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「リリベル、ただいま!第三王子はどうなっている?」
「伯父様お帰りなさい!お一人で帰国なの?」
「父上、お帰りなさい。第三王子はまだ縁談を保留にしているよ」
「そうか。エリオットは何て?」
「伯父様、とりあえず居間に行きましょう?お疲れではないの?」
「ああそうだな、リリベル。つい気が早ってしまった」
伯父がカテリーナ様のお墓参りのために帰国してきた。こちらの状況は子爵領から戻って直ぐに出した手紙だけだが、さすが伯父だ。すでに情報を色々得ているんだろう。
伯父は居間でお茶を一杯飲んでから。フーッと息を吐いた。
「火山の国は呪いや呪いも盛んだ。第三王子は影響はないか?」
「全部マリィの防御壁に守られているみたいだよ」
「つまり火山の国からの良からぬ呪いは全部、マリィの防御壁で防がれているという事だな?」
「そう。でももう流石に止んでるって言ってた。これ以上はザック殿下が南に行かなくなる恐れもあるし、南の国からの心象も地に落ちてるからかも」
「でも油断するなと言っておかないとな」
「火山の国は呪術が盛んだなんて、そんな情報も伯父様に入るの?」
「それは東の国の図書館で読んだ」
さすが知恵の国だ。ちゃんとそういう本もあるんだな。私も読んでおきたかったなと思ったら「最新ではないがな」と伯父に本を2冊渡された。
さすが伯父様!
『カレー食べ歩き!火山の国』と『スパイス天国!火山の国』
伯父に渡された本はなんかジャンルが思っていたのと違う…。
「この本の中にスパイスは呪術に使うと説明がある。それに食べ歩きのマップを見てみろ」
カレー屋の場所が載った見開きマップの至る所に占いの館と呪術の店が載っている。
ガイドにも「カレー散策の後は、評判の占い屋に行こう!」と書いてある。しかも「お土産には呪術屋のアクセサリーを買おう!」って書いてあった。
食べ歩き本、侮れない。
それに王宮の歩き方まで載ってる!なんならこの時間はお散歩中の王族に会えるかも!とか…。
リリベルは2冊とも読破する事にした。
ザック殿下にはフラれてしまったのかもしれない。それにあの場では言えない本音もあったのかもしれない。私はもう殿下には必要ないかもしれないけど、出来る事があれば手伝ってあげたい。
それが側近として殿下への最後の花向けだ。
殿下は2学年で中退の恐れもあるって王太子妃様も仰ってたしな。
◇◆◇◆
リリベル嬢にいきなり寝室に連れ込まれ、俺はベッドを見て、つい彼女を意識してしまった。
困ってうずくまっていたら、いつの間にか彼女は居なくなっていた。俺がうずくまっていたのは、ほんの数分だったはずなのに!
侍従も護衛も「もうリリベル嬢はお帰りなりました」と言われて、俺は自分がやらかしたんだと気付いた。
何もしていないのにやらかした。俺って何てヘタレなんだろう!?
「どうしたんだ!アイザック酷い顔だ」
兄も俺のせいで十分やつれたのに、また俺の心配だ。
やはり俺はまだまだ人としても未熟者だ。
「ライオット卿、俺を殴って欲しい」
「弱っている人は殴れません、殿下」
「でも俺は君の大事な従姉妹を多分…傷付けた」
「ではお覚悟を」「ライオット!」兄が驚く。
本当、子爵家の兄妹に関してのライオット卿はブレないし容赦がない。
でも今はそれが有難い。
俺は気合を入れ、ライオット卿の拳を受け入れて…恐らく一発食らった後の記憶が無い。
目が覚めたら自分の部屋で、朝になっていた。だが起きると確実に腹が痛んだ。やっぱり伊達に近衛の隊長じゃなかった…。




