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3日後、ザックさんは南の隣国に旅立って行った。しかしリリベルは悲嘆に暮れるどころではなかった。侯爵家の夫人達に茶会だの何だのに連れ回されたのだ。あっちこっちで聞かれる話題は第三王子殿下と公爵令息の事だ。
皆、何でそんなに情報早いの?やっぱり早くマリィ姉ちゃんの所に逃げようと思ったところで、追い討ちをかけるように王城からリリベル宛に手紙が来た。
内容は短く、第三王子側近招集って書いてあった。どういうことじゃい?!夏休み中にも招集されるなんて聞いてない!
ナル兄がリリベルの手紙を横で盗み見しながら、
「何お前、第三王子の側近なの?」て聞いてきた。
何の内容の手紙なのかワクワクしていた侯爵夫人達が色っぽくない内容にガックリ肩を落とす。
「それには色々ありまして…」とリリベルが言うと、兄ちゃんが
「招集3日後だね」って口の端を上げた。
夏休みに入る前、殿下の側近が、やっと決まったという話になった。普通、王族がいると学力テストの後のクラス決めの際に側近が決まるのだそうだ。
もちろん、それまでの交友関係も考慮されるが新しい人材の発掘という意味もあるらしい。
あと、どんなに普段仲が良くても“学力が足りないと殿下の側には近寄れないよ”という事なのだ。
いつもなら王族は大体、1組だ。1組には優秀な人材が集まるので側近候補も決めやすかったのだが、殿下の不在が問題だった。
しかし、これまでもそういうことは多々あった。だから1組はそんな時は29名でスタートしていたが、今回、殿下は南の隣国に出発する前に「試験を受けられないから1組以外に入る」と告げたそうだ。
お陰で2組、3組の人選が難航した。“殿下がいないなら1組に入るメリットが無い”と思われないように、決して情報が漏れないようにクラス決めが行われたのだそうだ。
そんな中でリリベルの解答は教師陣を悩ませたそうだ。重ね重ね申し訳ない。結局、殿下はお知り合いの全くいない3組を選ばれたそうだ。
しかしそれが悪い方に出た。何故なら王族と面識の無い貴族達がどうやって殿下と接したらいいのか分からなかったのだ。反対に令嬢達は積極的だった。
それを庇えない令息達のせいで殿下は令嬢達から逃げる毎日だった。
殿下もようやく側近の意味を理解した。だから今更側近を選抜したわけだが、1組は生徒会のメンバーが側近に選ばれた。2組も高位貴族の令息が選ばれた。
しかしなぜか3組の側近はリリベルだったのだ。しかもオマケでシャーロットも。
もちろん合意するわけがない。「絶対に嫌だ!」と言い張ったのだが、リリベルは殿下の令嬢避けに最も適していると言われたのだ。
「そんなの冗談じゃない!」って反発したら生徒会長に、
「あなたにとってもザック様は最強の令息避けになるはずですよ」と言われてしまった。つまり持ちつ持たれつと言うことだ。
殿下をそんな風に扱ってもいいのだろうか?とご本人に聞いてみたら、
「今更?」と言われてしまった。それに、なんと、
「次回の南の隣国視察に側近は同行できるぞ」と言われたのだ。
「それは…行きたい」
しかし、どうしてこうなったのだろう?
普通は子爵令嬢如きが身の程知らずと言われるところではないのか?なのに殿下も生徒会も公認って!?
シャーロットが「リリベルさん、早速、生徒会も味方に付けましたね?これから側近も含め逆ハーしちゃいますか?」
なんてまた意味不明なこと言うし。