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 「お前、ワザとドレスの事を言って殿下やミカエルを煽っただろう?」

 「だって面白いじゃない。舞台演出みたいなものよ。大人は余計な詮索はしない代わりに、すこし刺激を与えてあげるの」

 ベルオットは妻の所業に溜息を吐く。


 「しかしベルトラント卿が、まだマリィ一筋なのが分かって良かったがな」

 「そうでしょう!あれだけ人気なのに余所見は一切しないとは聞いていたけど、リリベルちゃんに会ったら、どうなるだろう?ってちょっと心配だったの」

 「ミカエルはフラれたかもなぁ」

 「可哀想だけど、リリベルちゃんには、ちょっと役不足ではないかしら?」

 「だがリリベルが子爵領に引っ込むなら彼くらいが、ちょうど良くないか?」

 「そうだけど、もったいないわねぇ」

 「何がもったいないだ」


 「南への親善旅行も楽しみねぇ」

 「お前も何か起こると思っているのか?」

 「ねぇ!あなた!私達も南に行かない?ララちゃんの事業も手伝ってあげたいの」

 「駄目だ。ナルもまだ戻らないから、夏ぐらい領地に戻ってアイオットと交代してくる」

 「はいはい。私も行きまーす。良かったぁ劇団の休暇中で。ナル君、たくさんご両親達に甘えられるといいわねぇ」



 学院が夏休みに入る前の事、リリベルは生徒会室の資料室にマリアンヌ嬢を呼んで、ずっと気になっていた事を聞いてみた。

 

 「マリアンヌ嬢はザック殿下の婚約者になろうとされていたのですよね?今もですか?」

 マリアンヌ嬢は一瞬躊躇ったがポツポツと話し出す。


 「小さい頃から、ずっと私は父に「お前は第三王子殿下の妃になるのだ」と言われて育ちました。私と双子の弟は公爵家の領地で育ちましたので、世間知らずで父の言う事が全てでした」

 「もしかして弟君には公爵の後継になれと?」

 「そうです。ですが私達が13歳で王都に移り住んだ時、弟はマレシオン兄様を見て、直ぐに後継を諦めて騎士学校に行きました」


 「だから弟君は学院にいらっしゃらないのですね」

 「父は相当お怒りでしたが王太子妃になった従姉妹の後押しがありまして、何も文句が言えませんでした」

 「それで、あなたにお父上の期待が全ていったのですか?」


 「私も少し憧れていたんです。殿下に。それに警戒すべき子爵家の妖精が、再び殿下の側にいると聞いて、殿下をお守りしなければと」

 「私、自分で望んで殿下の側にいる訳ではなかったんですけど」

 「はい。色々と経緯は伺いました。でも、だからリリベル嬢が殿下をお好きでないのなら、私が殿下に選ばれたいと最初は思ったんです」

 

 「最初は?今は気が変られたのですか?」

 「リリベル嬢が最初、男装されていたお姿も素敵だったのですが、身分に関係なく殿下に対等に扱われておられて、私、そっちの方に憧れが変わったんです!つまりリリベル嬢が私の理想と言うか目標そのものなんです!!」

 「ええっ?!」


 「ああ〜言えて良かった!ずっとファンになりましたってお伝えしたかったのですが、あんな事があったので。もう嫌われて近付く事さえ出来ないと諦めていたのです。それなのに、また普通に接して下さって本当に感謝しております!会長」

 「はっはい」

 「どうもありがとうございます。会長達が南に行かれている間の生徒会は、どうぞお任せください!フィジーさんもしっかりフォローしておきますから」

 「はいっ宜しくお願いします」

 マリアンヌ嬢は、とても晴れやかな顔で嬉しそうに資料室を出て行った。


 『また主人公の魅力が殺人鬼です』

 やはり聞いていたかシャーロットよ。しかし、

 「シャーロット嬢、せっかく覚えた南の言語表現が間違ってますよ」

 「えっ?『魅力が鬼に金棒』でしたっけ?」

 「それも違うかと。ちゃんと覚えてから使って下さい」


 何か“鬼”というワードが気に入ったのだろうか?

 「またヒロインの魅力の虜になった!という事ですよね?だったら『また主人公の魅力の犠牲者ができた!』ですよ」

 「おお」 “おお”じゃねーし。


 あなたもいたのですねアイオーン様。

 “犠牲者ができた”じゃなく“出た”ですから!

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