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リリベルはかつて一度、父に治癒魔法を習ったことがあるが全く使うことができなかった。それは婆様に習っても同じで、多分、自分の女神様への貢献度が足りないせいだなと冷静に思った。
リリベルは物事を斜めに捉えるところがあって、治癒魔法なんて誰かが使えればいいし、ましてや女神様に祈ってまで使えなくてもいいんじゃない?という思いがあった。
しかし爺様が畑仕事中に泥濘で転んで足の骨を折ってしまった時、初めて真剣に女神様に謝って祈って祈りまくって随分時間がかかって治癒魔法を使えるようになった。
すでに爺様の骨折は婆様が治して完治した後だったが、それでも自分が爺様を治せなかったことに非常に腹が立った。
それからは何でもできないと後悔する。“適当”は全て自分に跳ね返ってくるというのを学んだのだ。でもそれは全てに対してではない。リリベルの価値観と判断基準の上でだ。それ故に大抵のものがどうでもいいし、面倒ごとは本当にゴメンだと思う。
だから余計にこの状況は何だ!と思うのだ。
リリベルは生徒会長のマレシオンに今日の放課後、生徒会室に来るように呼ばれていたが、聞いてないふりしてブッチしようとしていたところを殿下に捕獲されたのだ。
シャーロットのヤツ、私を売りやがったな?
最近のリリベルの行動を読んでいるシャーロットが向こうでテヘペロしてやがる。あいつヒーローとやらに魂を売ったな?マジで腹が立つ。
リリベルは庭いじりの前にオヤツを買おうとBENTOO屋の前で捕まったところだった。
仕方なく生徒会室に連行されて行くと、園芸クラブ顧問の土魔法教師と学院の庭師の2人もいた。そして入学式にリリベルを眠りに誘う祝辞を述べた学院長までいたのだ。
もしかして野菜を花壇や庭に植えたのがバレたのか?
その時、リリベルはハッとする。今、スカートのポケットにあるプチトマトのタネが見つかるとヤバいのでは!リリベルは緊張で両手の拳をギュッと握り締める。
でもその前にお腹が空いた…。せめてBENTOO屋でオヤツを買った後に捕まえて欲しかった…。