし、ベルナルドお兄様は侯爵家に入ったから、お祖母様の手伝いは私が治癒魔法を使えるようになってからだけど、王都に来るまではずっと手伝っていたの」


「分かったわ。多分、重要なのは陣痛を和らげる事ができる治癒魔法が使える事ね?だったら神官でも可能という事よね」

「多分」

「ありがとう。参考になったわ。これで国全体の妊産婦と赤ちゃんの死亡率を下げる事ができるといいのだけど」


「そういう事を手伝える方は、王太子妃様には沢山いらっしゃるの?」

「そうは居ないけど、全く居ないわけでもないわ。ねえ、あなた卒業したら私の補佐官にならない?」

「ええ?本気ですか?」

「ええ本気よ。あなたが居ると何か国に役立つ事が、たくさん見つかる気がするの。それにあなた自身も役に立つ気がするし」


 何だか能力を見込まれているのかもしれないが、もし王太子妃様の補佐官なんかになっちゃったら過労死するんじゃないだろうか…?

「考えときます」

「ふふっ。多分考えないでしょう?」

 バレバレですな。


 「でも今後、アイザック殿下と一緒になるなら、どうするか考えておかないとでしょう?大人しく彼の妻の座でジッとしているつもりではないでしょう?」

 え?ジッとしていては駄目なんですか?!リリベルは無言で王太子妃様の圧に耐える。


「まあいいわ。殿下が卒業後に何をやりたいと言い出すのかにもよるし」

「それは王太子妃様もご存知ないのですか?」

「想像はつくわ。殿下はずっと王太子殿下の治世の手助けをしたいと仰せだったのよ。だったらそれを叶えるポジションは限られてくるでしょ?」


  国王補佐官…今はその職は空席だ。国王に決定権が無くなり執務が減ったとされるからだ。それに兄弟でそれは世論的にどうか?

 なら宰相府?もしくは外交関係。でも宰相府なら外交を含む全ての国政に携われる。

「思いついた?二人で同じ道に進むのもありね。でも私の所はもっと情報が集まって面白いわよ?それこそ貴族の事とかね」

 リリベルはそれを聞いて身震いをした。


「やはり要検討で」

「考える時間は残り一年も無いわよ。でもしっかり考えなさい。あとララベル夫人に“ありがとう”って言っておいて。また“ベルにしちゃってごめんなさい”とも」

「分かりました」

 リリベルは礼をして応接室を出る。


 王太子妃様の侍女さんが残ったお菓子をお土産に持たせてくれた。

 こちらこそ、ありがとです。

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