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北の国の方々の言葉は主に東北地方の方言を混ぜております。
ゆる〜く読んで下さい。
「そなた見事な赤い髪だな。父譲りか。だが北の馬達には近付かぬ方が良いぞ。あれは闘争心が強い故、襲われるぞ」と仰った。
ザック殿下は少しガッカリした様子で「承知致しました」と言うと、
「なに闘牛と一緒だ。そなたが対等に闘えれば認められるかもしれんがな」ガハハと笑い、北の陛下はまた中に戻って行かれた。
一緒に陛下に付いて来た人達も中に戻って行く。
恐らく王宮の広間にいた人、ほぼ全員、見に来ていたのかもしれない。大勢がゾロゾロ戻って行く。
その時「リリ!悪いな。色々助けてやれなくて、今回、北の国王の護衛の責任者を任されているから、今はスマン」とライオット兄がリリベルに声を掛けて急いで任務に戻って行った。
ライ兄も姿を見ない程忙しかったんだな。
そしてガブリエラ様も労いの声を掛けてくれた。
エリオット様はリリベルを抱き締めて頭に頬擦りまでして戻って行った。
「リリ、少年姿もカワイイ」って。なんか違う。
「ザック殿下?」気落ちした様子の殿下に声を掛ける。
「貴賓の来客中に騒ぎを起こしたらマズいよな?」
殿下?まさかと思うけど北の白馬と闘うつもりなの?
「北の国王陛下は気にしないと思いますけど」
むしろ楽しむんじゃないかと思う。
だけど「他の馬は分かりませんが、あのサオリは結構ヤバいですよ。恐らくスネイプニルの血が濃い」
「リリベル嬢は大丈夫なのにか?」
「ザック殿下が回復魔法を覚えられてから挑まれるのをお勧めします。自分の為にも」
「回復魔法って神官じゃなくても使えるのか?!」
「しっ!小声でお願いします。殿下」
「誰でもではありませんが、練習と試す事はできますよ」
「君は聖女だから使えるのかと」
「そんな訳ない!練習して一年はかかりましたよ」
何だよ聖女って?女神様に似てるくらいで、聖女扱いは止めて欲しい。
私にはマリィ姉のような力は無い。
「そっか一年か。今は教育も忙しいから、やはり無理だな。なあ、いつか子爵領の野生馬で試してみてもいい?」
やっぱり負けず嫌いなんだな殿下って。
「いいですけど、彼らはペガサスも混じっているかもしれないから、どうなんだろう?」
「そうだったな」と二人で色々、野生馬について話しながら中に戻る。
広間に戻ると王妃様が北の国王陛下に怒られていた。
「青薔薇、全で処分すただどぉ?!」
「かにな!兄ちゃ」王妃様が泣きながら
「兄ちゃ手紙ぐれねすぅ、すげねぐであったの!青薔薇の世話も大変だすぅ」
王妃様、北の陛下に構って欲しかったの?まさか半グレ起こしていたのか。
しばらく兄妹喧嘩を皆で見守っているところに、ザック殿下が見事に開花した青薔薇を二人の元に持って行った。
ちゃんと咲かせて届けてくれたんだねマリアンヌ嬢。後でお礼を言わないとね。
王妃様はザック殿下が持って来た青薔薇を見て「ああっ」と泣き崩れた。それを夫である陛下が抱き抱える。
やはり人の心って実際には分からないものだ。
王妃様は北との訣別の意味で薔薇を処分したんじゃなかったんだ。そもそも王妃様の口からはっきり理由を聞いた訳でもない。タイミング的に周囲が勝手に判断しただけだ。
でも北との訣別を決めた訳でもなかったから、心の中でどこか後悔していたし、庭師が残すかもと望みをかけていたんだ。
リリベルに託した薔薇もそういう願いがこもっていた?私は全滅を防ぐ保険だったのか?
「ちゃんと青薔薇を通すて、おめば見守ってらど、しゃべったべな!」
ん?青薔薇ってそういう見守り機能もあるの?まさかねぇ。
「おめ、信じでねがったな?」
マジっすか?!
「ちゃんと外交官達に、わがこざさ来るで、しゃべっておいだべな?」
もしかして、あの時の王妃様への特別な贈り物って?!
「特別な贈り物なんて、しゃべらぃでも分がるはずがね!」
「あいづらお仕置きだな。あ、すたばてもう居ねぇのが」
やはり!特別な贈り物って“北の国王が妹に会いに来る”という事だったんだ!と言う事は、元々、ここに来る予定にしてたって事?
これには王太子殿下も宰相閣下も大臣達も遠い目をしていた。
お察しするよ。
「青薔薇、全で処分すただどぉ?!」青薔薇、全部処分しただと!
「かにな!兄ちゃ」ごめんなさい、お兄様
「兄ちゃ手紙ぐれねすぅ、すげねぐであったの!青薔薇の世話も大変だすぅ」
お兄様は手紙もくれないし、寂しかったの。青薔薇の世話も大変だし。
「ちゃんと青薔薇を通すて、おめば見守ってらど、しゃべったべな!」
ちゃんと青薔薇を通して、お前を見守っているからなと言っただろ!
「おめ、信じでねがったな?」お前、信じてなかったんだな?
「ちゃんと外交官達に、わがこざさ来るで、しゃべっておいだべな?」
ちゃんと外交官達に私がここに来るからと言っておいただろ?
「特別な贈り物なんて、しゃべらぃでも分がるはずがね!」
特別な贈り物なんて言われても分かるはずがないでしょ!
「あいづらお仕置きだな。あ、すたばてもう居ねぇのが」
あいつらお仕置きだな。あ、でも、もう居ないのか。