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前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


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 目を回したリリベルが生徒会長の手を借りて温室を出ると、なんと王太子殿下が側近と護衛を連れて温室にやって来ていた。

 「今日はルト兄とライ兄はいないのだな」とリリベルはちょっとホッとする。あまりこんな所で知り合いに会いたくない。変な詮索をされそうだ。

 だが王太子殿下にも会いたくなかったなーと、生徒会長と一緒に頭を下げて礼を取る。どうか存在がバレませんように!


 「兄上、どうされたのですか?」とザック殿下が聞くと、

 「温室のマンゴーの実が大きく育ったと聞いてな。王女に食べさせたい」と言って礼を解くように手を挙げて下さる。

 庭師さんが「殿下、マンゴーの実はまだ青くて、もう少し熟れないと召し上がれません」と言うと、

 「ふーむ、そうか。王女に今日、食べれると言ってしまった。他に食べ頃の珍しい果物はないか?」

 「ヤシもパパイヤも来週ごろかと」と残念そうに庭師さんが仰る。その時ザック殿下の視線がリリベルに向く。

 「お前、植物を眠らせられるなら、その逆もできるだろ」と言ってきた。


 王太子殿下の目もリリベルに向く。せっかく存在を消していたのに殿下の奴、余計なことを!

 「ああ“緑色のベル”か!そう言えばザックと同級生だったな。ふーんマレシオンと仲が良いのか?」

 おっと!まだ手を借りたままだった。お互いサッと手を離す。

 

 そしてリリベル達は再び温室のマンゴーの木の前に移る。マンゴーの実の完熟を促すのか。自然の摂理に背くことはあまりしないけど、コッソリと爺様としたことはある。

 婆様に直ぐに食べさせたくて爺様はよくベリーやリンゴ、桃などの実を完熟させていた。


 マンゴーの木には熟すのに適した大きな実が3つなっている。王太子殿下が木を見上げながら「木ごと熟させるのか?」と聞いてきた。

 私は「いいえ」と首を振る。庭師さんが脚立に登って一番大きな実を取ってくれる。

 

 リリベルは初めて見て、触るマンゴーの実に心が歓喜する。わーこんな重さなんだ。スゴイ、スゴイ爺様スゴイ!

 感動で手放したくない!いや私の物ではないのだが。マンゴーの実を両手の平に乗せて一喜一憂しているリリベルを2人の殿下達が興味深そうに見ている。


 「末のベルは面白いな」王太子殿下の言葉に我に返り、リリベルは慌てて手の中のマンゴーに「甘くなれ甘くなれ」と魔法を流す。 真緑だったマンゴーの実に赤みが差してくる。手の中の実が少し柔らかくなったようで、王太子殿下に渡す。

 「これは見事だな!“緑色のベル”とは人を誑かすだけなのだと思っていたが」

 「何!?」今のは聞き捨てならないぞ!と思って王太子殿下を見ると、

 「残りの実は、君らで食べると良い」と言われ、リリベルの怒りが一瞬で吹き飛ぶ。

 殿下が「良かったな。お前の百面相が面白かったお陰だぞ」と仰った。

 なんか複雑。


 残りの2個の実も完熟させ氷魔法で冷やしてから、温室から出た所にあるベンチに座る。庭師さんがナイフを入れてキレイに賽の目に切ってくれる。

 美しいオレンジの果肉に果汁が光って美味しそうだ。まずは殿下が一口。殿下が声にならない叫びを上げ悶絶する。

 一瞬、毒入り?と緊張が走るが「美味過ぎる」の一言で安心する。

 少しずつだが庭師さんも一緒に皆で分けて食べた。確かに悶絶する美味しさだった。


 リリベルはあんなに王城に行きたくなかったのに、今日は来て良かったなと思いながら帰路についた。


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