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「父上、東の神からは何かリリに伝言はなかったのですか?」
「あぁ、リリにも殿下にもガラスペンを常に持っているようにとは言っていたな」
「神様が作った物だし魔除けとかになるのかな?」
「ああ、それと青薔薇の栞と髪留めも南に行く際は携行しろと伝言を頼まれたが、リリが行く事はあるのか?」
「分かんないけど、何かまるで三種の神器みたいだね?」
「アイオット、墓参りの許可は?」
「大丈夫だよ。ちゃんと許可を取れているし、神官様にも連絡済みだ」
「そうか。じゃあ予定通り命日に行くぞ」
「伯父様、実はお願いがあるのだけど」
「何だ?」
「北の王子の形見の宝石は、まだ伯父様がお持ちなんでしょう?」
「…よく分かったなリリ」
「うん何となく。気付いたのは最近だけど。でもカテリーナ様のお母様のお墓に置いてあげたいの」
「でも王妃は…」
「ううん。多分、王太子は嘘を吐いている。王妃様はオリベル王女を産んだ後から、もう北の王子だけが好きだったはずだ。じゃないと爺様のことを妊娠して産めるはずがない」
「じゃあ王妃が出産時に身に付けた宝飾品は…?」
「国王への報復」
「自分の死を利用してか?」
「そう。それに皆に見せつけなといけなかった。自分は最後までこの国の王妃だったと。それは残された子供達の為でもあった。それにきっと王女達を愛していない訳ではなかった。でも北の王子の手前、カテリーナ様を可愛がれなかったし、オリベルお嬢を可愛がる事も立場的に難しかった。だから2人の王子が代わりに可愛がった。そして姉妹が仲良く暮らせるよう見守った」
「伯父様が希望するなら王家から王妃様の日記をもらってあげるよ?」
「できるのか?リリ」
「うん。多分」
「リリベル。私は本当なら侯爵家の後継はお前ほど相応しい者はいないと思っているよ」
「伯父様!」「私もそう思う」
「アイオット様まで!」
「お前は権力には興味はないが欲張り過ぎない程度に欲もある。それに損をすべき時も見極められる。人の面倒も見れるし何より家族を大事にしていている。私はアイオットの次はお前にしたいな」
「そんな事!絶対ナル兄ちゃんに言わないで下さい!絶対に絶対に聞かせないで!」
「確かにナルには聞かせられないな。ナルはちょっと野心が過ぎるんだよ。でもあの子は化ける子だ」
伯父もアイオット様も一体何て事を言い出すんだ!
後継はナル兄どころかアイオット様のご嫡男もいる。私にはきっと侯爵家は大き過ぎて身に余る。
◇◆◇◆
冬休みが終わって学院が始まった。
リリベルはまた令嬢に戻っている。なぜか気分が令嬢なのだ。
自分でも理由が分からない。
朝の送迎の時、リコピンは一瞬、目を見開いたが、さすが元騎士団長だ。直ぐに「お嬢…やはり護衛対象は令嬢の方が気合が入るな」と言って笑った。
学院の皆にはまた混乱させて申し訳ないが、そろそろどっちにも慣れて欲しい。あと1年あるし。多分、また令息の気分も来るはずだ。
馬車から降りて、皆に挨拶する。
「リリベルさーん、ご機嫌よー!」
また、うるさいのが来たがそれも懐かしい感じがするから不思議だ。リリベルが1組の教室に入ると一瞬シーンとなった。だが生徒会役員から順に、すぐ復活するのもいつもの事だ。
「おはよう。リリベル嬢」
ザック殿下!学院に来たんだ。そうか2学年は全うするのね。次は春って言ってたもんね。
「おはようございます。ザック殿下」
リリベルも普通に挨拶をして席に座る。今日は初日なので午前だけだ。明日から通常授業で来月には期末試験の準備に入る。
本当に2学年もあっという間だった。
生徒会の仕事もあとは卒業式くらいだ。卒業式の準備は試験の後からなので試験対策に専念できる。去年はダンスが大変だったな〜。
そうだ卒業式の送辞は生徒会長のお仕事じゃん!また送辞の例文を頂けないだろうか?マレシオン様!そんな都合良く現れないか。最終手段はフィジー嬢だな、なんて色々考えていると、あっという間に午前が終わった。
この後どうしようかと考えているとリリアン様に生徒会室のチューリップを見て欲しいと頼まれた。
そう言えば花束にしてマレシオン様に贈りたいんだっけ?
いつものリリアン様、シャーロット嬢と一緒に生徒会室に行くと球根から芽が出た植木鉢やプランターが並んでいた。午後の日の当たる場所に移して水をあげる。
「順調そうですね。あとは卒業式にちゃんと咲くように調整していきましょう」
と言うとリリアン様はホッとされていた。
生徒会室を出ようとするとアイオーン様がリリベルを呼びに来た。
「あのっ姉の事で相談があるんです」
アイリーン様の事で?何だろうか?リリアン様とシャーロット嬢に別れを告げてアイオーン様について行く。
アイオーン様が案内した場所はザック殿下のサロンだった。
「もしかして?」と思ってアイオーン様を見るとアイオーン様が
「済みませんリリベル嬢…話があるのは私じゃなくて…」
と申し訳なさそうにしている。やっぱりか!
「分かりました。私に話があるのは殿下ですね?」
と言って扉をノックする。
侍従さんが開けて下さって中に入るとザック殿下が部屋の奥にいらっしゃった。




