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「悪いなリリベル嬢。騙して連れて来るような事になって。でも俺が君を誘うとシャーロット嬢が付いてくるだろ?」
確かにあの人はリリベルの恋愛ストーカーだ。
「構いません。それでお話とは?」
侍従さんがお茶を淹れてくれる。
「まずは先日の事を詫びたい」
先日の事とはザック殿下のお部屋での件だろうか?殿下がうずくまって動かなくなった時の事ならならもう吹っ切れている。
「はい。その件はもう大丈夫です。ザック殿下こそ、私の事はこれ以上お気になさらないで下さい」
「それはどういう事だろうか?俺はまだ君に何も告げていないが」
「でも殿下は…私にゴメンと。それが答えなのかと「違う!違うリリベル嬢、俺はそんな事を言いたかったんじゃない」
「じゃあ何で?急に床にうずくまったり…」
「そっそれは君が急に俺を寝室に連れ込んだりして、しかも鍵なんてかけるから!」
「だって2人きりになれる場所、あそこしか無かったじゃないですか!」
「俺は君が好きなんだ!だから寝室になんて連れて行かれて二人きりになったら…そんなの…そんなの意識するに決まってるだろ!」
「寝室?」
「そうだよっ。ちっともおかしい事じゃないぞ。君はもっと警戒すべきなんだ!俺は毎回、君にドキドキさせられっぱなしだ…」
そう言って殿下はまた手で顔を覆ってしまった。
「じゃあ殿下は火山の国には?」
「そんなの行きたくないよ!縁談だって断りたい」
「それが殿下の本音?」
リリベルは向かいのソファに座る殿下の横に移動して殿下の方を向く。
「そうだ。君が好きなのに他の女性と結婚なんてしたくない。君とこの国で生きていきたいんだ!」
殿下はリリベルの両肩を掴んで縋る。
「嫌だ。絶対に嫌だ!王子の義務も国益もどうでもいいと思える程、君が好きなんだ」
リリベルの心がジワジワと温かくなっていく気がする。
「良かった。私、独りよがりのヤベー奴にならなくて。そして今日も令嬢に戻ってて正解だった」
「何だその独りよがりのって?」
「うん。殿下が私の事、好きじゃなくても縁談潰してやろうと思ってたの。殿下が幸せになれない気がして」
「プッ何だそれ。でも何か嬉しいな。それに令嬢なのは確かに正解だ。俺、男に告白しなくて済んだ」
「男じゃなくて男装だってば」
「そうだけど、でもやっぱり告白するなら令嬢にしたい」
殿下の右手が移動してリリベルの左頬に触れる。
殿下の温かい手、いつも私をエスコートしてくれたり、心配してくれる手だ。
リリベルがニッコリ微笑むと殿下の左手が腰に回って、そのまま唇が重なった。
あ〜あ、結局、殿下を選んでしまった。ん?私が選ばれたのか?
学院に入学する前から一番避けるべき人だったはずなのに…恐らく互いにそうだった。
でもいいよね?多分、この国では反対する人の方がもう少ない気がする。
リリベルもザック殿下の背中に手を回した。
ふと目を開けると殿下の侍従さんが、後ろを向いて壁になりきろうとされていたが、背中が「まだですか殿下?」と言っていたので我に返って慌てて殿下から離れた。
ヤバーい!
両想いになった途端、距離感がバグった!
ザック殿下が仰った“ベッドを意識した”という意味が何だか少し分かってしまった気がする。
多分、次は私も意識してしまうだろう。絶対気を付けよう!!




