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 「リリベル嬢!なあっリリベル嬢!」

 「‥‥皆の者!何故かリリベル嬢が私のことを無視する!」


 今、子爵家の食堂で皆で夕食を頂いている。

 今日のメニューはマスの卵を絡めたクリームパスタだ。濃厚なクリームソースを絡めたフェットチーネにチーズとパンチェッタの塩加減が絶妙で、そしてプチっと弾ける虹色マスの卵、本当に最高だ。

 付け合わせは茹でザリガニとマスのミソ焼きバター掛け、どれも絶品なはずなのにリリベルの心は何度、陛下をグーで殴ったか…。

 陛下は心を読める。存分に読めば良い。ほら悟れ!


 「ゴメン。ゴメンてリリベル嬢」

 その詫びは、いつぞやのザック殿下だな。ザック殿下も学んだぞ!気持ちのこもらない詫びは相手の怒りを増長させるだけだと!


 「そこの!そこの赤い王子よ!俺はどうすればよい?」

 「自業自得では?」

 「妹よ…そなたの息子もツレないのぉ」

 「お兄様、マスの卵美味しいですわ。プチプチと口の中で弾けますの。残りを塩漬けにしてお土産にしてくれるそうですわ」

 「王太子?」

 「私は西の民ですから西の女神を怒らせるような事は致しかねます」

 似ているだけなのだが、王太子の中では、私は女神認定されちゃったの?


 他の皆も塩茹でのザリガニを真剣に剥いていて無口だ。

 子爵家の狭い食堂に高貴な方々が座って、庶民の食事に少し毛の生えたようなメニューを食べている光景も不思議だが。

 きっと伯父の別荘では、もっとスゴいご馳走が用意されていたはずだ。


 「そこの!水色の瞳の少年よ!リリベル嬢の機嫌を取ってくれたなら、そなたの悩みを解消してやるぞ。北の白馬を与えてやっても良い」

 ナル兄にまで魔の手を伸ばしたか!どうしてそこまで私の気を引きたいの?でもナル兄にそれは逆効果だぞ!ほら陛下、睨まれてる。


 「従兄弟殿!リリベル嬢はそなたを一番、慕っていそうだな」

 「お父様、お母様が落ちたわ」

 「ああ、婆様はいつも朝が早いからな。失礼するよ」

 爺様は婆様を抱えて消えた。多分、もう戻らないだろう。


 「子爵ぅ?君は!君は…東の神にこれまたソックリだ!いや、もう少し若ければ!だが」

 また余計な事を…この人、北の国では周囲からウザがられてないといいが。

 「俺は国王だぞ!」

 知ってる。でも今の5歳児みたいだった。あ、凹んだ!でも可哀想って思ってやんない。


 「クソッ!」  

 やっぱり演技か。


 「仕方ないな〜これは取っておきの秘密だが…」

 もう私の事はこれ以上、情報は要らないんで!

 「いや違うぞ!西の女神の話ではな〜い」

 「赤い王子、そなたの事だ。これは、そなたの父が北に来た時、教えてやったが、そなたは聞いてないだろうな」

 この話には皆、ちょっと陛下に注目する。


 「そなたの父も驚いておったから、恐らく西の王家の文献でも触れられておらんのだろうな。聞きたいだろう?」

 「いいです。帰ってから父に伺いますから」

 陛下!あなたに聞かなくてもいい事は、取っておきの秘密にはならないみたいですよ。

 「……」そうそう誰も知らない事しか秘密じゃないんですよ。

 陛下は先に、他に知ってる人をバラしましたから。


 あ、やけ食い始めた。ちゃんと味わってね。せっかくの子爵領の春の旬と珍味だ。それに心の中では会話してあげてるでしょう?

 「そうだな。そなたは心を読まれても平気なのだな」

 「ホントだ。何でだろ?」でも喋んなくてもいいから便利だ。

 「そんな事、初めて言われたな。そうか〜だから西の女神か」

 「?」


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