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「王太子妃様、返事はいつまでにする事になっているのですか?」
「第三王子殿下が春休みに再度南に行くまで保留になっているけど、恐らくあっちはもう第三王子殿下を迎えるつもりでいると思うわ。そうしたら学院を中退する事になるかもしれないわね。希望をすれば火山の国で教師をつけると言われたそうなの」
「王家の意向は?」
「この国としては別に火山の国に行ってもらっても構わないわ。第三王子殿下は今のところ次の王太子の保険ではあるけど、立太子の可能性としては低いから王配として他国に望まれる事は確かに悪くない条件なの。でも王妃様は反対なさっておいでだわ。でも表向き反対されておいでなのは王妃様だけよ。しかも王子可愛さによる理由だから弱い」
「表向き?では裏では?」
「言わなくても分かるでしょ?別に王配に望まれても火山の国は遠過ぎて我が国には何のメリットも無いわ。だけど南の国は違う。第三王子殿下は南の国の為の生贄のようなものね。我が国が南の王太子妃を切れないとあっちは足元を見ている。特に王子が産まれたばかりでしょ?」
「分かりました」「リリベル嬢…」
「王太子妃様は、私にもう第三王子殿下には近寄るなとは仰らないのですね?」
「‥‥‥」
「と言う事は、この縁談を阻止する為に私を利用したいのでは?だからこうやって情報もくれる。それは王太子殿下や陛下、皆の総意でもある」
「陛下のお考えまでは分からないわ。でも私だって望まない人を犠牲にしたくはないわ。それに第三王子殿下が犠牲になれば今後、南の国は火山の国にも西の国に対しても恩を感じ、顔色を見ながら舵取りをしていく事になるでしょう?誇り高い龍の民が、それを背に腹はかえられないと開き直れるのか」
「陛下のお気持ちはもう確認済みです。陛下は私が火山の国にも南の国にも上手いことやってザック殿下の縁談を止めたなら、ご褒美にザック殿下を私に下さると仰いました」
「えっ?!えぇ〜っ!」
「まだ全くのノープランなんですけど、王太子妃様に一つ聞いてもいいですか?」
「なっ何かしら?」
「ザック殿下は私の事が好きだと思いますか?」
マレシアナはまさかの質問に言葉が出ず、思わずコクコクと頷いた。
「それは友達としてとかじゃないですよ?ちゃんと男女の好きですよ?」
それ以外に何があるのか?でもマレシアナは理解した。アイザック殿下はまだ自分の想いをリリベル嬢に伝える前だったのだ。伝える為に頑張っている途中だったんだ。そう思うとマレシアナは何だか切なくなってきた。
「アイザック殿下は間違いなく、あなたの事が女性として好きだと思うわ。それは王族を抜けてもいいと思う程に」
「良かった。本当は他人に聞くような事じゃないと思ったんだけど、これで安心して動ける。私、独りよがりのヤベー奴にならなくて済みそう」
「これからもあなたに情報は提供するわ。だから王太子殿下を救って頂戴」
「へっ?王太子?」
「そう。この件のせいでずっと塞ぎっぱなしなの。人前に出せないくらい」
「わあ…。ところでザック殿下はお部屋に居らっしゃるの?」
「そうね。今日は特にあなたが来ている事を知っているから、鉢合わせしないように部屋に閉じこもっているんじゃないかしら?」
「そう、どうもありがとうございます」
「行っても会えないと思うわよ」
「普通に行ったらね」
「えっ?どう言う事?」
「それじゃあ失礼します」
「ちょっと!リリベル嬢!?」




