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 北の国王陛下の発言に、宴会場がザワザワと騒めく。

 「リリベル嬢」ザック殿下がまた心配そうに声を掛けてくる。子爵家の呪いの事はザック殿下にはお伝えしていなかった。大した内容じゃないし、殿下には関係ないからだ。

 そう大した事じゃないのだ!


 「それでもお断り致します。陛下のせっかくのお誘いをお断りして申し訳ありません」と頭を下げる。

 「…そうか。他の家族には意見を聞かなくてもいいのかな?」

 こっちを揺さぶるつもりか?ふん。何百年、音痴やってると思ってるんだ!


 父ならきっと笑い飛ばす。母も外した歌を気にもしない。

 爺様も婆様も、きっと私のしたい事が一番だと言ってくれる。

 「打楽器はイケますんで、間に合っています!」

 「プッ、ハハハハハハッ〜」北の陛下はお腹を抱えて笑い出した。

 「そうか、そうかリリベル嬢。余計な申し出だったな。じゃあ、これはどうだ?明日、北に帰る。道中、子爵領に寄る。君も一緒に子爵領に行かないか?行きだけしか一緒できないが、サオリなら子爵領まで多分…3日いや2日半かな?」


 「プハハハハハ〜」まだ笑ってる…。

 でも、そのお申し出は嬉しい「喜んで!」

 「俺も!あっいや私もご一緒できませんか?」ザック殿下?

 「私もご一緒したい!」王太子…。

 「そうか!子爵領は大人気だな。ワハハハハハ」

 宴会は北の陛下の大笑いで終わった。


 そして陛下の4人乗り馬車に陛下、陛下の侍従一人、リリベル、ザック殿下が同乗する事になった。

 大臣の馬車に王太子殿下、王妃様、ルト兄、もう一人の陛下の侍従が乗り込み出発した。


 北の大臣達は王家の馬車で、通常日程で帰る事になったが、彼らはその方が良いそうだ。白馬の引く馬車は速いが快適性が皆無だそうだ。

 そんな馬車に王族を乗せてもいいの?いや陛下が乗って来た馬車だけど王太子より王妃様までいるんだよ?


 「スピードが出るので座席にあるベルトで体を固定して下さい。御者が外しても良いと言うまで外さないように」

 陛下の侍従さんに馬車での注意事項を聞く。馬車内では飲食も禁止だ。もちろん窓も開けてはならない。


 「なに慣れれば会話ぐらいできるぞ、それにスピードを2台目に合わせるから、残念ながら3日コースだな」と陛下は仰る。

 いやちっとも残念ではない。伯父の6頭立て馬車でも5日なのに、その距離を3日だ。十分速い。そうして馬車は出発した。


 馬車は王都を外れ人気の無い街道に入ってから本領を発揮した。初日はスピードに慣れるのが大変だった。それに油断すると頭まで壁にゴンゴンとぶつけて、夜は身体中痛くて眠れなかった。

 そして王太子殿下は乗り物酔いで顔が青かった。意外だったのは王妃殿下でケロッとなさっておいでだった。さすが北の国出身だ。王妃様は侍従に気遣われるどころか王太子殿下を気遣っておられた。

 

 馬車は子爵領手前の北の隠れ家、もとい“陛下の別荘”にも一泊して子爵領に向かった。

 領境いにある最初の村に到着すると、伯父がナル兄と迎えに来てくれていて、北の一行は伯父の別荘に案内された。


 湖の側に建った侯爵家の別荘は景観を損なわないように、低層で白壁の美しい建物になっていた。王都の腹黒屋敷とは真反対の建物だ。雪の残る山脈と湖とのコントラストが美しい、この場所に伯父はずっと別荘を建てたいと言っていたのだ。


 「美しいな。これが禁断の子爵領か…」王太子、禁断違うぞ!

 別荘に入るとロビーで使用人達が出迎えてくれる。

 「陛下、ご無沙汰しております」北の元外交官達が挨拶をする。

 「おう。ご苦労だな。お前たちには無理を言ったな〜」

 「いえいえ、こちらも立派に王家の名残を残しておりますから」一体何の話をしているの!?伯父も何か言いたそうだが、陛下は我々を見て「気にするな」と一言仰ったが「はいそうですか」と聞き流せるかー!でも聞くの少し怖い。


 応接室は2階にある。2階から湖と山の眺望を眺めるのが素晴らしいそうだ。皆で応接室のテラスに出ると、まだ肌寒いが風が無いので湖の水面に映る水鏡の山脈が美しい。

 陛下も「これは美しいな」と仰り、王妃様が「お兄様、あそこ!あそこに青薔薇が」と指をさす。

 別荘の敷地の少し先に青薔薇の群生と爺様がせっせと世話をする姿が見える。


 「ほお、あの庭師、あれほど青薔薇を増やすとは見事な腕だな」

 「庭師ではありません。私の祖父です!」とリリベルが言うと

 「祖父?と言う事は前子爵殿か」

 「そうです。彼は女神の夫になるのが嫌で西に逃げた北の王子の息子です」と伯父が言うと

 「彼が!と言う事は彼は私の従兄弟か」と陛下が仰った。

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