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 「リリベル嬢、試験問題が5年間使い回しなのは理由がある。高位貴族達は情報を持っている。学院の試験の内容がある程度予測できれば、余程じゃなければ高位貴族の子女達は皆、3組以上になる」

 「4組、5組のクラスに下位貴族が多いのは授業のプログラムも少し変えてあるからだ。学習機会が少なかった貴族の為に、座学も実習も3組以上より、みっちり組まれていて授業時間も授業回数も多いんだ」

 「そして伯爵以上の貴族は希望で4組に入れている」

オー マイ ガッデス!リリベルは学院長の説明に白目を剥きそうになる。


 「でも殿下はなぜ3組だったのですか?」

 「確かに王族は1組が既定路線だよな。側近の兼ね合いもあるし。でも私は姉に同行して外国に行っていたから学力試験も受けていない。それで1組に入るのは不公平感があるだろう?」と殿下が仰る。

 「1組はほぼ満点者で、事前の素行調査もされているから、優秀者で間違いがありません。それに何より30名は越えないという決まりもあります」と学院長が補足する。


 「最後の問題だけ異様におかしかったのは?」リリベルが疑問に思ってたことだ。最後の問題だけ家庭教師の先生からも聞いたことがなかった。

 ただ先生は「最後はお楽しみじゃ」と勿体ぶったのだ。


 「知っていたら、詳しく。知らないなら、それなりに推測して自身の言葉で書くのがテーマだから、満点者が多い時は、そこが1組と2組の別れる基準になるんです。逆にそこだけが満点の方もいるんですよ、リリベル嬢あなたのようにね」と生徒会長が呆れたようにリリベルに言った。


 今回の最後の問題は「“米酒”について知っていることを答えよ」だった。この国では13歳からお酒が飲める。リリベルは侯爵家でしっかり米酒の晩酌にあずかっていた。

 冷やも熱燗もやらかしていた。何なら子爵領の湧き水で米酒を作ろうと思って伯父に頼んで本を取り寄せた。


 ダメだ完敗だ。

 リリベルは素直に両腕を出す。お縄頂戴のポーズだ。「完敗です。責任取って退学します」と。

 そこに殿下がお腹を抱えて笑い出す。失礼な!!

 「ヒーちょっと待って可笑しいんだけど。ダメだ止まんない」涙まで流してる。他の皆様は苦笑いだ。

 

 「リリベル嬢、退学って言っている割には嬉しそうだよね?」

生徒会長が仰る。リリベルにはもう隠すものはない。

 「早く子爵領に帰りたいんで!」

 「ヒーハハハッ」まだ笑ってやがる。


 学院長が「リリベル嬢、君は退学にはならないよ。試験問題を真面目に解かなかったが、入学前の学力試験だし、植物に関しても悪いことをした訳じゃない。だからお咎めを与えることもないよ」

 「ただ君の能力は少し問題がある。植物に関する魔法は君の姉君の聖女と同じ分野の魔法になる。だから無闇には使えないし他言も控えなければならない」


 「あれ?先生も同じことできるんじゃないんですか?庭師さんも?」リリベルは土魔法の教師と庭師に尋ねる。

 「私はどちらかというと土木事業や土の適正判断は専門だが植物はちょっとね」と教師は言う。

 庭師も「私も植物の種類や適正季節、土壌の管理と建物とのバランスとか、あと危険植物が植わってないかの管理くらいですかな」と仰る。


 そういえばリリベルは婆様に、

 「タネの発芽ができるなら、治癒もできるんだよ」って言われて、治癒魔法を教わったんだった。

 「では、私はこれからどうすれば?」

 「魔法を大々的に使ったり、公言しないでくれるなら、特に何もないんだが…」と学院長が言うと、

 「でも野放しはダメだろ?リリベル嬢はジッとしてないだろう?」と殿下が言う。


 さっきから殿下は失礼過ぎるのだ。そこで生徒会長が、

 「では私が預かります。幸い1学年の生徒会役員はまだ決まっていません。殿下も参加されて下さい。これは王太子命でもあります」

 殿下も私もショックを受ける。

 殿下はいい気味だが、私は園芸クラブの活動ができない!

 「園芸クラブぅ!」と私は生徒会長に涙目で訴える。

 生徒会長は「ううっ」とたじろぎながらも、

 「卑怯だな。そんな顔で縋るなんて。生徒会の仕事の傍ら少しくらいの土いじりは許します」と仰った。

 

 こうしてリリベルの放課後の野菜育成生活は断たれたのである。

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