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「マレシオン様、原稿案をいただく条件は何でしょうか?」
「ただの善意だよ」絶対嘘だ。
「ハハハッ疑ってるな。ではリリベル嬢一つだけ。私の従姉妹が入学してくるから生徒会で面倒を宜しく頼むよ。それだけだ。では私はこれで」
令嬢だけの時間を邪魔するのは悪いからねとマレシオン様はリリベルに封書を渡してスマートに去って行った。
「リリベルさんは、何で公爵令息に惚れないんですか?」
「はい?シャーロット嬢は殿下推しなんじゃなかったですか?」
あの時、一緒にマレシオン様を責めたクセに簡単にエサに釣られているぞ。
「そこまであの赤ん坊が好きですか?」いや好きでもないし、それに赤ん坊は言い過ぎだろう!
「シャーロットさん、赤ん坊は言い過ぎですよ!せめて幼児扱いにしないと」リリアン様の中でも殿下は幼児か!
本人が聞いたら、また慰めるの大変だから言わないでね。
「でもシャーロットさんが仰る事は分かるわ。マレシオン様は素敵だもの」
スパイにさせられたのに?もしかしてリリアン様はマレシオン様が好きだったから協力したの?
リリベルがリリアン様を見るとリリアン様は赤くなった。マジですか…。
「ただの憧れなの」とは仰っておられましたが…。
デザートを食べて、マフィンの袋をそれぞれ持ってお会計に行くと、なんとお会計も全て終わっていた。
当然、女子達からのお株も上がっていた。恐るべしだな。
生徒会室に到着すると、殿下達はすでにいらしていて1学年の1組の名簿と新入生全員の入学前の学力試験結果の資料を見ながら、1学年の生徒会役員を誰にするか話し合っていた。
1組の名簿にも、学力試験トップにも彼女の名前が出ている。
彼女は間違いなく生徒会に選ばれるだろうと、役員選別には参加せず、生徒会長挨拶の原案を開く。
恐らく代々似たような文章を例として高位貴族達は持っているのだろう。入学前の学力試験の問題のように。でも例文があれば余計な失言などを言わずに済むだろうから有難い。
これを参考に少し手を加えて読めばいいよねと、リリベルは挨拶文に集中する。
そもそも殿下が挨拶した方が新入生達も喜ぶのではないだろうか?王族に入学おめでとうって普通は言われたいんじゃない?
生徒会長とは言え子爵令嬢?今は令息もどきが偉そうに!ってならないのかな?
私が挨拶文と睨めっこしていると、シャーロット嬢が
「公爵令息の従姉妹って、あの時のピンク頭ですよね?」と言ってきた。
「シャーロット嬢、彼女は一応、公爵令嬢ですからピンク頭と呼ぶのは控えられた方がよろしいですよ」
「何、生徒会長みたいな事言ってるんですか!」
「生徒会長なんだよ!」「本当だ!」一体、何のコントだ?
ザック殿下に「うるさい!」という顔で睨まれる。
シャーロット嬢のせいで私まで巻き添え食ってしまったじゃないか。しかしシャーロット嬢は気にせず小声で
「ピンクの令嬢はザック殿下の婚約者の第一候補なんですよ」
とリリベルに耳打ちしてきた。シャーロット嬢、どうしても彼女にピンクは付けないといけないのか?
だが「赤とピンクでマッチしてて良いんじゃないですか?」と言うと
「ではリリベルさんは公爵令息にシフトチェンジで。確かに金と銀でこちらもマッチしています」と言ってきた。
「リリベルさんなら私も応援します」ってリリアン様まで!!
もう原稿に集中させて下さい。