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 「国境侵犯!」リリベルが叫ぶと、王妃様以外の王族と大臣達がギョッとした顔でリリベルを見た。

 だが北の陛下は気にした様子もなく「せっかく、そちらの親戚に白馬を贈ってやろうと思ったのにな〜」なんて言いやがった。


 「聖女の防御壁って凄ぇなあ!わの力でも破れねがったわ。お陰で少し意地んなった」

 犯人は“わ”か!

 「北の騎士達は?」

 「あ〜白馬さ扱える騎士達を集めたはんでねぇ」

 「ブッー!」誰かが飲物を吹き出した。こっちだって吹き出したいわ。

 北の陛下の言語が崩れてきた。


 「兄よ!注いでまえっ!」リリベルと目が合ったルト兄は「我が意を得たり」と北の陛下の杯にアップルワインを注ぐ。

 「兄さん、今後はわんこ蕎麦ならぬ“わんこワイン”でお願いします」リリベルの目力は頷く兄に正しく伝わったようだ。


 「では最初から白馬を子爵領に連れて来るだけだったと?」

 「そのづもりで指示すたばって、あいづら忠誠心さ強ぇはんで、もすかすたっきゃスレイプニルさ取り戻すべどすたのかも」

 「父が彼らを坊主にしちゃいました」

 「あれは笑わへでもらったわ。仕方ね罰だべな」

 「北の外交官達は?それと隠れ家」


 「ん?わの別荘のごどだべが?」

 「ブゥーッ!」誰だよ?また吹いたヤツ!

 「もしかして外交官のご家族は?」「別荘の使用人だべな」

 「外交官達は今、うちの子爵領で領民してます」

 「へば別荘さ、まだ使用人ば送んねどな」

 「新たな外交官はどうしますか?」「必要が?」

 リリベルは外務大臣を見る。


 大臣は首を振る。

 「要らないそうです」「えがったわ」

 「貿易の話は明日の会議でいいですか?」

 「そうするがな。もうネプて」と陛下はテーブルにうつ伏せて寝てしまった。

 この人、飲むと寝る人なんだな。


 リリベルは、もうデザートのイチゴのロールケーキも食べ終えたので立ち上がる。

 そして「尋問終了しました」と言って晩餐会場を出て来た。

 一仕事した後の夜風は身に沁みるわ〜。


 リリベルが侯爵家の馬車を呼んでもらい馬車止めのベンチに座っていると「リリ!」と兄がやって来た。

 「ルト兄ちゃん。出て来て大丈夫なの?」

 「ああ。北の陛下は彼らの国の騎士と侍従達が運んで行ったから」

 「ふ〜ん。北の陛下は愉快な人で良かったね」

 「懐かしいな。昔、母さんによくアップルワインをわんこしたな」

 「お小遣いが欲しくてね」

 「でも毎回小遣いくれるの父さんだった。それ不思議だった」

 「えっ?兄ちゃん、最初から父様に小遣い貰うつもりで母様に飲ませてたんじゃないの?」

 「僕は母さんの財布のヒモを弛めるつもりで…」


 ルト兄ちゃんは昔からそういう裏の無い人だった。

 貰ったお小遣いも兄妹達でお菓子を買ったり、使用人や領民の仲良い子の誕生日プレゼントなんかに使ってた。

 優しい兄ちゃんだった。今は王太子の手先だが!


 侯爵家の馬車が来たので、リリベルは馬車に乗る前に兄に挨拶する。

 「それじゃ兄ちゃん。アイリーン様に宜しく」

 「待ってリリ!何で父さんが小遣いくれたんだろう?」

 「父様は酔った母様を介抱するのが好きだったんだよ!じゃあね」リリベルは馬車の窓から手を振る。

 ベルトルトも手を振り返し馬車を見送った。


 「リリベルは行ったかい?」「エリオット兄さん」

 「相変わらずリリベルは王城とは言え、一人で歩くなんて危ない子だな。アイザック殿下もいらっしゃるんでしょう?」

 「バレてたか」「殿下にまで心配をかけるなんて!」

 「もう慣れたわ。良かったな、補佐官。明日は貿易の話だけだ。もう北の外交面で困る事は無いだろう。私は戻る」

 二人で殿下の後ろ姿を見送る。殿下には護衛と侍従がいたから大丈夫だろう。


 「エリオット兄さん、昔からリリは人から何かを引き出すのも、貰うのも上手な子だったんだ。でもそれは末っ子の性質だと、ずっと思ってた」

 「同じ事をしていてもターゲットが違ったみたいだな」

 「毎回、息が合うんだ。お互い考えている事が解る。でも違ったんだな。リリが僕に合わせていた」

 「そんな事はないよ、ルト。少なくとも今日はターゲットも同じで、同じ思惑で動いていた。とても息が合っていたよ。さすが兄妹だと皆が思ったよ」

 「でも僕はきっとリリに嫌われているな。王太子殿下の侍従だから」

 「それは仕事だからな〜。リリもきっと分かっているよ。それにリリベルはやられっ放しではないだろう?もう十分、元を取ったと思うけどな。小説で」

 「あぁ…」

 「ルト、君とうとう殺されちゃってるよ」

 「えっ!?」

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