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 「リリベル嬢」

 馬車が走り出して直ぐ、ザック殿下が私を呼んだ。


 ちなみにナル兄ちゃんは、まだ野生馬に乗れていないので子爵領に残っている。ベルトラント様が野生馬に乗れると聞いて、悔しくて、かなり本気で頑張るようだ。ミカエル様には特に負けたくないと言っていた。


 ザック殿下に呼ばれて、私は殿下に視線を移す。

 「君が女神様に似ているという件なのだが…」

 伯父も殿下に注目する。

 「別荘に戻ってから、母や兄と話をしたんだ。それで女神様のお姿はご本人が表に出てらっしゃらないのだから、君が似ているという事も、このまま伏せておいた方がいいだろうという事になった」


 もしかして、ザック殿下がお二人を説得してくれたのだろうか?

 「リリベル嬢、その提案をしたのは兄なんだ。だから安心して欲しい。兄が今後、君に何かを強要する事は無いと思うよ。それもちゃんと確認しておいたから」

 リリベルはザック殿下の言葉に少し安心したが、でもまだ完全には信用できない。


 「兄も隠していた君の秘密が、この事だったと知って少し反省していたんだ。さすがに、これは誰にも…王族にすら話したくないだろうって。だけど東の王子からの求婚には合点がいっていた。だから、もし君が20(ハタチ)になっても彼と結婚したくない時は、王家が全面的に君を守る事を約束するって、君に伝えて欲しいと言われたんだ」

 王太子、そんな事言ったのか。その申し出は有難いけど、まだ信頼したらダメだ。何か裏があるかもしれないし。


 「随分と手の平を返してきた感じがするな、王太子殿下は」

 やはり伯父も私と同じ意見だ。

 「前侯爵がそう思うのは仕方がないと思うよ。だが兄だって女神の信者だ。だから、その女神の意に背くような事はしないよ。女神が聖女を通して、この国に与えて下さる恩恵を考えたら出来るはずがないんだ」


 「そうか東の王子との婚姻に反対する理由も、リリベルを国外に出したくないと判断したからじゃないのか?」

 「それは…きっとこの国の民なら全員が思う事なんじゃないかな。ただリリベル嬢が女神に似ている理由にもよるだろうな。恐らく北、東、西の三姉弟の神々は顔が似ている。元々、北の王族の血が入っている子爵家に、更に直近で北の王子とその娘のオリベル王女まで入ってしまったのだから、女神に顔が似てしまったのは偶然なんだと思うんだ。だが人によっては、そう考えないだろう?」


 「女神が顕現したとか、御使いだとか、申し子だとかの崇拝対象には十分なり得るな」

 「そうだ。それに何より、それを知った神殿がリリベル嬢を放ってはおけなくなるだろう。ただでさえ君は女神の双璧の一人、植物の癒し手なんだそうだよ。もう片方は東の神に似た君の姉上だ。全くの偶然だと言って良いのか」

 「リリが聖女の片割れだと?!」


 「ザック殿下、一つ間違ってる!確かに私は植物の育成を促す力が少しばかりあるけど、本当に凄いのは爺様だ。私の力は爺様の足元にも及ばない」

 「ああラント兄上も言っていた。植物の癒し手は力の差はあれど複数いるだろうって」「だったら!」

 「ああ。それでいいと思う。君もその内の一人って事で。自由でいたいだろ?」

 なんか解せん。

 でも今後も王家が黙ってくれてて、リリベルにも構って来ないなら、それで良いかと思う。


 それからザック殿下と私は学院の休み明けから一週間遅れで学院に復帰した。

 あっという間の1ヶ月だったけど、この後は東から4番目の伯父が来る。すでに国を出る準備が整ったらしい。

 伯父は子爵領から戻って直ぐに絵本の運搬の為に、また東に向けて屋敷を出て行った。


 それから数日後、辺境伯の手伝いもあって、スムーズに国境近くまで絵本が運搬されていると、陣頭指揮を取っている伯父から連絡が来た。

 「一週間で帰ってくるからな。準備しとけよ」と言って出て行ったが、あの年で凄いパワフルだな〜とリリベルは感心したのだった。

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