表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世も異世界転移もありません!ただの子爵令嬢です!多分?  作者: 朱井笑美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/280

178

 次の日、司書の伯父は学院や学園などの教育機関、孤児院などに絵本を寄贈して回ると言って朝から出かけて行った。

 伯父には宰相補佐官のガブリエラ様と教育省の大臣らが同行されるとの事だった。


 そして父はルト兄の元へ、孫に会いに行くと言うのでリリベルも一緒に行くことになった。それは父がまた、サオリで行くと言い出したからだけど、確かにサオリは適度にお出掛けすると意外と大人しかった。

 しかしリリベルは毎回、野菜と果物のカゴを抱え、草食なのに、まるで猛獣の調教師にでもなったような気分だった。

 

 そもそも何で父が急に王都に来たのか?という理由はサオリが居たからなのか?サオリだと1日半で来れるからなのか?何かよく分からないが、父が言うには伯父が「折角、隣国の4番目が里帰りするのだからお前も来い!今回が兄弟5人で会えるきっと最後のチャンスだろうから来てくれ」と頼んできたからなのだそうだ。


 だが兄の馬車でも往復10日は結構遠い。こっちでの滞在も合わせると2週間近くだ。そんなに子爵領を空けたくない。やはり無理だなと思った矢先、屋敷の玄関を開けたらサオリが扉の前に居たそうだ。


 「えっ!それでよくサオリに乗ろうって思ったのね?お父様」

 「多分、爺様かお前に会いたかったんだろうと思ったんだよ。だからサオリに聞いたんだ。リリに会いたいか?って」

 「それで来たのか?お前!」

 伯父も驚くより本気で呆れていた。


 「いや〜物凄いスピードで走るんだよ。何度振り落とされると思ったか。だけどさ、ちょうど良い体勢を見付けたんだ!だからもう大丈夫だ!」

 そういう問題なのか?

 

 「さすがにサオリと宿には泊まれないから野宿だけど、一泊だけだし、数時間休憩したら出発できるから1日半!ハハハッ」

 ドヤ顔で威張るなー!


 ルト兄は、今、アイリーン様のご実家の侯爵家に居る。アイリーン様がご出産されて、そのまま赤ちゃんの面倒を侯爵家で見てもらう為に王城の職員用の住居を出たそうだ。

 アイリーン様は王太子妃様の侍女に戻られるそうだが、2人目も欲しいから、しばらく侯爵家にいるのだそうだ。


 侯爵家はアイリーン様の弟のアイオーン様が継がれる予定で、実は彼は学院の1学年で生徒会にいる侯爵令息の一人だったりする。ご挨拶された時はビックリした。

 「お気付きではないと思いますが」と最初に言われたが、その通り。

 言ってもらえなかったら全く気付かなかったよ。



 サオリに父と二人、相乗りで侯爵家に向かう。

 サオリはご機嫌で道を闊歩している。彼女は街中は普通に走ることもできるのだ。しかし白馬に父とリリベルは多分目立つだろうと、二人で暗いグレーのフード付きマントを被り、怪しい二人組で出発した。


 侯爵家に着いて先に父を降ろして家主への挨拶に行かせる。リリベルはサオリを厩舎に連れて行くが、事前にサオリの説明がされていたようで厩舎を空けて待っていてくれていた。

 しかも厩舎を案内してくれたのは、生徒会の後輩のアイオーン様だった。

 わざわざ侯爵令息に申し訳ないと思っていたら「僕も北の白馬を見てみたかったんです」と言って下さった。

 遠巻きで申し訳ないが、存分にサオリを見てやって下さい。


 リリベルが侯爵邸の玄関からロビーに入ると、父が侯爵夫人に熱烈歓迎されているところだった。

 侯爵夫人は確かお母上が王女様で、とても高貴なお方だったはず。アイリーン様がリリベルに気付いて「リリベルちゃ〜ん、ようこそ!」と声を掛けて下さる。


 「わぁ。リリベルちゃんカワイイ。ルト様に聞いてたけど少年姿も、とても良い」とリリベルを抱き締めてくる。

 侯爵夫人も「まあ!まあまあ!」と驚いてらっしゃったが「あの時の侯爵家の天使様だわ」と仰り、やはり昔の父とリリベルを重ねてくる。

 ちなみに天使様とは、北、西、東の神様の父神が天に住んでいるとされ、その御使いが天使様だ。

 そのお姿は神殿の絵画にしかないが、金髪に翼の生えた人間の絵が多い。


 しかし父よ、そんな恐ろしい二つ名があったのか?中身はザック殿下とちっとも変わらないのにと思っていると「母上、姉上、まだ玄関先ですよ。お客様を居間へお通しして」と弟君が執事に指示を出している。

 さすが生徒会に選ばれる優秀者だ。頼れる後輩がいるのは嬉しい。


 居間に入るとルト兄が、もうしっかり腰も据わり幼児らしくなった姪っ子を抱っこして来た。

 「わー可愛い!」姪っ子の瞳はブルーで、濃紺色の髪の色もアイリーン様にそっくりだった。恐らくアイリーン様の幼少期の頃、そのままなんだろうなと思えるミニチュア版で、将来、彼女のようになるのかと思うとフッと笑えてしまった。


 「そう言えば侯爵様は?」と父が問うと「恐らく、また公爵家にでも行っているのではないですか?」と令息が答えてきた。

 「あの人は実家が大好きなんですの」と侯爵夫人がオホホホと笑う。

 「誰も紫の瞳を受け継がなかったから居場所が無いんですよ、きっと」令息が辛辣なことを言う。


 そう言えばアイリーン様のお父上は公爵様の弟君だったか。という事は「マリアンヌ嬢は令息の従姉妹君でしたか」と言うと「そうですが侯爵家は公爵家の傘下ではありません。マリアンヌ嬢の事情にも関与していませんのでご安心ください」と仰った。

 やっぱり彼女は何か事情があるんですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ