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誤字、脱字報告ありがとうございます。

22話が短かったので、もう1話投稿します。

 待ちに待った夏休みに入った。やっと学院から解放された。最初はどうやって過ごすか考えていたけど今は解放されただけで嬉しい。

 侯爵家の広いベッドでゴロゴロしている。そこに兄がやって来た。

 「いやーまさかと思ったけど、お前、持ってるな。高位貴族を呼び寄せる何かがあるんじゃないか?」

 「ナル兄!何シャーロットみたいな事言ってんの!?本当に止めて欲しい」

 「何?シャーロットって?」

 「すごく変わった子爵令嬢なの。私のこと、この世界のヒロインだとか言うの」

 「ふーん」

 「で、第三王子殿下はどうなの?」

 「わっ侯爵夫人!何で私の部屋にいるの?」

 「公爵令息もイケメンなんでしょ?」

 「わー!伯母様まで何でー」

 「伯父様も居るよ」

 「もーわけ分からん」リリベルはガックリ膝をつく。

 リリベルの部屋に集合する意味が分からない。気を取り直して侯爵家のリビングに移動する。やっと学院から解放されたばかりなのに、また疲れるところだった。


 「で、伯父様達は何でここにいるんですか?」

 「ヒドイな。リリベル。ここ伯父さんのお家だよ」

 「知ってますけど、ご用件は?」

 「いやー伯父さんも引退したとはいえ、まだ色々あるんだよ。そんな事より、ザック君!」

 「リリベルお嬢様、例の物、試作してみました。あとこれお祖父様から」

 リリベルの侍従、ザックさんが子爵領から持って来てくれたのは爺様の愛情たっぷりの野菜の玉手箱だった。春野菜の新玉ねぎ、新じゃがいも、春キャベツ、そしてこれが婆様にしか食べさせない爺様スペシャル白アスパラだ!リリベルも栽培を手伝うようになってから食べる事を許された代物だ。

 爺様の愛が嬉し過ぎる!!と悶えているところに、ザックさんが、

 「そしてお嬢様が仰っていたものなのですが…米酒はなかなか難しくて」とザックさんが出してきた試作品は白く濁った液体だった。

 「ザックさん、ありがとう。これは仕方ないわ。作り方を聞いただけでできる物だったら苦労しないわ」

 「お嬢様…」

 「ザックさん、氷魔法でここまでお野菜持って来るの大変だったでしょ?子爵領から着いたばかりなんでしょう?ゆっくり休んで、またお話し聞かせて」

 ザックさんはとても良い人だ。リリベルが12歳の頃から世話を焼いてくれる人で、お爺様にもとっても優しい。

 うちは貧乏で使用人も少ないから専用の使用人が付くことがなかったけど、なぜかリリベルにはザックさんが付いてくれている。リリベルが子爵家に最後に残った子供だからだろうか?と勝手に考えている。

 「ではお嬢様、また後で」とザックさんが下がる。


 リリベルが、この野菜を使って今日の夕飯は何を作ってもらおうか考えていると、

 「ザックさんは随分長くリリベルちゃんのお世話をして下さっているのねぇ」と伯母様が仰る。

 まだ3年だが長いのか?とリリベルが思っていると、

 「まだ3年じゃあないか。彼が好きでやっているのだからいいんじゃないか?」と伯父様が仰った。

 

 この話はここで終わったが、夕飯の後、ザックさんが、

 「お嬢様、私は南の隣国に米酒製造の修行に行ってこようかと思っております」と言うのだ。

 リリベルが驚いていると、

 「前侯爵様が米酒の酒蔵と以前から親交があって、ご紹介下さったのです」

 「ええっ!?ザックさん、私そこまで米酒にこだわった訳では…それに国を離れるなんて」とリリベルが涙目で言うと、

 「お嬢様が学院を卒業される頃までには戻って来ますから」と言う。

 リリベルが「大丈夫なのか?」という気持ちを込めて伯父を見ると、伯父は「信頼できる場所だから安心しなさい」と仰った。

 リリベルにとってザックさんは優しくて面倒見の良い、実の兄よりも兄のような存在だったから、学院に在学中の間だけだとしても居なくなるのは寂しい。

 

 リリベルはナル兄に引き剥がされるまでザックさんに縋って泣いた。


いつもご覧頂きありがとうございます。

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