18
「嬢ちゃん、最近、浮かない顔をしているな、何かあったのかい?」
BENTOO屋の店主がリリベルに声を掛けてくる。
リリベルは殿下と共に生徒会に放り込まれ、夏休みまでに仕事を覚えろと放課後は生徒会室に缶詰めにされている。
その様子を喜んでいるのはシャーロットだけだ。何なら、リリベルはまた高位貴族のお姉様方に睨まれ始めた。
幸い、同室のリリアン様も生徒会に参加されていて、お部屋でも優しく教えて下さる。本当に良い人だ。
今は、またこれから生徒会室に行く前に腹ごしらえのオヤツを買いに来たのだ。リリベルは店主の質問に、
「最近ちょっと忙しくて」と答え「店主さん、お米フェアは終わったんですか?」と聞いた。
「ああ、次にまたお米が入ったら始めるよ。代わりに“ザ・ルウドン”というのを始めたんだよ。これはウドンをスープに付けながら食べるのさ」
“ザ・ルウドン”?切るとこ何か間違えてない?とも思ったが、新たなメニューに心が踊った。これは汁がある上に片手で簡単に食べれないので書類仕事には向かない。
残念に思いながら無難に大きなカツの挟まったサンドイッチを手に取る。ザ・ルウドンは次回だ。秋に入るまであるそうなので急がなくてもいい。
しかしリリベルはふと気付いて聞いてみる。
「店主さん、このお店の読み方は“ベントゥー”で合っているのですか?」
「ああ皆、そう読んでいるのは知っているが、本当は“べんとう”だ。南の隣国に料理人として勉強に行った時に、あちらには、お持ち帰り専用の“べんとう屋”というのが普通に沢山あってな。その名前を取ってこちらの文字にしたらそうなったんだ」
なるほど、南の隣国すごく気になるな。
「いつか行ってみたい」とリリベルはサンドイッチを手に持って生徒会室に急ぐ。
途中で気付いた。このサンドイッチ、“マグロチキンカツ”って書いてある。
マグロなのか?チキンなのか?それとも南にはマグロチキンという生き物がいるのか?
また店主に聞いてみないといけないなーと思うのだった。