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「殿下、殿下、ザック殿下!」
「リリベル嬢!窓を叩くな!そして窓から来るな!危ないだろう!」
「え?大丈夫。ほらっ」
アイザックが窓の下を覗くとアイザックの部屋の窓に梯子が架けられていて、下で騎士達が梯子を押さえている。
いつの間に!ってか城の警備の騎士まで味方にしたのか!
アイザックは脱力して諦めた。「入れよ」
リリベルとリコピンは殿下の部屋の応接室に入れてもらう。
「もう、次からはちゃんとドアから来い」
「入れてくれるの?」
「…その前に部屋を変えるか」
「無駄だよ殿下。お嬢には魔法で分かるぞ」
「騎士団長か…自分で提案しといて驚くわ」
「もしかしてリコピンは殿下が斡旋してくれたの?」
「俺は騎士団長が、間もなく退任すると聞いたから、ちょっと話を振ったくらいだ。あとは侯爵家だろ?」
「ハハハッ殿下のお陰で毎日楽しいわ。あぁだがホント体力要るな。気力も」
「だから言っただろリリベル嬢の護衛は今のところ近衛隊長のライオット卿くらいしか務まらないって」
「ちょっと待て!私の護衛はどっかの長しか務まらないってどういう事!?」
「君に負けないくらい体力があって、気力があって、影響力もないと、ただただ君に巻き込まれて終わるだろ?それに君の言いなりにならない人は少ないし、君を諌められる人はもっと少ない」
「それは…ごめんなさい」
「分かったならあまり騎士団長に迷惑かけるなよ」
「あ、殿下、俺は今はリコピンだからな」
「…こういうバイタリティも、君の護衛騎士には必要だな」
「へぇお嬢、めっちゃ殿下に理解されてんな」
「リコピン、褒められてないからね?遠回しにリコピンは変なヤツって言われてるから」
「それよりリリベル嬢、今日は何の用だ?」
「あっそうそう!私、前回、殿下の気持ちも聞くつもりで自分だけ言って帰って来ちゃったなと思って。だから今日は殿下の本音をちゃんと聞こうと思ってさ」
「‥‥‥今?」「そうだけど、駄目なの?」
殿下が周囲を見渡す。
今、この部屋にはリコピンや殿下の侍従も護衛騎士もいる。
「リコピン少し出ててよ」
「お嬢!俺を除け者にするのか?」
殿下の本音をなぜあなたと分かち合わねばならんのか!
「空気読めないオジサンは嫌われますよ、リコピン」
「でもこういう時は男女2人きりにしては不味いのだろう?」
「そうだよねぇ。リコピンも公爵令息だったから、きっと大勢の前で夫人との仲を深めたんだろうね〜」
「つっ妻はいつだって奥手の俺を…って!何言わせるんだ!分かった。5分だぞ!」
「10分」「駄目だ!10分は…あんな事もこんな事もできてしまう!」
やったんだな…。
「じゃあいいよもう。リコピンは壁にでもなってて」
「え?俺無視されるの?居ないものとされるの?」
うっさいな〜。
「殿下、行こうっ」
リリベルは殿下を引っ張って隣の部屋に移動してさっさと内鍵を閉める。最初からこうしておけばよかったのだと思っていると、ザック殿下の顔がみるみる赤くなる。
リコピン効果?いやいやいや!
「殿下どうしたの?」
「いや、何でもない。でも直ぐ出るからな!」
「分かった!では殿下のお気持ちどうぞ!」
「‥‥‥」「殿下…?」
「やっぱりゴメン…」殿下が手で顔を覆って床に座り込む。
確かにここには椅子は無いけど、せめてベッドに座ればいいのに…でもゴメンって、それって私は失恋したの?
殿下はうずくまって動かない。
「殿下、困らせてごめんね」
私はそう呟いて静かに部屋を出てきた。
「リコピ〜ン、帰るよ」「お嬢!まだ5分も経ってないぞ」
「うん。もう大丈夫」
私は涙が出ないように一生懸命、瞬きを最小限にして帰った。




