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 「王太子殿下、アイザック殿下をお連れしました」

 兄が王太子の執務室をノックする。

 中から「入れ」と声がして入室すると、王太子殿下が

 「ああリリベル嬢も一緒だったか。何で王城にいたのか気になるが、今は忙しいので聞かないでおく」

 と前置きされ、リリベルの挨拶も聞かずに

 「アイザック、リリベル嬢、来月半ば頃に北の国王が我が国に来訪される予定だ」と仰った。


 「兄上、大臣が北に訪問する予定だったのでは?」

 「それを断られ、逆に国王がこちらに来ると仰せになったのだ」

 リリベルはそれを聞いて脳内でグルグル考えを巡らせる。

 表向きは国交と貿易再開だろうが、本当の目的は?北の外交官達を返せ?白馬を返せ?まさかそんな事だろうか?


 「王太子殿下、北の国王の来訪の本来の目的は?」

 「私も君と同意見だよ。恐らく子爵領か子爵家の人々か…両方か…」

 いや、そこまでは考えてなかったけどさ。たかが子爵家だよ。領地も山脈部分を引くと、とても小さい。


 「兄上、母上に…妹に会いに来るという可能性は?」

 「それはオマケとしてはある。母上は国王の妹という立ち位置だが実は兄妹ではない。何故なら国王の両親は母上とは違う。つまり現王の両親は北の女神とその夫だ」

 絵本にあった女神の嫡子という事か、なら王妃様は前国王とその王妃とのお子なのだろう。


 「リリベル嬢、前侯爵にも連絡をしておいた。君のご実家にもこの情報は伝わるだろう」

 「分かりました」リリベルは慇懃に礼を取る。

 王太子殿下にも、まだそれ以上の情報は無いそうで、これから国を挙げて出迎える準備が忙しくなるそうだ。それだけで今日は解放されて一安心だ。


 ザック殿下が「今後は君を通して子爵領と連絡を取り合えということかな」と仰った。多分、そういう事なんだろう。

 「そうですね」とリリベルが答えると、殿下が

 「なっなあリリベル嬢、今、困っている事はないか?」と急に聞いてきた。王太子の存在には困っているが、今日は大丈夫だった。今は特に無いな〜。それを伝えると「そうか」とザック殿下は少し残念そうに仰った。

 一体、どうしたんだろう?


 侯爵家に戻ると、直ぐに伯父に呼ばれた。

 伯父の書斎に入ると「リリ、小説の第三弾の発売日が決まったぞ」と言ってきた。

 何だそっちの方か。

 

 「てっきり北の国王の話の方かと思ったのですが」

 「今、子爵領に別荘を建てているだろう?来月半ばに間に合うようにと、ベルナルドに言っておいた。ちょうど良くナルを帰しておいて正解だったな〜。追加で人も送るし私も行ってくる。でもまあ、心配するような事はきっと無い。大丈夫だリリベル」と伯父は言った。


 数日後、伯父が子爵領に向かう時、リリベルは温室の庭師に託された青薔薇も祖父に渡してもらうよう頼んだ。

 でも今回は自分の元にも3株残した。一つは自分の部屋に、二つ目は生徒会室に、そして三株目は、近々伯父の伯爵が絵本を持って来たら東の神様に渡してもらおうと、それまで大事に世話をする事にした。


 そしてリリベルは絵本を持ってマティアス氏の元に行ってみた。彼ならこの絵本をどのように仕上げるか、やはり気になったのだ。子供向けでないなら、それでもいい。ただ彼の絵でこの絵本を見てみたいと思った。

 マティアス氏にそれを告げると、彼はとても感激してくれた。絵本を見つめながら今、描きかけの絵を傍に避け、何かのスイッチが入ったようにスケッチブックに色々書き出したので、邪魔をしないようにソッと彼のアトリエを出てきた。


 リリベルはきっと素晴らしい絵本ができるに違いないと、とてもワクワクするのだった。


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