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「リリベルちゃん!3ヶ月ぶりだな。まだ少年のままか?あ〜やっぱりベルだぁ」
4番目の伯父もリリベルを抱き締めて頭に頬擦りしている。この行為は特定の人物に遺伝でもするのだろうか?
でも彼の場合は父を私に重ねている。
「伯父様、明日、大神殿にも行かれるでしょう?聖女のマリベルお姉様の方がお父様に似ていますよ。瞳も水色だし」
「おおそうか。それは楽しみだな」
マリィ姉ちゃん、後は任せた!
伯父はまず、大神殿に“東の神の司書”として絵本を寄贈した後、王城にも絵本を寄贈しに行く予定だそうだ。そして王都から近い大都市の神殿や招かれた貴族の屋敷にも赴いて一週間程で東に戻られると聞いた。
3番目の伯父は王都に屋敷をお持ちなので会いに行かれるそうだが、残念ながら父がいる子爵領に行けるほどの時間は無い。こんな時ぐらいお父様も王都に来れば良いのにと思う。
「伯父様、東の神様はあれからいかがお過ごしですか?」
「そうだ!君が王女殿下に金髪のカツラをプレゼントしたんだろう?姫君があれを被って毎日、神様と本を読んでいるよ。神様も嬉しそうだ」
「神様も金髪がお好きなんでしょうか?」
「あれは君の地毛で作ったんだろう?君の気配がするみたいだよ。正確には北の姉君のようだが。彼は君から姉君の気配も感じて懐かしかったみたいだよ」
「なら伯父様の事も?」
「そうだね。ほんの僅かな北の血だろうけどねぇ。ベルほど北の国出身のような姿をしていれば別なのだろうけどね。東の神様も驚くほどベルに似ているから、私も彼に会えるのが嬉しいよ。弟と思うには無礼過ぎるがね」
「リリベル、今、北から連絡が入ったのだが、あの北の白馬のサオリという馬が行方不明だそうだ」
伯父が居間に入って来て、まず一番にリリベルに伝えて来た。
「兄さん、サオリって南の探検家の奥方と同じ名前だな」
「ああ彼女の名前に由来しているらしい。北の国の陛下の馬なのだが、北に戻って直ぐに脱走したらしい」
「伯父様、それを私達に知らせて来たって事は」
「ああ多分、子爵領に向かったんじゃないかってあちらは思っているみたいだ」
北の陛下は、子爵領にはサオリ好みの馬が多いと言っていた。
それに滞在中、ずっと爺様が北の馬達に野菜をあげていた。まさかサオリは餌付けされたのか?
「伯父様、それってどうしたらいいんだろう?サオリを探して欲しいのかな?」
「ああ。あちらはサオリを好きにさせておいて欲しいと言ってきた。もし見つけても連絡不要だそうだが、人のいる場所で迷惑を掛けていたらヨロシク!だそうだ」それでいいのか!?
「へぇ。探検家は自由に国々を冒険したそうだが、彼の妻は自由に男を渡り歩いたそうだぞ。ある意味冒険家だな」
伯父様それって冒険家って言っていいの?
「伯父様、サオリは子爵領の馬とは違って純粋にスネイプニルだけの馬なの」
「そうかそんな貴重な馬を放し飼いにするんだな」
いや!国をまたいで放し飼いは無いだろ!
「それにしてもリリベルちゃん、北の国王の話は兄からも聞いたが、北の国にもスカウトされたそうだなぁ、モテモテじゃないか」
いや要らないモテ期なんですけど。
「家にも年頃の息子がいたらな〜」だから東にも行きませんって。
「お前に年頃の息子がいたとして、リリベルと結婚したら、王家を敵に回すぞ。第一王子はリリに求婚しているだろ?」
「そうなのか!」
「お前、知らなかったのか…?」
「あの時は司書に決まったばかりだから、伯爵様はいなかったでしょ!」
「あぁ…」伯父が“やらかした”という顔をした。
「じゃあリリベルちゃんは将来、我が国の王妃様だ!」
伯父が目をキラキラさせて言う。
絶対ありませんから!!