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 学院のお昼時。「会長、お茶をどうぞ」

 「いつもありがとうございます。マリアンヌ嬢」「いいえ」

 最近、すっかりマリアンヌ嬢がお茶を淹れてくれるのが当たり前になってしまった。それに今でも彼女は生徒会室の植物に水をあげてくれている


 お陰でイチゴがたくさん実って、皆でイチゴ狩りが出来てしまった。今はメロンがスクスク成長中だ。夏休み前にちょうど食べ頃だろう。ああいかん!今は絵本販売の件だ。急いで頭を切り替える。


 「そうか100冊くらいなら学院でも販売できるのか。なら我々で放課後に1日だけ販売して売れ残れば、そのまま売店に置いてもらえばいいか」

 「では私は学院長の許可を取りに行って来ます」

 「では私は売店の許可と場所の相談に行ってきます」

 「じゃあ私は学園内に告知する張り紙を準備します」「では〜」と皆で役割を振りながら絵本の学院内の販売準備が順調に決まっていく。


 「リリベル嬢、売上は何に使われるのですか?」

 「売上は一部、経費に充てられるのと、あとは神殿や西にある図書館に寄付されるそうです。今回、東からの絵本の輸入は、東の王家と私の伯父の親善事業で、ほぼボランティアなんです。あとマティアス氏が描いた絵本も今、作成中なんです。間に合えば販売できるかもしれません」


 「え?!それ絶対欲しい!」

 「私も!いくらで買えるんですか?」「何冊まで買えますか?」マティアス氏の描いた絵本だと言うと皆の目の色が変わった。そこまで彼の絵は人気なのだろうか?


 「リリベル嬢、彼の絵本は出さない方がいいだろう。学院内が混乱するぞ」ザック殿下がそう仰って皆、ガッカリする。生徒会で少し話を出しただけで、この食い付きだ。確かに学院内で販売したら親も出て来て大混乱になるだろう。

 リリベルはマティアス氏の絵本は知人を中心に配っていこうと決めた。

 

 放課後、皆が手分けして頑張ってくれたお陰で、本の販売は週明けに決まった。告知の張り紙を皆で学院内の掲示板に貼ってから帰宅する。


 伯父二人は午前中に神殿に行った後、午後から王城に行っているはずだが、まだ帰ってきていなかった。

 夕飯時にも食堂にいないなと思っていると、執事さんが「今日はお二人とも王城でディナーのお誘いを受けられたそうでお戻りは遅いそうです」と教えてくれた。

 伯父は神の司書だ。西で言うところの聖女と同じような立場だから、手厚く持てなされているのだろう。


 翌日の朝も伯父二人は忙しそうで、朝食時に挨拶をしたら直ぐに出掛けて行ってしまった。

 だがその日の夜、事件が起こった。起こしたのは私の父だけど…。


 「お嬢様、リリベルお嬢様!」夜中、侯爵家の夜間勤務のメイドに起こされた。

 「どうしたんですかぁ?」

 まだ半分、寝ている脳でメイドに尋ねる。

 「実は子爵様が!子爵様がお越しになりまして」

 「えぇ?どこの子爵様ですか?」

 まさか自分の父親の子爵様だとは思わないでしょう?あんなに出不精の人なんだから。でも廊下を人の走り回る音で騒がしい。


 リリベルは仕方なく寝巻きに上着を羽織って廊下に出て、屋敷の階段を降りる。

 2階のホールから玄関ホールを覗くと執事さんが「大旦那様は?リリベルお嬢様はまだか?」と大きな声で言っているので、急いで降りる。

 「どうされたんですか?」

 「ああリリベルお嬢様!お休みのところ申し訳ありません。子爵様がお見えなのですが」

 「子爵様ですか?」「はい。お父上の子爵様ですよ」

 

 「えぇ〜!!」

 リリベルが慌てて玄関の扉を開けて外に出ると、白馬の手綱を引いた父が

 「やあ、リリ!深夜に起こして悪いな」とあっけらかんと言った。

 

 「さっサオリだーっっ!!」

 リリベルの絶叫が玄関先だけでなく屋敷の中にまで響き渡った。

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