閑話
年末、マリベルは西の沿岸地域に遠征に行っているし、マレシアナは第三王子の件で忙しくしている。
それに自分達の夫もそれに巻き込まれて長期間、屋敷を留守にしていた。
アイリーン、ソフィーナ、ビアンカは年末のある日、夏以来、再びお泊まりで公爵家に集まる事にした。
「外務大臣補佐官のエリオット様は分かるのよ。でも何で王太子殿下の護衛のライオット卿まで第三王子殿下に付いて行くの?」
「マレシアナの指示だって聞いたわ。多分、夏の派遣も同行したからだと思うけど」
「夏のもマレシアナの指示だったの?」
「多分、お義父様よ」「前侯爵の?」
「そうよ義父は引退しても、まだ凄い影響力があるの。むしろ引退後の方が身軽であちこちに顔を利かしているわ」
「でもそれも全部リリベル嬢の為っぽいのよね」
「リリベルちゃんの?」
「そうアイリーンの所のダンナ様も毎回、巻き込まれてるじゃん。今回だって」
「今回は陛下の侍従だって聞いてるけど」
「王妃様を迎えに行くんだよね?」
「王妃様も大変だったのよ。南の襲撃事件とか王女様と第三王子殿下に立て続けに色々あって、精神的に参って子爵領に公爵様と静養に向かったみたいだよ」
「ああ子爵領、良かったよね〜確かに景色もご飯も良くて静養に向いてるわ」
「実はさ、私の兄も子爵領でずっと静養してたらしいの」
「えっソフィーナのお兄様って、今は南で商会の商会長をやってるんでしょう?」
「そう!頂いた米酒とか南の国のお菓子、とても美味しかった。中でもあの米酒ケーキが最高だったわ」
「子爵領で静養してる間に機会があって南に行って、そこで侯爵家が立ち上げた商会に携わったらしいの」
さすがに兄が子爵令嬢の侍従をしてたなんて言えない…。
「確か身体を壊されて王太子殿下の側近も御辞退されたんだものね。もう身体は大丈夫なの?」
「うっうん。もう問題ないみたい」
「そう良かった。それよりダンナの南の国でのお土産というかプレゼントって名目で侯爵家から送られてきた物なんだけど」
「あ!私もそれ話したかったんだ」
「ん?それって私も南のお土産って個別でもらったヤツかなぁ?同じ物なのか確認したいから先に二人のを聞いてもいい?」
「えっとね」二人で顔を見合わせている。
「私のは基本、ダンナに近い色なんだけど、多分…多分ね…あとはダンナの好みの色なんだろうなっていうか…」
なんかソフィーナにしてはまどろっこしい。
「私のもそんな感じ!だけど…この国ではあまり見ない物だから躊躇するっていうか…」
「ねえビアンカは試したの?」
「えっ?!あ〜……」試したのね。
「二人が躊躇してるから何となく分かったわ。多分、私がもらった物も同じだわ。でもサイズが分からなかったから。サイズ調整が効きやすい物にしますって書いてあったわ。更に二人目を頑張ってねって」
「アイリーン、あなたの想像通りよ。それであなたも試したの?」
「もちろんよ!二人目欲しいもの」
「威力はどうなの?」
「確かに聞きたいわ。あなたのダンナ様って妖精なんだもの!そういうの想像できなくて」
「そうよ!あなたの娘、あなたそっくりだし。一人で作ったんじゃないの?」
「ちょっと!そんな事あるはずないでしょ!でも次こそは妖精を産むわ!」
「次も自分二世だったら諦めたら?」
「酷いわね〜!まあ妖精はルト様一人でも十分幸せかな」
「まあアイリーン!惚気ちゃって。っていう事は効果があるのね?」
「フフン。妖精の秘密は明かしたら駄目なのよ」
「え、ずる〜い!」
「だってソフィーナだって教えてくれてないわ。ライオット卿はどうだったのよ?」
「まあヒントくらいあげるわよ」
「え〜何々?」
「南に発つ前に『帰って来たら、夜はこれを着て出迎えて欲しいな』って言われたわ」
『キャー!!』
「何それ、すご〜い!ソフィーナ体力つけて待ってないとじゃん!もしかしてビアンカも?」
「‥‥‥」「さすが兄弟ね」
「きっとアイリーンもよ。帰って来たら、それでお出迎えしてみて」
「え?うちは毎日よ。ルト様が帰ってくる時は、いつもそれでお出迎えなの。だって彼の色だし」
『キャー!!』
「アイリーン!大胆過ぎるわっ」
「ふっ。恥じらってたらタイミングを逃すわ」
「確かに!特に私達のダンナは長期の外泊も多いものね。私もアイリーンを見習うわ」
「私も!」
そして夏頃、3人の同時期の懐妊が判るのはまた後の話。




