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帰国の日になり、リリベル達は王族の皆様の見送りを受けている。
「姉上、お身体大事に。無事に母子共に健康で新年を迎えられるよう祈っております」
「アイザック、あなたも元気で。赤ちゃんにも、ぜひ会いに来てね」
「ビーバーちゃん、私の事を忘れないでね。いつでもこの国に戻って来ていいからね」
「王女殿下ありがとうございます。王女殿下と過ごすのは、とても楽しかったです」
「リリ、家族に宜しく伝えてね」
「ララ姉ちゃんも身体大事に」
別れを済ませた後、馬車に乗り込む。
第二王子殿下とライオット兄は騎馬だが6人乗りの馬車はザック殿下、フィリップ様、ガブリエラ様、エリオット様にリリベルだ。行きよりも気を遣わない環境にリリベルはホッとする。
あれからマレシオン様とは気まずくなってしまって全く話せていない。
やっぱり彼と、どうこうなるのは絶対無理だとリリベルは思った。
もし彼が、それこそ「公爵家を出る!」と言ってきたら、どう責任取るんだ!って後々思ったのだ。
帰りの馬車の席順は揉めた。
揉めたと言うより一人で騒いでいたのはライ兄だったが。
「絶対、殿下の隣に座らせるな!」とエリオット様に言っていた。
「気にする方がおかしい気もするけど」とリリベルが言うと
「お前は少しは気にしろ!」と怒られた。
本当、今更だ。伯爵家に行った時も、東に行った時も、何なら子爵家に帰った時だってザック殿下の隣に座ったし。
まあ、だからって率先して隣に座りたい訳でもない。そんなの変態だろ。いや違うそれは殿下に失礼だ。殿下のファンか?それも違うか。
リリベルが色々と考え事をしていると
「リリ、さっきから無口だが何考えているんだ?」
とエリオット様に聞かれた。
あ〜以前なら、これを聞いてくるのもザック殿下だったなと思う。
「えと、大した事じゃないですよ。行きよりも気楽なメンバーで助かるなって。もうマレシオン様とか…ちょっとキツイです」
正直に言い過ぎただろうか…?
「ああ。彼はリリに気があるのがバレバレだったからな」
「えー!そんなにですか?」
「リリは気付かないのに、無意識に意識して避けてたって事か」
「器用過ぎるわね」
「仕方ないだろう。モテる女は辛いよな。リリ?」
「外務大臣補佐官が言うと何かイヤミだな」
「あー確かに」「同意」
「え〜何だよ皆!僕、学院生の時に、先輩二人をくっつけようと頑張ったのにな」
「そう言えば、この3人学年違いで同時期に学院に通ってた人達だ!」
「そう言えばそうか。私が最終学年の時の1学年の主席が補佐官殿か」
「そうそう。僕が入学した時の主席で生徒会長が従姉妹殿」
「まあ!リリベル嬢は今の生徒会長ね!すごい偶然だわ。皆、親戚だし」
その話はこの場では、ちとヤバい!
「ちょっと「どうせ俺は主席でも生徒会長でもないよ」
とザック殿下が一言。
あー遅かった…。
熟練侍従のフィリップ様まで見逃してしまったか。
皆、シーンとなる。
「殿下!ザック殿下!気にしないで。私と殿下は僅差だったのよ!」
リリベルは隣に座っていたフィリップ様を押し退けて、ザック殿下とガブリエラ様の間に座って殿下を慰める。
「リリベル、お前、殿下のお守りだったか?」
「そうだよ!令嬢避けでお守りの側近なの」
「何だよお守りって!」
「お守りじゃないの!だって1学年の頃から殿下の面倒にたくさん付き合ってきたじゃない!ね?フィリップ様」
「フィリップ!そうなのか?」
「お守りと言いますか…どちらかと言うとコンビ?」
「え!?殿下と同類ってこと?」
帰りの馬車は気の置けないメンバーで、和気あいあいと順調に進んで行った。
「なあ、リリ寝ちゃったのか?」
「そう。アイザック殿下に寄りかかってるの。何度もこっちに持ってきてるのに」
結局、リリベルは殿下とガブリエラの間に強引に座って、そのまま眠ってしまった。
「いいよ。気にするな。毎度の事だし」
「え?殿下を枕にするのが毎度の事なのですか?」
「本当にそういうところは末っ子気質だな。リリは小さい頃から人見知りもしなかったし、人に懐くのも、世話を焼くのも焼かれるのも普通にやるんだ。兄が見たら激怒するから、カーテンは開けないで下さい。殿下」
「分かったよ。でも補佐官は気にしないのか?君にとっても年頃の大事な従姉妹だろ?」
「母が言うには大人は干渉せずに刺激を与えろ!だそうですよ」
「何だそれ?」
「さあ?母は劇団の運営者で総監督ですから、現実も演出するのが好きなんじゃないですかね」
「それは大変だったな」
「いえ、僕達3人兄弟には全く関与してきませんでしたから。母もお気に入りは5人兄妹なんですよ」
眠っているリリベル以外の全員が深く溜息を吐いた。




